今回のエピソードで、一番面白かったのは、長州藩の残兵探しのために寄った寺田屋の女主人のお登勢(戸田恵子)の活躍である。
訪問するに当たって「男勝りだ」と聞いた勇。
「お前の姉さんのようなのがもう一人いる」
と沖田に言う。
寺田屋の前で血のついた布を見つけた新選組。
「これは何か」
と詰問すれば、
「これは鼻血です」
新選組の注意が他へ向かった時に、側にいた番頭の顔を殴って鼻血を出す。
これは以前にもあったトリックではないか、と思っていたら、
「やはりお前の姉さんがここにもいた」
あの時のエピソードがここにもつながって来る。いい演出である。
確かあの時、近藤勇の祝言の日だった。
新選組としてまだここまで大きくなる前の、将来を模索していた時期。当時は桂小五郎(石黒賢)や坂本龍馬(江口洋介)とも普通に行き来していた。何かを得ることによって、何かを失うこともある。
佐久間象山(石坂浩二)、河上彦斎(高杉亘)によって暗殺される!
破格の出世によって従者に取り立てられた滝本捨助(中村獅童)は隣で倒れているだけ!
初登場が情けなかった捨助だが、その後いい味出していると思って好感度が上がっていたのだが、やはり情けないキャラクターだった。
ここは丹下左膳に変身してでも象山先生を守って頂きたかった。
孝明天皇(中村福助)は、京都を攻撃した長州軍について
「一体彼らは何をしたかったのか」
と松平容保(筒井道隆)に問い掛ける。
長州びいきの鷹司卿も、久坂玄瑞(池内博之)に
「もっと知恵のある者と思っていた」
と激怒。
「我らは何のために生まれてきたのか」
と嘆く久坂。
わざわざ新選組到着を待ってメッセージを残して切腹した真木和泉(大谷亮介)。役者である。
激動期には、このような徒花、無駄石と思われる犠牲も多い。これも生みの苦しみというのだろう。それでも久坂や真木和泉(大谷亮介)らは歴史上に名を残している。
しかし、久坂らに従った名もない長州藩の兵士、或いは戦いで犠牲になった相手方の兵士や巻き添えになった一般人の犠牲もある。
歴史とは、こういった名もない人々の犠牲の積み重ねでもある。
それにしても、わずか24歳で藩の重鎮・桂小五郎の制止を振り切ってまでこれだけの事件を起こした久坂玄瑞。
長州藩の指令系統図はどうなっていたのだろうか。