OLDIES 三丁目のブログ

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《水滸伝》水滸伝1973年日テレ版(中村敦夫主演)鑑賞記第7回

弟13話 荒野の三兄弟 脚本 池上金男 監督 降旗康男
 
 近衛軍総司令・高求は部下である3人の司令官を引き連れ、宰相・蔡京に面談に行く途中、
「よくぞここまできたものだ」
と感慨にふける。
 それはまだ彼が科挙の試験に落ちて扈家村(こかそん)でならず者として暴れ回っていた時のこと。村の領主・扈大公(小栗一也)から呼び出される。
 高求は扈大公の娘を誘拐する計画を立てており、その仲間が後のことを考えて恐ろしくなり、扈大公に白状したのであった。
 扈大公は高求を痛めつけて村を追い出す。
 その後高求は都に出て、当時大臣だった蔡京金田龍之介)に取り入り、頭角を現して出世し、今では近衛軍総司令となったのである。
 
 蔡京は高求が帝に離宮を造るよう進言したことを非難。飢饉で税収が減り、今はそのような余裕がないという。
 高求は
「金が必要なら税金を上げて取り立てればいい」
と反論。
 蔡京は政府に反抗的な梁山泊の中心人物が元近衛軍の林冲であることを指摘し、梁山泊の反乱は高求の責任だと批判。
 高求は蔡京を追い出して自分が後釜になる決心をする。
 
 高求と別れた後、蔡京は護衛官・欒廷玉(中庸介)に、高求と一緒にいた3人の将校について調べることを命じる。
 調査の結果、3人は兄弟だと分かった。
 
祝竜(五味竜太郎) 腕も達者だが思慮深く慎重
祝虎(佐藤京一) 陰険で策謀好き
祝彪(黒部進) 気短かな上に乱暴者
 
 高求が司令官に取り立てたときにこのように改名させたといい、それ以前は祝奉先・祝奉中・祝奉後という名だったという。
 そして3人は祝家荘の長・祝朝奉(下條正己)の息子であった。
 それを聞くと蔡京は驚く。
 実は蔡京は宰相となる際、祝朝奉と争った過去があり、その時は蔡京の護衛官として付いていた高求の策略により祝朝奉を失脚させ、蔡京が宰相となったのである。
 高求が今度は祝朝奉と組み、何をやるつもりだろうかといぶかしむ蔡京
 
 一方高求は、祝家の3兄弟とともに祝家荘を訪れ、自分は宰相になるから、祝家荘は自分の宿敵・梁山泊を討ってほしい、ともちかける。その暁には祝家荘は税金免除とし、3兄弟も出世させる、と条件を出す。
 
 農民・市民達に重税が課され、都に運搬されるが、各地で梁山泊の襲撃があり、税は奪われ、運搬していた役人達が殺されるという事件が相次ぐ。
 この日も税金運搬隊が梁山泊と名乗る一団から襲われるが、そこに林冲・扈三娘・戴宗・史進あおい輝彦)が登場、賊達と交戦。史進が「梁山泊」の旗を持つメンバーを捕らえ、身元を調べようとすると、矢が飛んできて賊を刺殺する。
 戴宗が賊の後をつけていくと、祝家荘に辿り着く。祝竜達三兄弟が、梁山泊林冲達に邪魔された、その中には扈三娘もいた。(扈三娘は扈家村の長の娘のため)梁山泊に仲間がいる扈家村を取り潰して領地を奪うチャンスだ、といった話をしているのを聞くが、発見されてしまう。
 戴宗は何とか祝家荘の追っ手を振り切るが、足に毒付きの矢が刺さり、毒が回って倒れてしまう。
 
 その戴宗を助けたのは、扈家村の長の娘であり扈三娘の妹でもある燕麗(中山麻理)であった。
 燕麗は父親の村長と相談し、戴宗を扈家村の山小屋にかくまう。
 
 史進の聞き込みにより、戴宗が祝家荘から逃げて行方不明だと判明。林冲達は、祝家荘を見張って盗賊行為の決定的証拠を掴むことにする。
 一方祝家荘は、扈家村が戴宗をかくまっていることを知り、戴宗ともども扈家村を全滅させることを決定する。
 翌朝、三兄弟が軍勢を引き連れて扈家村に進入、虐殺を始める。
 林冲・扈三娘・史進がこかそんの救出に到着、さらに戴宗と燕麗も山小屋から到着。
 しかし多勢に無勢、圧倒的な祝家荘の軍勢に取り囲まれて危機に陥る。
 
  
 高求の若かりし頃のエピソードとは珍しい。このドラマオリジナルであろうか。
 離宮造営の費用がないと渋る宰相・蔡京に高求は
「金が必要なら税金を上げて取り立てればいい」と。
 今の日本の政治も似たようなものですな。
 この税金論議を見る限り、宰相・蔡京はマトモな人だと思えるのだが、ウィキペディアを見ると、現実の彼はひどい奴だったようで。
  ウィキペディア 蔡京
 
「荒野の三兄弟」なんて格好いいサブタイトルの今回。梁山泊方のことだと思っていたら、梁山泊の敵方の三兄弟のことだったのか。
 しかもその三兄弟が祝家荘の長の息子だとは。
 高求が頼りにしているようだが、今まで登場したことなかったぞ。
 今まで高求が部下として命令を出してきたのは楊志・黄信・何濤・黄文柄・唐亮らであった。
 黄文柄が頼りないと言って直々に乗り出した時も三兄弟を伴なってはいなかったし、花栄捜索の際も、裏切りの疑いがある黄信を使わずに三兄弟を使ったら良かったのである。
 今回いきなり出てきたな。
 
 かつての宿敵と高求が結び、今度は自分が狙われていると知った蔡京。先手必勝であるからして、この時点ですかさず高求を罷免させるべきではないか。うかうかしているとやられますぞ。
 
 しかし祝朝奉と高求が何で結びついたのであろうか。普通なら自分を失脚させた憎い相手と仲良くなったり、息子を預けようとは思わない。やはりこれは高求の方から頭を下げて近付かなければここまで親しくならないと思うがどうか。
……と書いたが、林冲が「最近、扈家村の長の息子達が高求に取り入って登用されたらしい」という噂話をしていたので、最近祝家荘の方から高求に取り入ったようである。
 
 金がないのなら税金を上げて取り立てればいい、という高求の意見に反対していたかのような蔡京だったが、何だやっぱり税金を取り立てているじゃないか。
 
 史進が賊の一人を捕まえて調べていたところ、祝彪の矢が賊を殺して口封じをする。ドラマなどでよくあるパターンだが、それだけの矢の腕前があるのなら、捕まえている敵方(この場合は史進)を狙う方が得ではないだろうか。まあそれを言ってはおしまいなわけですが。
 
 扈三娘は扈家村の村長の娘だったのか。この村長というのは高求と因縁のある人である。
 扈三娘は高求の近衛総帥就任祝いに扈家荘から献上されたそうである。高求を村から追い出した村長が恭順の意味で差し出したのだろうか。第1回を見ていないのでその辺の事情は分からない。
 
 第4話で登場してそれっきりになっていた燕麗だが、村に帰っていたのか。前回とは違っておしとやかな服を着ておしとやかなお嬢様していました。
 
 うなされて水を欲しがる戴宗に口移しで水を飲ませる燕麗。どうやら戴宗を好きになったようです。
 燕麗の看護のおかげか、意外と早く回復した戴宗。燕麗は一緒に梁山泊に連れて行ってくれと頼むが、梁山泊に連れて行って幸せにする自信がない、と断る。
 
 扈家村を全滅させる気で乗り込んだ祝家荘軍。非現実的な作戦だ。原作では良好な関係だったというこの2つの村なのに、悲劇的な関係です。
 そしていつもならば林冲達が助けてめでたく終わるはずの結末なのに、今回はてこずり、囲まれてピンチに陥っています。
 結末はどうなるのか?
 




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弟14話 決戦・祝家荘  脚本 池上金男  監督 降旗康男
 
 戴宗は梁山泊に知らせるように言って燕麗を逃がす。
 林冲達は崖の下に追い詰められ、弓の一斉攻撃で止めをさされる直前、崖の上に現れた阮小二(品川隆二)・阮小五(常田富士男)・阮小七(渡辺篤史)三兄弟に救われ、救出される。
 一同、船着場で待っていた燕麗と合流し、後日に期して一旦梁山泊に退く。
 
 戴宗は捕まり、祝家荘の梁山泊攻撃の道案内を要求されるが断り、祝家荘の批判をする。怒った三兄弟が殺そうとするが、祝朝奉が止め、逃げられないように閉じ込められる。
 
 一方都の朝廷では、宰相である蔡京が、高求と祝家荘が税金運搬隊を襲って税金を横取りしていることを知り、高求を呼び出し、逮捕しようとする。しかし先手を打った高求が兵士を腹心の部下に入れ替えており、さらに蔡京の護衛官・欒廷玉(中庸介)までが高求側に寝返っていた。蔡京は欒廷玉に殺害され、高求が宰相となり、欒廷玉が近衛軍総司令官となる。
 
 扈家村は滅ぼしたが、肝心の林冲を逃がしてしまった祝家荘は、高求に指示を仰ぐ。高求は、何としても梁山泊とりわけ林冲を倒すように、と指示し、欒廷玉を祝家荘に派遣する。
 
 林冲史進・扈三娘・燕麗らは扈大公を葬るため、扈家村に向かう。梁山泊軍が棺を持って運んでいると、待ち伏せしていた祝家荘軍が出現、人質の戴宗を見せつける。
 しかし、さらに外側の城壁から史進率いる梁山泊軍が出現。
 欒廷玉が屁理屈を言って時間稼ぎをしている間に、祝彪が陰から弓で林冲を狙って撃つが、飛び出した燕麗に刺さる。慌てる祝彪狙って林冲が剣を飛ばし、祝彪も死ぬ。
「今回は引き分けだ」と欒廷玉が宣言し、双方引き揚げる。
 
 梁山泊軍が祝家荘の城壁を包囲し、攻撃するが、らちが明かないため、林冲は一計を案じる。
 阮三兄弟が梁山泊の敵に扮し、史進を捕らえて祝家荘の城の中に入る。
 祝家荘陣営は、史進や戴宗をおとりに使って林冲をおびき寄せる作戦を取り、大いに浮かれる。
 しかしその夜、祝家荘の城内に入り込んだ阮三兄弟が見張りを眠らしたり色々と工作をする。
 翌朝、のろしの合図と共に城門が開かれ、梁山泊軍が場内になだれ込む。
 祝竜・祝虎は史進や戴宗に倒され、欒廷玉と祝朝奉も舟ごと爆薬で爆死する。
 
 
 祝家荘の兵士に囲まれた林冲達。三兄弟の一人が放った矢が扈三娘の背中に刺さる。扈三娘は足を引きずりながらも自分で歩けていたので、今回は毒が塗ってなかったようだ。
 崖の下に追い詰められた林冲達を救ったのは、崖の上に現れた阮三兄弟。肩を組んで足を上げて変なダンスをしていたのが面白かった。
 さらに、「お年玉だ〜!」
と言って火薬に火をつけて落とす。
 調べると、この回(弟14話 決戦・祝家荘)が放送されたのは1974年の元日である。まさに落とし玉である。
 今なら元日は特別番組が放送されてレギュラーのドラマは休むと思い勝ちであるが、当時は普通に放送されていたのか。
 
 阮三兄弟は晁蓋山形勲)の命令で、帰還の遅い林冲達を助けに来たのである。梁山泊の首領になってから一度も登場していない晁蓋ではあるが、これはグッジョブである。
 
 ついに高求が蔡京を殺害して宰相の座を奪う。蔡京の護衛官だった欒廷玉をも配下に加えていたのである。何で欒廷玉は蔡京を裏切ったのだろうか。高求の方がやり手だと思ったのだろうか。原作では祝家荘の武術師範だから仕方ないか。それにしても原作の登場人物が変幻自在に配置転換されているな。
 
 人質となった戴宗を追おうとして、燕麗が林冲の身代わりとなって死ぬことになる。燕麗の死は早すぎでもったいない。もっと見たかった。
 
 燕麗と祝彪の犠牲により、双方雌雄を決するという時に、欒廷玉が割って入って止める。
 何で止めたんだろう。戦略的には、城壁から祝家荘軍を包囲している梁山泊軍が有利だから引き分けに持ち込んだのだろうか。
 
 ついに梁山泊軍が祝家荘を包囲して攻撃。横山版では、それまで梁山泊入りしていた豪傑達が一挙に登場する豪華なエピソードである。
 しかしこのドラマ版では、いつもの林冲+扈三娘+史進に阮三兄弟しか出てこない。
 横山版では弓の腕前を発揮していた花栄も、勝利をもたらした呉学人(の代わりの公孫勝)や彼が連れて来た連中も登場しない。
 さらに、既に梁山泊に入っている宋江も武松も魯智深も鉄牛も朱仝も雷横も登場しないとは。
 あまり多くの人が出すぎれば視聴者が混乱するということで、出演者を絞ったのだろうか。水滸伝は多くの豪傑が登場するというところが面白いのに、もったいない。
 
 阮三兄弟が名乗った仮の人物像は、梁中書の使いで都に文書を運ぶ途中の李小三、李小六、李小八。阮小二、阮小五、阮小七の数字に1つづつ加えた数字を使っている。
 祝家荘の三兄弟に対して、梁山泊の阮三兄弟の大活躍の巻である。
 
 原作ではかなりの使い手という設定の欒廷玉であったが、今回はあっけなく爆死してしまった。
 蔡京を殺害した時、鎖の先にオモチャのUFOのような丸っこいものをつけたものを振り回して武器にしていた。この変な武器を使ってもう一度戦うところを見たかった。
 
 
 扈大公と燕麗を手厚く葬り、林冲達は梁山泊へ引き上げる。
 林冲は「天に替わって道を行う」という旗を作成し、今後掲げることにする。 
  
たのみこむ 日本テレビの「水滸伝」のDVD化を!
  https://ssl.tanomi.com/metoo/naiyou.html?kid=15217
水滸伝倶楽部  http://nazede.gozaru.jp/suikoden.html
  




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