OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

第45回「源さん、死す」(11/14)〜近藤局長に最後の挨拶

 近藤局長(香取慎吾)に手傷を負わせた御陵衛士に報復を、と立ち上がる新選組の幹部連。
 それを、井上源三郎小林隆)が止める。
 我々は伏見を守れという命令を受けている。持ち場を離れては局長も喜ばない、と。
 幕府軍という組織の中での立場を重視した立場の考え。もっともな判断である。
 しかし、最早幕府側には、このように幕府全体のことを考えて行動する人物はいなかった。
 新選組の献策を突っぱねた若年寄並陸軍奉行・竹中重固(菊池均也)など、自分勝手な思い込みでその場しのぎで行動している。
 何しろ、総大将の徳川慶喜今井朋彦)自身が自分勝手なふるまいをしているのだから。
 同じ自分勝手でも、薩摩の二大巨頭の西郷&大久保は、適切な作戦に基づいて行っている。
 作戦や将来展望に対する意識の違いが出た。
 それにしても、桂小五郎石黒賢)は、どうしているのだろう。西郷&大久保の陰に隠れて、すっかりご無沙汰です。(⇒⇒)
   ◇ ◆ ◇
「出陣じゃー」
と、会津藩砲兵隊長・林権助三谷昇)。
「一体どこの時代から来たんだ」
と土方。しかし、幕府軍薩長の鉄砲に苦戦したというのだから、大砲は作戦としていいのではないだろうか。
 これは強い味方だ、林権助、頑張れ。
 しかし次のシーンでは呆気なく負けて運ばれて来たが。
 剣の時代は終わりだ、というメッセージが随所に出てきた。剣豪揃いの新選組も、薩長の鉄砲部隊の前に実力を発揮できない。
 しかし、織田信長の時代にすでに刀や弓矢の時代は終わり、鉄砲の時代となっていた。
 徳川の絶対的権力時代には大掛かりな戦はなくなり、戦の技術も退化して剣の時代に逆戻りしていたのだろうか。
 平和が戦争の技術を退化させていくという例とすれば、哲学的・学問的に面白い事例である。
   ◇ ◆ ◇
「やはり私は戦は向いてない」
と言う谷周平(浅利陽介)に源さん
「それを言うなら俺だって本当はこんな所にいる者じゃないよ」
 江戸の片隅でひっそりと静かに生きていたかったという源さん。
 だからこそ、場違いなところにいる周平が余計に気になったのかもしれない。
「無鉄砲と勇気は違う」
と周平に言った源さん。
 その源さんも、周平を助けるために無鉄砲に敵の鉄砲部隊の前に飛び出して背を向けて撃たれる。
   ◇ ◆ ◇
 大坂城では、将軍慶喜今井朋彦)や松平容保筒井道隆)を前に、近藤勇香取慎吾)が熱弁を振るう。
 戦で勝って薩長から錦の御旗を取り戻す、と。
 この時の慶喜、やつれた表情で、いつものしたたかな精彩がない。沖田総司の病気でやつれている演技に似ている。ここら辺の細かい演技がうまいと思う。
「この戦、勝たねばなりません」
 とまで近藤に言わせ、戦の支度をさせておきながら、突然江戸に帰ることを決めた慶喜
 確かに、いくら近藤局長が奮闘しても、薩長軍と戦うのは不確定要素が多すぎる。何とか勝ったとしても犠牲が大きい。
 ここは厄介なことをせずに戦を避けるのが理性的な判断で、聡明な慶喜がそう考えても不思議ではない。
 しかし、徳川のためを思って戦の準備をしている忠臣を見捨てるのは、人情としてどうか。
 ここら辺、徳川家のためと思って不利な戦いに挑んだ会津藩新選組との違い。
   ◇ ◆ ◇
 大坂城内で一人書見している近藤局長の前に現れた源さん。
「いつ戻ってきたのですか。他の者は」
「私だけ先に来ました」
……と、最後のお別れをする源さん。
 過去大河では、『八代将軍吉宗』で語り手の近松門左衛門が死後も登場したり、『毛利元就』で、死の直前の元就が幽体離脱して死者と語るシーンはあったが、ここまで明らかに生者と死者が対話するシーンはあっただろうか。
 多分この時近藤局長は居眠りしていて夢の中のシーンだったのでしょう。
 源さんだからこそ言える近藤局長への最後のアドバイスと別れ。こんな設定だからこそ実現できた名場面ではないでしょうか。

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