ところで、加納鷲雄(小原雅人)のその後は、一体どうなったのだろうか。
前回、近藤勇(香取慎吾)と感動の再会を果たし、挨拶した後の彼の心境の変化は?
決して近藤局長が心から憎い、という感情を持っているようには見えなかったが。
近藤逮捕に重要な役割を果たした彼のその後が描かれていないので、彼に関しては中途半端な感が残る。
史実では色々な記録が残っているようだ。ここら辺に思いを馳せてみるのも悪くはないと思う。
◇ ◆ ◇
新政府が近藤勇について問い合わせた件に対する徳川家の回答は、
「近藤勇はすでに徳川の家臣ではなく、何のかかわりもない」
というものであった。
ここら辺、勝の意図と矛盾するのではないだろうか。
薩長の徳川に対する恨みを一身に受け止めるためには、近藤が幕府にとって重要人物であればあるほどいい、ということにはならないか。
近藤が幕府と関係がなければ、徳川の生け贄にはならなくはないだろうか。
ここら辺の論理、こういった事情に疎い私には理解できない。
有馬藤太は、西郷隆盛に助けを求めるが、西郷は、慶喜が生き延びて引退してしまった以上、
「怨念と恨みをあん人に受け止めてもらいもんそ」
と判断、近藤に対する尽力が露見した有馬は、転属させられる。
その後の取り調べは、有馬がいた席から有馬がいなくなる。これだけでプレッシャーが大きくなる。
そして近藤勇は、斬首されることに決まった。
◇ ◆ ◇
武士らしく切腹したかったでしょうね、と言う山岡鉄舟(羽場裕一)に勝海舟(野田秀樹)
「武士らしく、って何だよ。
大切なのは、どう死んだかじゃねえ。どう生きたかだ。
ありゃ武士だよ。まぎれない、そして、最後のな」
◇ ◆ ◇
多摩を訪れた土方歳三(山本耕史)に、兄の土方為次郎(栗塚旭)は、
「何が正しくて何が間違っていたかなんてことは
100年後、200年後の者達が決めればよい」
確かにそうだ。そして、正しい・間違っていたと判断できないこともある。
この土方の実兄、 第47回「再会」で以前甲陽鎮撫隊が 多摩で歓待を受けた時、宴会に出席していなかったようだ。
また、その夜、土方は兄に会いに行かず、昔の許婚・お琴(田丸麻紀)に会いに行ったため、ようやく今回、再会を果たしている。
◇ ◆ ◇
江戸では永倉新八が、大村達尾(江畑浩規)と再会。清河八郎(白井晃)の浪士組の際、父の敵と祐天仙之助(渡部雄作)を狙っていた人物である。あの時は思い詰めたような表情と話し方だったが、祐天仙之助を討った今、馴れ馴れしくて変な感じに成長(堕落?)していた。
あの祐天仙之助も討たれてしまったのか。宿割りで宿場が足りなくて困った時、あぶれた大村を気前良く部屋に受け入れたシーンがあり、
「意外とええところあるやんか」と思ったのだが。
今度は大村が仙之助の部下達から親分の敵として狙われている身である。
市川宇八郎改め芳賀宜道(八十田勇一)が永倉に、近藤勇が捕まって斬首される、ということを教える。
近藤の悪口を言う芳賀に永倉は
「お前に何が分かる。
俺の前で二度とあの人の悪口を言うな。
近藤さんを悪く言えるのは、苦楽を共にしてきた者だけだ。俺だけだ」
これはその通りで、悪口も言える資格のある者と、ない者がいる。
ある実力者AがBの人について悪口を言っていたとする。ここでCの者がAに同調してBの悪口を言えるかどうか。
CがBより劣っていれば、言う資格はない。
もっとも、優れていれば悪口を言っていいとは限らないのだが。
口は災いの元。迂闊に言った陰口が後でどんな災いをもたらすか分からないものである。
◇ ◆ ◇
久々に登場の桂小五郎改め木戸孝允(石黒賢)。
「私はあの男が嫌いではなかった」
と近藤を回想。
近藤勇と坂本龍馬が旧知の仲、というのが今回の新選組の新しい設定だったが、そう言えば、桂小五郎とも旧知の仲だった。
新選組と桂の色々なエピソードも描いた三谷版新選組だった。
薩長同盟締結後、西郷&大久保の薩摩コンビにバトンタッチするまで、銭形警部に追われるルパン三世の如く、新選組の宿敵として逃げ回ってくれた。
木戸は、新政府の我々も寄せ集めに違いなく、これからの時代を乗り切っていけるのか、と憂う。
◇ ◆ ◇
沖田総司(藤原竜也)の物語も、終局を迎える。
自分を守ろうとしたお孝(優香)が斬られ、病気も一気に悪化し、血だらけの部屋で横たわっている。
史実では、近藤処刑から2か月後に亡くなったそうである。
◇ ◆ ◇
刑場に連れて行かれる近藤局長。
「近藤勇、よく戦いました」
とふで(野際陽子)。初期の頃、勇に意地悪していたことを知っているだけに、余計に感動する。
「だいじゃ、今声をかけたとは」
と見張りの役人が探し始めると、
「そうだ近藤、よくやった」
「あんたはほんとのサムライだ」
という声が所々から上がってうやむやになる演出がいい。これぞ庶民の心意気。
◇ ◆ ◇
刑場に向かって走っていく原田左之助(山本太郎)を、尾形俊太郎(飯田基祐)が止める。
「生き延びるんです。
生き延びて官軍に一泡ふかせてやるんです。
それが残された者のつとめ」
この意見に賛成。
第47回「再会」〜生き延び、あきらめず、オンリーワンを目指すこと
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20041201
で述べたように、私は戦って無駄に死ぬより、生き残ってできることを考えていきたい。
文化・学問・言論・経済などの分野で活躍して、勝ち組の化けの皮を剥がしてやりんしゃい。
◇ ◆ ◇
新選組残党は、2つに別れたようだ。
斎藤一(オダギリジョー)が率いる組は、会津に入る。
土方歳三(山本耕史)、島田魁(照英)、尾関雅次郎(熊面鯉)らの組は宇都宮で官軍と戦っている。
土方は斎藤に、松平容保(筒井道隆)に近藤勇の助命嘆願に行かせる意図で2つに分けたように描かれていた。
容保公も、近藤の刑の実行は止められないとあきらめていたが、かたきは取る、と宣言。
斎藤一に、京にさらされる予定の近藤の首を取って来るように命令する。
走り続ける斎藤一。彼の物語は終わらない。
◇ ◆ ◇
新選組の隊服を着た滝本捨助(中村獅童)、討ち死に!
いつもピンチを切り抜けるしぶとさを持っていたこの男、最後まで生き延びるのではと思っていたのだが、最後に華々しい死を迎えた。
思えばこの捨助、モデルがあるとはいえ、虚構の存在であった。
物語が終わっても虚構の存在が生き続けているわけにはいかず、虚構の世界に返っていったのであろう。
◇ ◆ ◇
近藤勇の私刑を見物する人々。よく時代劇ではこんなシーンがある。
私刑を見物する人々の心理とは、どんなものだろうか。
死刑囚に余程の恨みがあったり、逆に親近感があったりすれば見ないではいられないだろうが、普通なら見たいとは思わないが。
あわやという瞬間、左之助の一声で中断される演出は良かった。左之助が切り込んでいって暴れるより、こちらの方が近藤局長も嬉しいだろう。これでこそ左之助だ。
◇ ◆ ◇
土方が島田、尾関とともに川を渡って走って切り込んでいこうとする土方最後のシーンは、佐々木只三郎(伊原剛志)最後のシーンと重なって見えた。実際は土方はここでは死なず、函館まで戦い続けるのだが。
そして、画面が黒くなって「完」の字が出、オープニングテーマ曲とともに回想シーンが流れ、試衛館メンバー8人が京に上ろうとするシーンで終わる。
若い情熱が時代を動かしていく、という輪廻転生を思わせる演出である。
『新選組!』をもっと楽しく観よう会 目次
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20041115