壬生義士伝（映画版）

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　昨年末にＴＶで放映されていたのを今頃ようやく見ることができました。
『壬生義士伝』
公開　2003年 原作　浅田次郎
　　監督　滝田洋二郎　脚本　中島丈博　音楽　久石譲

　１年間、大河ドラマ『新選組！』を見ていたおかげで、新選組メンバーについては一通り知っているつもりでしたが、中井貴一演じる吉村貫一郎については、知りませんでした。
　実在の人物のようで、活躍もしたそうですが、『新選組！』には登場しませんでした。
　やはりこの『壬生義士伝』のイメージが大きすぎるので、登場させられなかったのでしょうか。
　この吉村寛一郎、文武の両道に優れ、藩の子ども達を教えている立場です。
　ところが給料が少なくて食べていけなくなり、新選組に出稼ぎに行き、家族に仕送りします。
　守銭奴と言われるほど金に執着しますが、中井貴一の演技がうまく、憎めないキャラクターとなっています。
　とぼけた時と真剣な時の格差が激しいのですが、どちらも魅力がある。これでは憎めない。
　『義経』では源頼朝を演じる中井。これは期待できそうだ。
　中井頼朝が義経を上回る評価と人気を得ることが、『義経』成功のカギとなるでしょう。
　番組ではこの吉村寛一郎と斎藤一（佐藤浩市）との関わりを中心に描いています。
（↓↓↓）
　この斎藤一、オダギリジョーが演じた大河版では、人斬りと言われながらも結構人情深いところを見せていました。
　佐藤版斎藤は、最初こそ遅れて入った宴席では先に座っていた人を蹴飛ばして座ったり、吉村が気に食わぬといきなり殺そうとしたり、芹沢鴨ばりに滅茶苦茶やってましたが、最後には吉村を生かそうとします。
　吉村と斎藤についてはじっくりと見せてくれましたが、時間の制約のため、他の新選組メンバーについてはあまりよく分からなかった。
　近藤勇については、斎藤の
「近藤は俗物であった」
という人物評が出てきました。
　オダギリ斎藤ではこんなことは絶対に言わないでしょう。
　ここら辺、キャラクターの違いが出ていて面白い。
　近藤勇を演じたのは塩見三省。『義経』では、鞍馬寺の僧・覚日律師を演じている。
　覚日律師は渋い演技だが、この近藤勇は、メロンを頬張りながら伊東甲子太郎（斉藤歩）を「潰せ」と言ったり、どちらかというとコミカルな役柄だった。
　近藤も土方歳三（野村祐人）も出番が少なく、あまり印象には残らなかった。
　沖田総司（堺雅人）も出番は少なかったが、声は通っていたし涼しげな笑顔も見せていたし、強い印象を残した。
　このキャラのまま山南敬助に配したのはうまい配役だ。
　　　◇　◆　◇
　新選組の隊服が、黒い色の上着に赤い紐というか、何だか複雑だった。
　新選組の隊服は、作品によって違うのだろうか。
　実は青い色の新選組の隊服を見たのは、私は今度の大河の『新選組！』が初めてだった。
　それまでの新選組に関する乏しい知識は、手塚治虫の『新選組』と、かなり昔大晦日に放送された『白虎隊』に脇役で登場した新選組くらいでしかなかった。
　手塚治虫のマンガは印刷の関係もあり、もちろん白地に黒の模様の隊服だった。
『白虎隊』でも、白地に黒の模様だった。
　　　◇　◆　◇
　この作品では、谷三十郎の暗殺は斎藤一がしたことになっていた。
　それを見破った吉村が、斎藤を脅迫して口止め料を要求する。
　一度は自分を殺そうとした、自分を良く思っていない斎藤相手にこんな恐ろしいこと、よくできたものだなあ。
　取り引きに応じるような男だとは思えないのだが。
　　　◇　◆　◇
　伊東甲子太郎（斉藤歩）が御陵衛士として独立するに当たり、スカウトしたのは何と吉村寛一郎と斎藤一。
　この作品では、永倉新八（比留間由哲）は、冒頭に吉村貫一郎と手合わせをしたきり、スポットライトが当たることはなかった。
　斎藤が間者として御陵衛士に参加するのは『新選組！』と同じ。斎藤の通報により、近藤抹殺を企む伊東の企ては発覚。
　しかしそこから油小路の戦いまでが長かった。
　斎藤は身を隠し、その間に斎藤の妻・ぬい（中谷美紀）は自害。斎藤は隠れるのに疲れ、新選組に戻る。
　そこからようやく油小路の決戦である。
　　　◇　◆　◇
　会津藩・新選組連合軍と薩長軍の戦いに、大掛かりな合戦シーンがあった。
　その後、吉村貫一郎は「義のため」と言って突撃、煙の中に消える。
　　　◇　◆　◇
　こういった過去を、斎藤一と吉村貫一郎の教え子で、今は東京で医院を開業している大野千秋（村田雄浩）の回想シーンで綴っていく。
　実は吉村はあの突撃で死んではいず、後に南部藩の出張所に逃げ込み、切腹したことを、大野は斎藤に話す。
　実際あの現場にいた吉村と斎藤がなぜその後離れ離れになったのだろう。
　　　◇　◆　◇
　あれほど生きることにこだわっていた、あれほど家族のことを思っていた吉村がなぜあんな無茶な突撃をしたのか。
　吉村の息子・嘉一郎（藤間宇宙）は、なぜ五稜郭の戦いに身を投じたのか。
「義」のため、と言っていたが、この「義」とは、何なのか。
　徳川家の大将・慶喜はいち早く降参して恭順したというのに。

（参照）無駄に命を粗末にせず新しい道で活躍するべき、という考えはこちらに書きました。
第47回「再会」（11/28）〜生き延び、あきらめず、オンリーワンを目指すこと
　http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20041201
第48回「流山」（12/5）〜その場で最も真っ直ぐで誠実な行動
　http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20041209

　あと、佐助（山田辰夫）さんですか？使用人のような役柄だったのに、最後に博徒の親分に出世しているのが面白かった。どうりで使用人にしては目が鋭すぎると思っていた。
　この『壬生義士伝』、ＴＶドラマ版もあるようで、さらに浅田次郎の原作もあります。
　これらを比べるのも面白そうだ。

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大河ドラマ『義経』を脇役中心に観ていく傍観レポート　目次
　　http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20050114

『新選組！』をもっと楽しく観よう会　目次
　　http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20041115