◆◇【少年少女世界の名作文学ブログ・完全版】◇◆
第8回配本 水滸伝 梁山泊に集う108人の英雄の物語
(メルマガ 少年少女世界の名作文学ブログ・速読み版 の完全版です。)
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毎月1回発行するといいながら結構苦労し、ようやく完成しました。
久しぶりのメルマガ発行で、普通でもしょっぱい文章がさらにしょっぱくなっています。
さて、今回は『水滸伝』です。
日本では中国古典の必読書的な地位を占めている『水滸伝』ですが、恥ずかしながら私はほとんど読んだことはありませんでした。
私は子どもの頃、本の巻末や表紙折り返しなどに掲載されている本の目録を読むのが好きで、名作全集の目録には『水滸伝』も入っていました。しかし、文字の感じが何やら難しそうで(漢字で書けますか?)、さらに「すいこでん」という発音も難しそうで、この本は難しくて読みにくそうだ、と敬遠していました。タイトルで損をしている作品ではないでしょうか。
高校時代に後輩から横山光輝版を借りて読んだり、就職してからマンガ喫茶で読んだり(最後まで読めなかった気がします)しましたが、ストーリーをはっきりと知るまでに至りませんでした。
今年(2006年)の春頃から4か月かけて、横山光輝版の『水滸伝』が廉価版の4巻版で発行され、これを機会に購読して読んでみました。
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横山版と比較しながら読むのも面白かろうと、今回のテーマに『水滸伝』を選びました。
∽∽☆∽∽∽∽★ 書誌的事項 ★∽∽∽∽☆∽8
◆少年少女世界の名作文学43(名作文学50巻版)東洋編2(1967年)
◇水滸傳 土家由岐雄(文) 梁川剛一(絵)
◆少年少女世界の名作43(名作55巻版)東洋編1(1973年)
◇水滸伝 土家由岐雄(文) 梁川剛一(絵)
◆カラー名作 少年少女世界の文学25(文学30巻版)(1971年)
◇水滸伝 土家由岐雄(文) 柳柊二(絵)
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で紹介しているように、小学館から似たような少年少女向け名作文学全集が出ていました。
幸い全て図書館で借りることができたので、比較してみました。
一番古い50巻版では、「水滸傳」という古い字体が使われているのがポイントですね。
こんな字、今回初めて知りました。
挿絵に関して言えば、50巻版と55巻版はともに梁川剛一が描いています。
新たに書き加えた絵もありますが、一部同じ絵が使われています。
一方文章は、全て土家由岐雄です。
『フランダースの犬』などで、同じ訳者でも新たに訳し直して文章が大幅に変わった例もありますが、今回は皆同じ文章です。50巻版と30巻版ではページ数もほぼ同じです。
但し、55巻版は他の版に比べて、大幅にページ数が削減されています。
このため、物語も後半部分がちょん切られて、何と宋江が処刑場から助け出されて梁山泊に迎えられるところで終わっています。ここから面白くなっていくところなのに。
私としては、むしろ前半を省略して後半を収録すればよかったのにと思います。
祝家荘との戦いや高太尉のおい・高廉と戦った高唐州遠征、それに続く官軍との戦いや曹家との戦いが面白いところだと思います。
しかし戦が中心になると団体戦の様相を呈し、108人個々人の個性が薄まってしまうこともあります。
『水滸伝』は、梁山泊全体の物語でもあるし、108人が主人公となった英雄物語の集合体でもあります。その辺、色々な料理の方法があり、作者冥利に尽きるテーマだと思います。
ということで今回、少年少女向け翻訳(抄訳)の『水滸伝』(土家由岐雄・文)を読んだわけでしたが、横山版『水滸伝』の偉大さを感じることができました。マンガとはいえ、馬鹿にしてはいけません。土家版には乗っていないエピソードまで詳しく描かれていて、『水滸伝』の膨大なストーリーが頃良く整理されて描かれているので、イメージが掴みやすいのではと思われます。
ということで、もし人生をやり直せるならこんな風に読みたいという『水滸伝』の読み方の一案。
まず、中学生の間に横山版を読んで流れを掴んでおく。
その後、折に触れ、文字で書かれた『水滸伝』の色々なバージョンを読んでいきます。
最初は少年少女向けバージョンでもよし、その後、吉川英治や北方謙三など、色々な作家が書かれたバージョンを読んでいきます。1〜2年の間に1つのバージョンが読めればいいですね。
翻訳には2系統あるようで、原作に忠実なものと、作者の解釈で編集(アレンジ)されたものがあるようです。北方謙三版はかなり著者の編集が入っているようだとは知っていました。今調べてみると、吉川英治版もアレンジがあるようです。原作を知った上で、作者がどんなアレンジを加えているか比較しながら読むのが面白いと思います。
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『三国志』でも同じことがいえます。
本が沢山読めると言われる学生時代を無為に過ごしてしまった今、残された人生であとどれだけのバージョンの『水滸伝』や『三国志』が読めるか。あとどれだけの古典文学が読めるか。時間との戦いです。
『水滸伝』の原作については、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』に分かりやすく詳しい解説ページがあるので、そちらを参照して下さい。
水滸伝
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E6%BB%B8%E4%BC%9D
水滸伝百八星一覧表
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E6%BB%B8%E4%BC%9D%E7%99%BE%E5%85%AB%E6%98%9F%E4%B8%80%E8%A6%A7%E8%A1%A8
Category:水滸伝の登場人物
http://ja.wikipedia.org/wiki/Category:%E6%B0%B4%E6%BB%B8%E4%BC%9D%E3%81%AE%E7%99%BB%E5%A0%B4%E4%BA%BA%E7%89%A9
さて、『水滸伝』の内容について見てみます。
横山版にはプロローグのような部分がありますが、ストーリー自体は横山版も土家版も、八十万禁軍師範・王進が高大尉に呼び出され、逃げ出すところから始まります。その逃避行の途中で九紋竜・史進を鍛えるのです。
ところが王進も史進もその後、梁山泊には入らず、花和尚・魯智深の話に切り替わっていきます。この魯智深もすぐには梁山泊に入らず、その魯智深と義兄弟となった林冲がようやく梁山泊に入り、梁山泊が出てきます。
その後、魯智深の梁山泊入山のエピソードは詳しく描かれていますが、史進の梁山泊入山は目立たず、あっさりと触れられるに留まっています。王進に至っては、梁山泊に入山しなかったようです。
『水滸伝』は、一人の主人公を中心とした物語ではなく、色々な登場人物が主人公となった物語が合わさった群像物語であります。これは面白い趣向ではありますが、幼い頃に読むのは難易度が高い構成とも思われます。
特に最初の方は、各地の群雄が梁山泊に集結する前の諸国放浪の旅がテーマとなっています。
実はマンガ喫茶では、資格試験対策の合間に横山版(旧バージョンの8巻版)を1冊づつ読んでいたのですが、梁山泊の話なのに梁山泊の話が始まる前に梁山泊に入らずに消えてしまう登場人物が何人もいて、誰が誰だか分からなくなって混乱してしまった経験があります。その経験を踏まえ、今回読んだ時は登場人物をメモしながら読みました。
主人公が何人もいるということは色々なアレンジができるということで、書き手の腕の発揮し甲斐のある所だと思います。
ただ、少年少女向け翻訳の場合、注意力を集中させるためにも、いっそのこと梁山泊での出来事中心にまとめてみるのもいいのではと思われます。私が書くとしたらそうしたいですね。
なお、横山版では番外編「行者武松の巻」として描かれている武松のエピソードですが、土家版では物語本編の中に組み込まれて描かれています。横山版では描かれていない放浪中でのエピソードも描かれています。
ウィキペディアの「武松」の項に興味深い記述があるので、引用しておきます。
23回から10回に渡り主人公として活躍し、特にこの10回のことは「武十回」と呼ばれる。小説「金瓶梅」はこの「武十回」と登場人物、内容が重なっており、「武十回」を膨らませるような形で「金瓶梅」が生まれたとされる。
また、孟州到着までとその後で性格が変化していることから、元々は主人公も別の異なる話を組合わせて作られたとされ、水滸伝が様々な説話を集合させて作られたという説明の引き合いに出される事が多い。
以前、アーサー王伝説をテーマにした時、
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元来別個に存在していた物語が組み込まれたのではないか、という指摘をさせて頂きました。
『水滸伝』も、そのようなことが言えるのでしょうか。
「金瓶梅」については、禁書に近い本で、高校時代の世界史の先生が、発売後に急いで入手して確保したが、その後誰かに貸したら帰ってこなくて残念なことをした、といったような話をしていたのを思い出します。
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さて、『水滸伝』の主人公は、宋江ということになっています。横山版も土家版も、宋江を慕って梁山泊に入る者数知れず、押しも押されぬ偉大な人、という感じで描かれています。
ところがウィキペディア「宋江」の記述を見て驚いたのですが、原作では必ずしもそんな風には描かれてはいず、 「主人公にも関らず非常に読者人気の低い人物」 という記述があります。
ウィキペディアの記述、色々と面白いことが書かれているので、宋江に限らず他の人物の項目も一読することをお勧めします。
ともかく、ウィキペディアのこの記述を読むまでは分からなかったのですが、横山版でも土家版でも宋江の名声は中国全土に広まっている、ということになっています。
梁山泊に入る前、宋江は各地を放浪します。その間、強盗やら詐欺師やら、殺人をいとわない悪人から何度も命を狙われますが、間一髪、その正体が宋江だということが分かり、あの名高い宋江様でしたが、どうかお許しを、ということで、仲直りしたり、時には一緒に梁山泊に入ったりします。
悪人からも慕われる宋江、ということでそれは宋江の名声を表しているのですが、よく考えれば恐ろしいことでもあります。宋江ほどの名声がなければ、殺されてしまうわけです。
例えば、私などは完全に無名なわけですから、いくら清く正しい人間であっても殺されているわけです。
宋江は中国全土に名声が広がっている著名な役人でした。これほど名が広まっていないと助からないのです。
これを今の時代に置き換えて考えてみます。
“ヤ”の付くようなアウトローな人達から見ても、医者だとか法律家だとか起業家だとか幹部だとか社長だとか、とにかく有名で力を持っていると、人脈上何かと役に立つからというわけで、一目置かれるということです。
ところが私のようなペーペーで取るに足りない存在であれば、何の役にも立たないから邪魔になれば消しても構わない存在、ということであります。残念ながら、職場では日々そのようなことを実感しています。
人として生まれてきたからには、一目置かれるような存在になるように努力しなければなりません。
さらに、旅人を襲って悪事を働いている悪人であっても、宋江と仲直りすることで許されています。
宋江にとってはそれでいいかもしれませんが、後に来る旅人としては危なっかしいことです。
旅人を襲う悪人は退治してほしいものです。
梁山泊には、こういった盗賊も多数入山して、108人の豪傑に仲間入りしています。ここら辺が納得いかないところであります。
例えば、盗賊とは言わないまでも、天退星・雷横という役人のエピソードを挙げておきます。
これは横山版にはなく、土屋版に描かれるエピソードです。
街に白秀英という女芸人が現れ、評判となる。雷横はこの芸を見に行き、見物料を要求され、あいにく持ち合わせがなく断ったところ、なじられたため、怒って白秀英の年老いた父親を殴りまくる。
白秀英が知事に訴えたところ、雷横は首かせをはめられて芝居小屋の前で見せしめにされる。見舞いに来た雷横の母親を白秀英が殴ったため、雷横は白秀英を殴り殺し、流刑に処せられるが、護送役人の美髯公・朱仝(しゅどう)に同情され、逃がしてもらい、梁山泊に入山する。
雷横の人物像については詳しく記されていないのですが、芸者父娘になじられて怒って老人を殴打するのですから、少々乱暴の気があるようです。(白秀英を殴り殺したのは白秀英に母親を殴られたから同情の余地はありますが。)
なかなかの人物という美髯公・朱仝が罪をかぶって逃がしてくれたというのだから、ある程度の人物ではあったと思われます。ウィキペディアの「水滸伝百八星一覧表」では、席次が25番目だということですから、かなりの上位です。
しかし今回読んだ土家版では単なる乱暴者というイメージで、詳しい人物像については分かりません。原作ではもっと詳しい記述があるのでしょうか。
また、雷横を逃がした身代わりに流刑地に送られることになった美髯公・朱仝(しゅどう)はなかなかの人格者のようで、この方もスカウトされて梁山泊入りしています。「水滸伝百八星一覧表」では12番目の席次となっており、これは武松や花和尚・魯智深より上位で、かなりの人物だと思われます。
しかしそのスカウトの方法が残酷で強引で、納得しがたいところがあります。
美髯公は流刑地に送られるが、知事の眼鏡にかなって身近に置かれ、4歳になる知事の息子になつかれる。
半月ほどしたころ、美髯公はぼっちゃんを連れて街のお祭りを見に行く。そこで雷横に再開し、ぼっちゃんをその場に置いて、雷横と梁山泊の軍師・呉用と面談。梁山泊入りを断り、元の場所に戻るも、ぼっちゃんがいない。
黒旋風の李逵(りき)(=李鉄牛)が殺してしまったのである。これも全て、美髯公の帰る場所をなくして梁山泊に迎える作戦だったのである。一悶着あるが、結局美髯公は梁山泊に入る。
横山版では乱暴物だが好漢のように描かれている黒旋風の李鉄牛ですが、こんな残酷なことをしていたのですね。
梁山泊では後に副首領となる玉麒麟・盧俊義を迎える際も計略を用いますが、ここまで残酷なことはしていません。
何の関係もない子どもを殺してしまうのですから、少々どころかかなりやりすぎの感がします。
少年少女向け翻訳では、
「殺したというのは方便で、実は李鉄牛によって無事に家に送り届けられていた」
という風な創作が加えられていてもいいのではと思います。
ウィキペディアの「李逵」の項を見ると、
「無節操に人を殺すせいか辟易する読者も多く好き嫌いがはっきり分かれる人物のようである。」
という記述があります。まだ他にもこのようなことをやっているのでしょうか。(ウィキペディアの記述を読むことで、『水滸伝』をより楽しめます。)
ところで、「美髯公」といえば『三国志』の関羽を思い出します。関羽のイメージでしょうか。
ウィキペディアの「林冲」の項目には、
「あだ名は豹子頭といい、豹のような顔という意味。三国志中の張飛と同じ容貌であり、用いる武器が蛇矛であることからも張飛をなぞらえているとされる。」
という記述が。
小温侯・呂方は『三国志』に登場する呂布に傾倒しているようで、ウィキペディア「方天画戟」の項には、
「『水滸伝』では呂布に傾倒した呂方が使用している。」
と記述されています。
『三国志』との対比でいえば、「毛頭星・孔明」「独火星・孔亮」という名が気になります。『三国志』で大活躍するあの方に関係あるのでしょうか。
『水滸伝』に話を戻します。
雷横や美髯公の入山時のエピソードを見て分かるように、梁山泊に集まった108人の豪傑には、二面性があったということではないでしょうか。
一方に、清廉潔白な役人や軍人でありながら陰謀で追われた宋江や花栄や柴進など。梁山泊追討の官軍の中に居ながら請われて仲間入りした人々もいます。
もう一方に、盗賊と変わらないような乱暴物の連中。
また、朝廷に対する姿勢にも2種類あったようで、宋江などはあくまでも朝廷に忠であろうとし、その大義を大切にしています。一方、ウィキペディアの記述からも伺えますが、朝廷何するものぞ、という考えを持った人々もいたようです。
まあ108人もいるのだから、色々な考えがあって当然ですな。
梁山泊は、各地の山賊・盗賊集団も仲間に加えて勢力を増していきます。
一方、そんな梁山泊を倒して名を挙げようという勢力も出てきました。
祝家荘や曹家です。
梁山泊軍はこれらの勢力との戦いに非常に苦戦しました。曹家との戦いでは一度は首領の晁蓋をも失う敗北を喫し、退却します。
国が乱れている中、山賊の巣窟とも思える梁山泊を退治しよう、と立ち上がったのはなかなか殊勝な心がけだと思います。
祝家荘などは善政を敷いて人民からも支持されているようで、人民も一緒になって戦っており、士気の高さは領地全域に広がっていると思われます。
最後には祝家荘も曹家も梁山泊軍に滅ぼされてしまうわけですが、和睦して仲間にすることはできなかったのか、とも思います。
このように梁山泊は勢力を拡大していくのですが、梁山泊の他にも中国の東西南北に大規模な反乱が起こります。
朝廷は宿太尉の献策により、梁山泊を反乱軍鎮圧のための官軍に編入します。ここから梁山泊軍は、報われることなく4大反乱軍鎮圧のために連戦を続けることになります。
戦いが終わった時、108人の豪傑はわずか36人となっていました。
この辺り、読んでいて辛い展開です。
今回発売された横山版の最終4巻の巻末の解説
【横山『水滸伝』その後
滅亡に向かう英雄たちの悲惨な物語】(文・立間祥介)
によると、中国では反乱軍を官軍に編入して他の反乱軍の平定に向かわせることがよくあったそうで、これを「招安」というそうです。
しかし一大勢力を築いた梁山泊が、なぜこんな報われない辛い戦いをしなくてはならないのでしょうか。
私などは、はみ出し物の別天地を築いた梁山泊は最後まで独立を保っていてほしかった、と思うわけです。
或いは、4大反乱軍と結ぶとか。これはあまりに不敬な考えなので書くことはできません。
ウィキペディアの記述を見ると、儒教道徳を重んじる風潮の影響が大きかったようです。賊の集まりが栄えて終わり、などの不敬なストーリーにするわけにはいかなかったのでしょう。
色々な事情のかね合わせの末、このような結末が選ばれたのだと思います。
生き残った36人の豪傑は、それぞれ官爵が与えられ、任地に散っていきます。
横山版ではここで終わっているのですが、原作ではその後も描かれています。
朝廷に巣くう悪の根源である4人の大臣は、梁山泊の面々が気に入らず、色々と陰謀を企み、ついに宋江の毒殺に成功します。
残念な結末ですが、色々な事情やしがらみがあり、これが無難というところでしょうか。
『三国志』では、劉備の蜀が天下を統一してしまうという結末が違うバージョンも存在するようです。残念ながら私はまだ読んでいませんが。
それと同じように、『水滸伝』も、結末が違うバージョンなどはないのでしょうか。
『水滸後伝』
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というのがあるようですが。
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はてなキーワード「水滸伝」には
「中国では偉大な物語とされ、カバーすることは恐れ多いとされるとかいう話らしいが、日本では色々な作家が挑戦している。」
という記述があります。
今回、『水滸伝』を読んでみました。こんな面白い物語、何でもっと早く読んでいなかったんだ、と後悔しています。
最初の方で述べたように、中学のうちに横山版をマスターし、その後活字の色々なバージョンを読破するべきだと思います。
遅きに失した感もありますが、今後も『水滸伝』始め、世界の名作文学に挑戦していきたいと思います。
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