OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

カネ持ちの陰謀「年収格差100倍時代」の生き方 「基礎の基礎」

 

 本書のテーマは2つあります。それは、あとがきの最後の部分で森永さんが書いていることに要約されるでしょう。

 日本では、所得の二極化が、今後も一層進んでいくでしょう。もちろん、私はそうならないように全力で戦っていくつもりですが、これだけデフレと増税で国民が苦しんでいるなかでも、選挙をやれば与党が圧勝してしまうわけですから、流れを変えることは容易でないと思います。
 ただ、そうした厳しい世の中でも、この本を読んでくださった方は、いま世の中で起きていることの仕組みを理解いただけたでしょうから、少なくとも、勝ち組に生き残ろうとして、自分の健康を傷つけたり、魂を売り渡すような真似をしなくて済むのではないかとひそかに期待しています。
 いつか日本中の人たちが、安心して普通の暮らしができる時代に戻れたらいいなと心から思っています。

 つまり、テーマは、
1)負け組はどんどん不利になり、勝ち組はどんどん有利になって格差が拡大していく現状の説明
2)このような苦しい時代でも、収入が少ないなりに豊かに幸せに暮らしていく生活のススメ
 
の二本立てということでしょうか。
 
 まあ私も負け組かつ下流かつ経済弱者でありますが、今後税金も上がり、社会保障は削減され、しかも加齢に伴ない健康状態も悪くなっていくと、今後の生活を楽観視できないだろうということは分かりました。
 しかも増税は私のような負け組かつ下流かつ経済弱者を意図的に狙って行われているようです。
 私が子どもだった頃、ドラえもん鉄腕アトムが生まれたという21世紀の未来は、バラ色に輝いていました。
 未来は時を経るごとに良くなっていき、やがては誰もが幸せに暮らせる理想的な社会が訪れるだろうと、漠然と思っていました。
 

明るい未来

明るい未来

 ところが実際に来た21世紀は、格差が拡大していくひどいものでした。しかも、時を経るごとに悪くなっていくようです。
 自分自身が負け組かつ下流かつ経済弱者に属しているのだから、余計に実感させられる。
 
 森永さんは本の前半でまず、こういった格差拡大社会の仕組みについて説明しています。
 例えば、規制緩和について、酒が酒屋だけでなくスーパーやコンビニで販売できるようになったことを例に挙げて説明しています。
 
●スーパーやコンビニで酒を販売できるようになる
  ↓
●それまで酒を販売していた酒屋の売り上げが減る。
  ↓
●酒屋の廃業につながる。
  ↓
●スーパーやコンビニの店員はパートやアルバイトが多く、正社員雇用につながらない。
 酒屋で働いていた人も同じような職に就こうとすれば、パートやアルバイト店員として働くことになる。
 
 結局規制緩和とは、スーパーやコンビニで働いている不安定雇用のパートやアルバイトが増える(中間所得者層の減少・低所得者層の増大)、ごく一部の高額所得者層が増えるだけの、年収格差を拡大させる政策だというのです。
 
 しかもそういった格差は子の世代まで影響を与えそうです。
 それは、教育という分野に顕著に現れています。
 親の経済力で大学の選択が左右され、しかもその大学自身が勝ち組と負け組に分かれて行くのです。
 まさにアンチユートピアの世界です。
 
 こういった仕組みを知り、改善していこうとする努力は必要です。
 そのために現状を分析したのが本書の第一のテーマとすれば、その一方で、貧乏でもそれなりに豊かに生きていくことができる、と発想の転換を促すのが本書の第二のテーマです。
 
「豊かさとは、心にゆとりがあること」
「幸せとは、豊かさを感じられること」
 
と森永氏は言います。
 森永氏は、アメリカ型の生活と西欧型の生活を比較し、日本が目指しているアメリカ型の生活は実はストレスが高い社会で、西欧型の生活こそ目指すべきではないか、と言います。特に、イタリアの生活に注目しています。
 また、江戸時代の町人の生活は実は豊かだったのではないか、と江戸時代の町人の生活について詳しく分析しています。
 
 面白いのは、森永さんは、株でもうけるためではなく、株主優待制度(オマケや割引券)を利用するために株を持っているというのです。
 例えば、吉野家では牛丼並盛の食事券、タカラではチョロQがもらえるから株を保有しているという。
 
「よく利用する店や乗り物の代金が安くなるなど、自分の生活スタイルにあったもの」
 
株主優待制度を利用するのがコツだそうです。
 これはなかなか面白い株の利用法だ。
 私は投資もギャンブルも嫌いで株なんか考えたこともなかったが、こんな株の楽しみ方があったのか。
 しかし吉野家はほとんど利用しないし、オモチャも興味ないし。
 よく利用する企業として真っ先に思いつくのはアマゾンや楽天市場か。
 株主にはアマゾンギフト券や楽天ポイントが付与される、というのなら購入してもいいのではないか。
 また、賃貸ワンルームマンションに住んでいて毎月家賃を払っているが、管理会社の株を購入したら割引になるとかいう制度があればいいのに。
 はてなダイアリーが株を公開したら、株主には有料オプションを無料で利用できるよう優待されるとか。
 
 そして最後に、ブリキのおもちゃ博物館の北原照久さんと対談し、豊かな生活とは何ぞや、と語り合います。
 森永さんも北原さんも日常生活を質素に切り詰め、コレクションの充実にお金をつぎ込んでいます。
 だから格差社会に負けている負け組の人も、質素な生活をした上で豊かな生活を送ることができるのではないか、ということでしょう。
 
 しかし森永さんも北原さんも、一般生活は質素に切り詰める一方、コレクションには十分な費用をつぎ込んでいるのだから。いくらコレクションしたいものがあっても、コレクションにかけられる費用はなく、生活を質素に切り詰めるだけという経済弱者の経済状況はどうしたって変わりません。
 著名人となって講演や原稿やTV出演料をもらうことができ、それをコレクションのためにつぎ込める森永さんも北原さんも勝ち組かつ上流かつ経済強者には違いない。
 しかしそれでも、このお二方の対談は負け組かつ下流かつ経済弱者である私には、豊かな人生を送るための示唆になったと思うのだ。少なくとも、バリバリの勝ち組経済人の成功体験談よりは。
 
 経済格差をますます拡大させるような政策が取られている現在、負け組かつ下流かつ経済弱者である人々(私も含め)は、こういった状況を改めようとする意識を持つのは大事なのですが、一方その仕組みを理解し、負け組かつ下流かつ経済弱者である状況をどうやって克服していくか、克服できないまでも、その状況の中で潰れてしまわず豊かに幸せに暮らしていくにはどうすればいいのか考えていく必要があります。
 森永卓郎さんの著書はその一助となるやもしれません。
 
森永卓郎サイト http://www.rivo.mediatti.net/~morinaga/takuro.html (音が出ます)
森永コレクションのページ http://www.rivo.mediatti.net/~morinaga/collect.html
グリコ コレクションのページ http://www.rivo.mediatti.net/~morinaga/gulico.html
 




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