長い間中断していましたが、最近、速読メルマガを再開しました。
『世界の名作を読みながら速読力を身に付ける(マガジンID:0000144067)』
http://www.mag2.com/m/0000144067.html
『日本の名作を読みながら速読力を身に付ける(マガジンID:0000145860)』
http://www.mag2.com/m/0000145860.html
今度は投げ出したりせずに毎日読む習慣をつけるつもりです。
そしてできるだけ、メルマガが終わると該当する本を読み、読書速度を測定してみようと思います。
……ということで、『世界の〜〜』を再開すると、丁度うまいこと『帰ってきたシャーロック・ホームズ』の最中でした。
内容も面白いし、短編集なので区切りがつけやすい。
現在進行形で読みながら過去ログも読んでいきます。
メルマガと合わせて活字の本も読もうと、図書館で借りてきました。
使用したテキストは、偕成社版シャーロック=ホームズ全集です。
これは児童書という扱いながら、完訳版であり、シドニー・パジェットの挿絵も収録されており、各務三郎さんのシャーロッキアン風の詳しい解説もついている本格派であります。
児童書だから活字が大きくて読みやすいというのが採用した大きな理由ですが。
シャーロック=ホームズの帰還 上 シャーロック=ホームズ全集 (9)
- 作者: コナン=ドイル,青木日出夫他
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 1983/11
- メディア: 単行本
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なお、本書については、こちらのサイト様で詳しい説明がされています
なお、本短編集のタイトル訳として、主に『〜帰還』『〜生還』というのが用いられているようです。
私としては、『帰還』では、単に帰ってきただけという印象があり、死んだと思われていたホームズが生きて帰ってきたという意味を持たせるためには、『シャーロック・ホームズの生還』の方がいいと思う。
シャーロック・ホームズの帰還 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA%E3%81%AE%E5%B8%B0%E9%82%84
【プライオリ・スクール】
弟69回 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112069.html から
第91回 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112091.html まで
読書時間 37分
ページ数 72頁
総文字数 480×72=34560字
読書速度 34560÷37=934字/分
訓練時速度
中級15文字単位 レベル5 1分間最大表示文字数 2700字
初級10文字単位 レベル6 1分間最大表示文字数 3600字
速読メルマガを再開した時、配信されていたのがこの作品。
訓練時の速度はかなり速い目であるが、短いセンテンスの会話なら何とか分かるが、長い説明文の時はさすがに分からない。
実際に読んでみると、訓練時速度よりかなり遅い速度である。
これが早くなっていけば成功である。
誘拐事件をテーマにした作品。
名門私立予備校から公爵の息子がいなくなる。
容疑者は、ドイツ人教師。
このドイツ人教師の名前がハイデガーって、すごい。
マルティン・ハイデッガー(1889年〜1976年)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%AC%E3%83%BC
『プライオリ学院』の発表は、ストランド・マガジン1904年2月号とのこと。
今でこそハイデッガーといえばドイツの著名な哲学者を連想するが、ドイルがこの短編を書いた頃には、マルティン・ハイデッガーはまだ15歳程度。ドイツ人でハイデッガーといっても哲学者を連想することはなかったであろう。
そしてこのドイツ人教師、無口の気難しい性格で、先生にも子どもにもあまり人気はなかったとは哀れ。
しかし責任感は強いようで、窓から逃げ出して悪人の馬に乗って逃げる少年を自転車で追跡とはなかなかの行動派。悪人から致命傷となる傷を頭に受けてもさらにまだ自転車に乗って走ろうとしたとは、並みの精神ではない。
ただ、悪人がハイデガーを殺した時の状況がいまひとつはっきりしない。
ハイデガーは馬の後を自転車で追っかけていたのだから、悪人が待ち伏せしているのを知れば用心するはずである。見晴らしの悪い場所で待ち伏せされたのだろうか。
誘拐事件の黒幕であった公爵の秘書(実は隠し子)も根っからの悪人ではないようで、死者が出たことを知って公爵に全てを打ち明け、公爵の元を永久に去る決心をする。それまで嫉妬深い陰湿な行動をしていながら最後に改心するとはなかなか立派である。共犯者の悪人の逃亡を助けてやろうとするのはやりすぎか。
しかしこの作品で一番印象に残ったのはやはりハイデガー先生である。
【ブラック・ピーター】
その92 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112092.html から
その106 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112106.html まで
読書時間 23分
ページ数 44頁
総文字数 480×44=21120字
読書速度 21120÷23=918字/分
すこし速度が落ちてしまった。
この作品には、ホームズが将来を楽しみにしているスタンリー・ホプキンズという若手の警部が登場します。
けれどやっぱり捜査の間違いをホームズに指摘される羽目になるのですが。
ラム酒は船乗りが飲む酒ですか?スティーブンソンの『宝島』でもよく出てきました。
ラム酒 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%A0%E9%85%92
娘にまで
「死んでよかった、殺してくれた人に感謝する」
と言われる乱暴者って……。
ホプキンズ警部に犯人と間違われて逮捕されてしまったネリガン青年。
ネリガンの父親はかつて証券を現金に変えるためにノルウェーに船旅に出かけ、遭難した。
しかし何で証券を現金に変えるためにノルウェーまで船旅する必要があったのだろう。
そこがどうしても分からなかった。
経済とか証券とか株の話は苦手なんだ。
ところでピーターといえば「ウルトラQ」に出てくる怪獣にもそんな名前のがいました。
番組そのものは見たことないのですが、子どもの頃何度も繰り返し読んだウルトラ怪獣百科に載っていました。
不恰好で奇妙な格好の怪獣でしたが、この不気味な死に方をしたブラック・ピーター船長の話を読んでふと思い出したわけです。
【チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン】
その107 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112107.html から
その117 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112117.html まで
読書時間 18分
ページ数 36頁
総文字数 480×36=17280字
読書速度 17280÷18=960字/分
偕成社版では『C=A=ミルバートン』(青木日出夫訳)と訳されています。
私が以前読んだ創元推理文庫版では『恐喝王ミルヴァートン』(阿部知二訳)と訳されていました。
ホームズがアルセーヌ・ルパンのような活躍をする異色作。
ミルバートンとの対決弟1ラウンドではホームズらしくない完敗をするところも見所。
最初の対決ではホームズに完勝したミルバートンも、その後脇が甘すぎないか。いつも自分がやっていることを逆に行われ、女中に秘密を漏洩されてしまう。
部屋の中にホームズとワトスンがいることも、金庫が完全に閉まっていないことも気付かないとは、注意力が足りない。
ミルバートンという男、攻めるのは強いが守るのは弱いというタイプのようだ。
深夜の訪問客がミルバートンを射殺する時の言葉
「これでもくらえ、犬め、これでもか!――これでもか!――これでもか!」
は、情念が感じられる名訳である。
底本は青空文庫で、翻訳者は“枯葉”という方のよう。
現実の生活で「これでもか!」という言葉は、あまり出てこないものではなかろうか。
しかし、この場面でこの言葉を3度も繰り返すのは、リアリティある表現である。
なお、偕成社版では
「さあ、思い知るがいい、どうだ! どうだ! どうだ!」
と訳されています。
原文でも何か掛け声のような言葉が3回繰り返されているのでしょう。
私なら何と言うか。
「死ね!」
と言って後は無言で連射するかもしれない。
ミルバートンが射殺された後、金庫の中のミルバートンが収集した忌まわしき証拠物件をホームズが処分してしまったのはさすが。やはりホームズはホームズである。
【空き家の冒険】
その1 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112001.html から
その14 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112014.html まで
読書時間 24分
ページ数 44頁
総文字数 480×44=21120字
読書速度 21120÷24=880字/分
読書速度が今までで一番遅くなってしまった。前半、ホームズの不在時の説明の説明部分が読み飛ばしにくく、じっくり読んだということもある。
ライヘンバッハの滝でモリアーティ教授と共に死んだと思われていたホームズが復活する話。
かなり盛りだくさんの内容である。
本作品では死んだと思われていたホームズが生きていた説明がされる。なかなか筋が通って愉快な冒険談だが、少々納得いかない部分も。
セバスチャン・モラン大佐はライヘンバッハの滝で主のモリアーティ教授を葬ったホームズを狙って失敗したわけだが、何で失敗したのだろうか。不確かな石を使わずに得意の空気銃や銃などの飛び道具を使えば確実ではなかったか。
わざわざ崖の上に先回りして狙った、というのもおかしい。近くから狙えば確実だったのでは?
また、ホームズはモラン大佐が窓の外から空気銃で狙撃することを想定して作戦を立てた。
しかし、もしモラン大佐がもっと大胆不敵で、家の中に押し入って実力行使するということも考えられる。
そんなことになればハドソン夫人が危険にさらされることになる。
ちょっと危なっかしい作戦ではなかったか。
モラン大佐を捕まえたホームズは、これで安心してロンドンで暮らせる、と言っていた。
しかし、モリアーティ一味の残党にはまだ恐ろしい部下が一人残っているのでは?
モリアーティ死亡時には3人の恐ろしい部下がいて、モリアーティ一味の裁判では、最も危険な二人の男を野放しにしてしまった、とはホームズの弁(もう一人は逮捕されたのだろうか)。
そして一人(モラン大佐?)しかロンドンにいなくなったのでロンドンに戻ることにしたという。
他の一味は危険ではないのだろうか。
また、ホームズそっくりの蝋人形の影を使ってでモラン大佐をおびき寄せたのだが、これを運ぶ時にモラン大佐に気付かれなかったのだろうか。
人生のある時期、突然悪の道に入ることになったモラン大佐についてホームズは、
「僕の考えでは、個人の発育は祖先の歩みのすべてを表し、こうした善もしくは悪への突然の転換は代々血筋に受け継がれた強い影響力の表れなんだ。人は、いわば、一門の歴史の縮図になるのだ。」(あおぞら文庫版より)
と述べている。
これは、「個体発生は系統発生を繰り返す」というヘッケル(1834〜1919)の「反復説」を思わせる。
本作品の発表は1903年だからヘッケルの説を下敷きにしているのかもしれない。
エルンスト・ヘッケル 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%98%E3%83%83%E3%82%B1%E3%83%AB
反復説 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8D%E5%BE%A9%E8%AA%AC
【ノーウッドの建築業者】
その15 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112015.html から
その31 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112031.html まで
読書時間 29分
ページ数 56頁
総文字数 480×56=26880字
読書速度 26880÷29=926字/分
ノーウッドの建築業者であるジョナス・オールデカー氏殺害容疑者・マクファーレン青年が助けを求めてくる。マクファーレン青年はレストレードに逮捕されるが、ホームズの捜査により無罪が証明される。
勝ち誇ったレストレードの間違いを指摘して真相を明らかにするという、ホームズ物の真骨頂ともいえる黄金パターンの作品。
真犯人オールデカー氏は借金を踏み倒して蒸発、コーネリアスなる別人になりすますついでに、自分に肘鉄を食わせた元婚約者の息子を殺人犯に仕立て上げて陥れようとしていた。建築家としては一流だったようだが、犯罪に関しても一流の男。モリアーティ亡き後の好敵手にふさわしい人物ではないか?
しかし自分を振った女性のことを怨み続け、息子に復讐をしようとは、何と執念深い性格であろう。その執念深い性格が仕事にはプラスに働いていたものと思われる。
最近、建築家がマスコミに登場することも多く、タレント建築家なる言葉も出てきている。小説やドラマに登場する建築家を分析するのも面白い。
マクファーレン青年がオールデカー殺害の時使ったという物証とされたのはマクファーレンのステッキ。若くて足が悪くもないのにステッキを持っているのだろうか。当時のイギリスではステッキを持つのがファッションだったのだろうか。
ホームズが最初の捜査の場所に選んだのは、マクファーレン青年が両親と住んでいるブラックヒースの地。
マクファーレンの母親は、結婚式の日にオールデカーから送りつけられた、切り刻まれた写真を見せられる。こんな写真をずっと持っているというのは少し変だ。普通なら気味悪くて捨ててしまうところだが。
両親からオールデカーの悪評を聞かされたホームズはしかし、「推理に役立つものは何も引き出せなかった」と落胆。一体どんな証言を求めていたのだろうか。
オールデカーの家政婦・レキシントン夫人というのも曲者である。オールデカーと好一対の助手。オールデカーとの関係は単に主人と家政婦との関係なのだろうか?
ホームズが回想する、恐ろしい殺人者バート・スチーブンスの事件とは?今回と似たパターンの事件だったようだが、この時は本当に犯人だったらしい。この事件もおもしろそうであるが。シャーロッキアンの研究はあるのだろうか。
ホームズは、緊張して考えをまとめている時は食事を取らない、という記述がある。今回、朝食を取らずにノーウッドに向かったが、他の作品でもそのような行動を取っているのだろうか。
オールデカーは3階にしつらえた秘密の隠れ部屋にいて、蛇足となる変な小細工をしたためにボロを出して捕まった。レストレード達警官が捜査しているのだから、ノーウッドに残っていずにさっさと高飛びしてコーネリアスとなっていれば良かったのでは?“秘密の隠れ部屋”なんかあって隠れられることができたことが逆にあだになった。
オールデカーは指紋を使ったトリックを使った。封筒のろうに付いた指紋を使ったそうである。当時は封筒はろうで口をふさいでいたのだろうか。
血液はマクファーレン青年の血ではなく、オールデカー自身の血を使ったようである。当時は指紋のことは分かっていても、血液を分析して本人のものか別人のものかの判別まではできなかったようである。
最後にオールデカーは憎しみでぎらぎらした目でホームズを見て言い放つ。
「いずれ、この借りはかえさせてもらいますぞ。」
軽くいなすホームズ。
「いくらしゅうねんぶかいきみでも、この二、三年は刑務所にいるようになるのだから、そんなひまはないと思いますね。」
しかし数十年も元婚約者を恨んで復讐しようとすることを思えば、二三年はすぐではないか?
死刑や終身刑になったり、獄中で死亡したりしなければいずれ釈放されるであろう。その時のオールデカーは果たして、借りを返そうとしたのだろうか。敵キャラとしては面白い存在なので、ホームズとオールデカーの対決第二ラウンド・オールデカーのリターンマッチは面白い素材だと思う。
【踊る人形】
その32 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112032.html から
その51 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112051.html まで
読書時間 30分
ページ数 54頁
総文字数 480×54=25920字
読書速度 25920÷30=864字/分
この短編には、人形の形をした暗号が出てきます。
中学や高校生の頃、私はこの暗号が大好きで、人形とアルファベットの対照表を作って年賀状で使ったりしていました。
このタイプの暗号については、ポーの『黄金虫』にも出てきますね。どちらもアルファベットの使用頻度が“E”が一番多い、ということから解いています。
英語の綴りでは“E”が多いというのは、英語を習い始めたばかりの子ども時代の私も感じていました。私は英語は小学6年の頃、公文式で習い始めましたが、「“E”が多いな」ということを感じました。
『黄金虫』は単語の区切りを、スペースの大小で検討をつけていましたが、『踊る人形』では人形に旗を持たすことで表しています。これはうまい。
ヒルトン=キュービット氏がアメリカから来たエルシーという女性と知り合い、結婚して幸せに暮らしていたがエルシーには隠された過去があり、一通の手紙がアメリカから届いた日を境に苦悶の日々が始まる。
過去に触れないのは結婚前からの約束だ、ということでキュービット氏は夫人にあえて訳を尋ねたりしないわけだが、これはあまりにも杓子定規すぎる。ホームズが助言したように、やはりキュービット氏は夫人に直接聞いてみるべきだった。
結局、この事件ではホームズの現場への到着が間に合わず、少しの遅れのために依頼人の命を救うことができませんでした。ホームズ物では他にそんな例はあるのだろうか。確か『オレンジの種5つ』もそのようなパターンだったように思うが。
エルシーは実はシカゴの盗賊団のボスの娘で、足を洗うためにイギリスに逃亡し、今回の作品で真犯人だったエイブ=スレイニーは盗賊団のメンバーで、婚約者であるエルシーを追ってアメリカからやって来たのでした。
エルシーの父親であるパトリック団長やその他のメンバーはどうしているのでしょうか。もうエルシーを訪ねに来る人はいないのでしょうか。エイブ=スレイニーも懲役刑となったといいますが、刑期が終わってからの行動は?
【さびしい自転車乗り】
ひとりぼっちの自転車のり
その52 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112052.html から
その68 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112068.html まで
読書時間 24分
ページ数 42頁
総文字数 480×42=20160字
読書速度 20160÷24=840字/分
読むたびに速度が落ちていく。もっと精進せねば。
本短編の原題は“The Adventure of The Solitary Cyclist”。
「さびしい自転車乗り」「ひとりぼっちの自転車のり」の他に、『孤独な自転車乗り』、『謎の自転車乗り』『あやしい自転車乗り』『美しき自転車乗り』(新潮文庫、グラナダTV版翻訳)などと訳されている。
主要正典邦題対照表
http://www.diogenes-club.net/index.cgi?page=%BC%E7%CD%D7%C0%B5%C5%B5%CB%AE%C2%EA%C2%D0%BE%C8%C9%BD
さて、“Solitary”は誰を指しているか。
常々自分自身が“孤独な自転車乗り”だなあと自覚している私はもちろん、カラザース氏のことだと思う。だから「孤独な」「寂しい」という翻訳が一番しっくりくる。
本短編には自転車乗りは二人登場する。一人はホームズに捜査を依頼した美しき音楽教師ヴァイオレット・スミス嬢であり、もう一人は犯人グループの一人カラザースである。翻訳ではこのどちらを指すことになるか、分類してみる。
不明) 「さびしい〜」「ひとりぼっちの」「孤独な」
カラザース) 「謎の」「あやしい」
スミス嬢) 「美しき」
「さびしい〜」「ひとりぼっちの」「孤独な」
については、まず、スミス嬢には当てはまらない形容。スミス嬢には毎週末帰宅する実家があり、しかも婚約者もある。
一方カラザースは、犯人グループの一味でありながら、仲間を裏切ってスミス嬢を守ろうとしている。よって、「さびしい」などこれら3つの形容は、カラザースに当てはまる形容ではなかろうか。よって、これらの翻訳もカラザースを指していると思われる。
「謎の」「あやしい」は、依頼者スミス嬢や捜索者ホームズ側や読者側から見たカラザースの形容である。よって、これらの翻訳はカラザースをストレートに表現した翻訳である。
「美しき」は、“Solitary”の翻訳としては、かなり独特の翻訳である。
もちろん、美しき音楽家庭教師・スミス嬢を指すものであろう。
しかし、犯人グループでありながら、仲間を裏切ってスミス嬢を守ろうとしたカラザースを形容する形容詞と見ることもできるのではないだろうか。そう考えるとこれはなかなか飛躍した、面白い翻訳である。
さて、作者ドイルはどういう意味で“Solitary”という形容詞を使ったのであろうか。
『二人の自転車乗り』という意味で“Two Cyclist”“a couple Cyclist”というタイトルにしても面白かったのでは?……ということで、この作品のタイトルの新しい翻訳を提案する。
『二人の自転車乗り』
“Solitary”の翻訳に「二人の」を使うとはなかなか画期的。作者ドイル氏はどう思われるか分かりませんが、ニュアンスとしてこれもありではなかろうか。
スミス嬢はカラザース家の娘さんの家庭教師を引き受け、週末に実家に帰ります。カラザース家から最寄り駅に行くまでに自転車に乗って行くわけです。しかし、駅まで自転車で行った後、列車に乗った後、自転車はどうなるのでしょうか。それを考えると寝られなくなっちゃう。
当時は列車に自転車を積んでいけたのでしょうか。それとも、駅の自転車置き場に保管してもらうのでしょうか。今の日本の都会じゃ駅周辺の自転車置き場の確保は大変ですよ。駐輪にもお金はかかるんですよ。
さて本作品では、他の重大事件にかかりっきりのホームズ氏の代わりにワトソン氏が実地調査します。
犯人とおぼしき“Solitary Cyclist”を目撃したワトソン氏はホームズに報告するが、失敗を批判されます。少々気の毒。
ワトソン氏がホームズの代わりに調査する作品としては他に『バスカビル家の犬』があります。
スミス嬢はカラザース氏の10歳の一人娘に住み込みで音楽を教えることになります。
しかし物語にはこの10歳の娘さんは登場しません。かなり影の薄い存在です。
本当にカラザース氏の娘さんなのでしょうか。カラザース氏はスミス嬢に入ってくる遺産を目的に、相棒のウッドリーと二人で南アフリカからやって来たという設定ですが、その時に父親と一緒にやって来たのでしょうか。
では、そんな娘がいながらカラザース氏はスミス嬢と結婚するつもりになったのでしょうか。
カラザース氏が数か月間、刑に服している際、娘さんはどうしていたのでしょうか。
その後カラザース親子はどうなったのでしょうか。
【プライオリ・スクール】934字/分
【ブラック・ピーター】 918字/分
【チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン】960字/分
【空き家の冒険】880字/分
【ノーウッドの建築業者】926字/分
【踊る人形】864字/分
【さびしい自転車乗り】840字/分
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『日本の名作を読みながら速読力を身に付ける(マガジンID:0000145860)』
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