以前、文学作品はアンチハッピーエンドが多い、ということを書いたことがある。
■[名作文学]ホフマン『ファルーン鉱山』のトルベルソン
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20061207
エーリスもウラもその父親のペールソンも、そしてトルベルンも、皆運命に翻弄されて、最後は悲劇的に終わります。ホフマンの作品はこんな悲しい終わり方をする作品が多いのだろうか。もしこの作品の結末が、
「二人はめでたく結婚して幸せに暮らしました」
というものだったら、ダメなのだろうか。そんな風に終わればおとぎ話になってしまい、文学作品ではない、ということなのだろうか。
思えば、昔話・童話・おとぎ話といわれるものはめでたしめでたし、で終わるものが多いと思います。
一方、文学作品は悲しい終わり方をする作品が多いというイメージがあります。
荒っぽい分類ですが、めでたしめでたしで終わるのが昔話・童話・おとぎ話であり、悲しい終わり方をするのが文学作品だ、と言うこともできる?
このテーマについては、今後も考えていきたい。
かなり荒っぽい決め付けであるが、先日ある本を読んでいて、この仮説を証明するような記述を見つけたのでメモしておく。
その二人が出会い、付き合い始めるとどういうふうな化学変化が起きるかということを検証し、最後にはこの一点しかないのだというところに追い詰めていくわけだ。それが近代小説だ。
いわゆる純文学ってものだ。
文章を書いていく過程で混沌としたものが整理され、ある結論に至る。
それはそれで素晴らしい作業なのだが、多くの場合、ネガティブな結果に至りがちである。ハッピーエンドの純文学ってものを読んだ記憶が、おありだろうか?あまりないような気がしないだろうか。
ハッピーエンドで終わるのは、大体エンターティンメントである。
純文学というのは、あるいはシリアスな映画というものは、なかなかハッピーエンドにならないのだ。それはなぜかと言うと、人間というのは個々ちがうもので、そんなふうに異なる人間の自意識がぶつかり合う様子をとことん問い詰めていくせいなのだ。これでは、なかなかポジティブな結論にたどり着かないのだ。
(中略)
いわゆる純文学は、あるいは芸術というものはとことん問い詰めていくせいで、ネガティブな結論になりがちだ。
ではそんなことを書いている本は何ぞやというと、ブログについて書いた以下の本である。
- 作者: 山川健一
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2006/11/16
- メディア: 新書
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ブログでエッセイを連載すれば人気が出るに違いない、という予想をし、その時に参考になるのは『枕草子』『方丈記』『徒然草』の3つのコースである、だとか、自分のキャラを極端にデフォルメしてニッチを獲得する戦略だとか、作家・編集者という2つの立場からなかなか面白い観点で書かれていた。ブログの書き方の“特別講演会”というようなタイプの本である。
そんな本の“ブログ文学”について書かれた章に、上に引用したことが書かれていた。
とことん突き詰めるとネガティブな結論になる、というのは分かる気がする。
現実の世界でも自分の理想をとことん追求していくと、周囲との摩擦が出てくる。
ということは社会で周囲と協調してやっていくことは、自分の理想追及をある程度のところであきらめて周囲と折り合いをつけていくことではないだろうか。
功成り名遂げた人の立志伝というのもあるが、それはあくまで講談でありエンターティメントであって、純文学ではないということか。
しかし作者の山川さんは引用部のすぐ後にこれを否定する流れについて書いている。
それはそれで素晴らしいのかもしれない。だが、これはあくまでもぼくの私見にすぎないが、それは二十世紀という過去の表現ではないだろうか。ぼくらはすでに、新しい時代を生き始めている。今、神や自意識に代わる何か新しいものが、ぼくらの表現のコアには必要なのだ。
それをぼくなりに考えてみると、「温かな無意識」というものではないかと思うのだ。
新しい時代の「暖かな無意識」とはどんなものなのか、それによって文学がどう変わっていくのか、その後の部分を読んでもよく理解できなかった。
山川健一が今後その新しい文学を開拓していくのか。氏が編集長を務めるアメーバブックスで出していくのだろうか。
ネガティブな結論ではない新しい時代の純文学とはどんなものなのか、開拓していってほしい。
読書対象が主に過去の時代の名作文学である私としては、“過去の表現”とも言われたネガティブな結論になる純文学について、もっと調べていきたい。
私は名作文学に関するメルマガを発行している。
『少年少女世界の名作文学ブログ・速読み版』 http://nazede.gozaru.jp/gogaku.html
児童向け名作文学全集を読んでいき、感想をつづって行くという単純なメルマガである。
収録されている作品は、始めから少年少女を対象にした作品もあるし、大人を対象に執筆された大著を少年少女向けに翻訳された作品もある。
これらの作品について、結末がネガティブかそうでないかという観点から調べてみるのも面白いと思う。
このテーマ、今後も考えていきたい。
■[名作文学]いなか医者はあら皮に何を頼むか
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20080420/p1
(参考になるサイト)
ヤフー!知恵袋 大衆文学と純文学
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1210996072
ヤフー!知恵袋 純文学と大衆文学の違いは?
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1010935660
ヤフー!知恵袋 最後で急展開し、結末がハッピーエンドだと、純文学らしくないですか?
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1012489355
2CH掲示板 純文学と大衆文学
http://mentai.2ch.net/book/kako/964/964780489.html
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