シャーロック=ホームズの帰還 下 シャーロック=ホームズ全集 (10)
- 作者: コナン=ドイル,シドニー=パジェット,大村美根子
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 1984/04
- メディア: 単行本
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なお、本書については、こちらのサイト様で詳しい説明がされています
『無料で速読トレーニング』 http://www.servicemall.jp/sokudoku/ 様の発行するメルマガで速読訓練しながら、テキストとなった本で読書速度測定をしていくコーナーです。
【六つのナポレオン像】 (内田庶 訳)
六つのナポレオン
その118 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112118.html から
その134 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112134.html まで
読書時間 不明
読書測定したストップウォッチの計測画面を記録することなしにうっかり消してしまったため、読書速度は分からず。
ナポレオン像が壊される事件が続発。ホームズが謎に挑む。
しかしイギリス国民にとって、ナポレオンは宿敵のはずではなかったか。ナポレオンを崇拝して像を飾る人までいるとは不思議だ。
結局イギリスはナポレオンとの戦いに勝ったのだから、勝者の余裕であろうか。
ナポレオン像の最後の1つの持ち主・サンドフォード氏からホームズは像を買い取る。15シリングで買ったものを10ポンドで購入するという申し出にサンドフォード氏は感謝。これは、何倍くらいになるのだろうか。しかしお金の単位に複数の単位を使っているとは複雑だ。イギリスは今でも通貨の単位にシリングやポンドを使っているのだろうか。いや、ユーロに変更したのだろうか。地理も経済も国際情勢にも疎い私には分からんことだ。
それで、サンドフォード氏には真相の説明をせずに返す。真相の説明はしてほしいとは思うが、あとくされがないためには、真相は知らないのが仏か。
ナポレオン像に隠されていたのは、ボルジア家の黒真珠。1年前、イタリアの貴族・コロナ公爵がホテルに宿泊中に盗まれたもの。この事件についてはホームズも捜査に協力したが解決できなかったという。
「このぼくとても、相談をうけたにもかかわらず、解決になにもお手つだいできず、そのままにいたったわけです。」
と言っている。ホームズすらも解決できなかった捜査。ホームズの珍しい失敗談である。しかし今回結局解決したからこの敗北記録はなしか。
しかし、宝石盗難時の状況については、説明不足の感がある。
宝石盗難犯の一味としては、コロナ公爵夫人の女中ルクレチアとその兄ピエトロ、そしてベッポが挙げられている。そして最終的に逮捕されたのがベッポで、一連の捜査中にピエトロがベッポに殺されている。
ルクレチアが宝石をどう盗み、それがどういう径路でベッポに渡ったかは謎である。
そして今回ベッポがナポレオン像を壊すまで服役していたことになっており、その原因というのが、イタリア人を傷付けたこと。この時の傷害事件についても、詳しく説明されていない。この時ベッポとトラブった相手も、ピエトロだったのだろうか。そこら辺、はっきりと書かれていないのである。シャーロッキアンによる“定説”では、どう解釈しているのだろうか。
物語の最後、ホームズはワトソンに
「真珠を金庫にしまってくれないか」
と頼む。元の持ち主のコロナ公爵夫人に返さないのだろうか。
それにしても、“ベッポ”とはおかしな名前である。こんな名前は実際にあるのかと思って検索してみると、ミヒャエル・エンデの『モモ』にもこんな名前の方が登場するようである。外国の名前は分かりにくい。というか、最近は日本でも変わった名前が増えているからなあ。
【三人の学生】
三人の学生
その135 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112135.html から
その149 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112149.html まで
読書時間 24分
ページ数 40頁
総文字数 480×40=19200字
読書速度 19200÷24=800字/分
奨学生を決める試験の前日、試験問題が見られた!容疑者は3人の受験生。犯人は誰か?
有名な大学町で起こった事件。本書の解説では、ホームズの母校オックスフォード大学の学寮が舞台だという説が紹介されている。
事件当時、ホームズとワトスンは図書館に近い下宿に住んでいた、と書かれている。有名なベーカー街の住居ではないのだ。二人がベーカー街を離れていたこの期間、いつ頃のことで、どんな事件を扱ったのだろうか。この期間が終わるとまた再び同じベーカー街に戻ったのだろうか。シャーロッキアンの研究ではどう解釈されているのだろうか。
試験問題を見られた科目はギリシャ語で、事件の依頼はギリシャ語教師ヒルトン・ソウムズ先生によってされた。ホームズものでギリシャ語というと、ホームズの兄マイクロフトが登場して悲劇的な結末に終わるあの作品を思い出す。
真犯人は、快活なスポーツマンであるギルクリスト。運動場で幅跳びの練習をした後、偶然窓の外から試験問題を発見し、魔が差したのだった。
しかし奨学生を決める難しい試験の前日に幅跳びの練習なんて、滅茶苦茶余裕である。他の受験生が神経質に部屋を歩き回ったり来客を追い返したりして缶詰になっているのとはえらい違いである。普段通りマイペースで余裕なのか、それとも全くあきらめているのか。本当に試験をしていたらどうなっていただろうか。
ソウムズ先生の執事のバニスターがギルクリストが置き忘れた手袋の上に座って隠したために犯人の発覚が遅れることになった。しかしソウムズ先生は試験問題が床や窓ぎわに落ちていたことは発見したのに、窓際のいすの上の手袋を見逃すとは、変ではないか。そのあたり、グラナダTV制作のドラマ版ではどんな風に映像化されていたのだろうか。
バニスターはギルクリストの父親の執事をしていたことがあり、そのため今回もギルクリストをかばっていたのだった。バニスターとギルクリストの関係は物語の最後で明らかになる。
しかしこの二人の関係、何で今まで知られていなかったのだろうか。二人は旧知の間柄だったのに、他の人の前では他人のようにふるまっていたのだろうか。その辺、少しおかしい。そしてもしこのことが最初から分かっていれば、最初からギルクリストへの容疑が高まる。
まあギルクリストの父親は破産したという辛い過去があるので、あえて触れないことにしていたのだろうか。
最初ソウムズ先生は、バニスターが試験問題を見たのではないかと疑ったが、バニスターが強く否定したためにこれを信じる。
悪い考えをすれば、バニスターが見たことにしていれば、問題点はなかったということで闇に葬り去られることになっていただろうに。しかしバニスターのような正直者は、咄嗟にはそのような悪い考え方はできないものである。またその後バニスターがギルクリストを説得したことを見てみても、そんな考えとはほど遠い人物だと思える。
結局バニスターはギルクリストを説得し、ギルクリストは試験の受験を辞退していた。ホームズの出動がなくても、自浄作用が働いていたようだ。ギルクリストもバニスターも良心に則ったフェアプレイ精神に従ったのである。
この事件では確かにフェアプレイ精神を見ることができたが、実際の社会はそのような公平なものではないだろう。地方公務員はコネがないとなれないという特権階級化している。経済力もなく権力にもつながっていない一般庶民は損を見るばかりではないのか。
それはともかく、この物語の最後にホームズがギルクリストにかける言葉がいいですね。
「それから、きみ、ローデシアでは、かがやかしい未来がきみを待っているにちがいない。きみは、いったんはひくいところへ落ちた。そのきみが将来、どんなに高いところまでのぼれるか、楽しみにしていよう。」
【金縁の鼻めがね】
金縁の鼻眼鏡
その150 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112150.html から
その167 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112167.html まで
読書時間 28分
ページ数 46頁
総文字数 480×46=22080字
読書速度 22080÷28=788字/分
ロシア革命前夜の悲しい出来事に関連する事件。もの悲しい雰囲気が漂っている。
ウィキペディアの『金縁の鼻眼鏡』の項目には
「ホームズ物の最高傑作とも目される。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E7%B8%81%E3%81%AE%E9%BC%BB%E7%9C%BC%E9%8F%A1
という記述も。確かにそう言われてもおかしくはない。短いながらも凝縮された珠玉の名作である。
物語の舞台はコラム教授という老学者の隠居用屋敷。私はコラム教授のような生活にあこがれているので、非常に親近感を持っていたのだが、後に彼が行った過去の悪事が明らかになる。結局、学問をやる人間にも色々いるということであり、単に学問が好きというだけで友達になれるとは限らないということである。なお、私が一番嫌いで軽蔑するのは“御用学者”という類の連中である。
今回の事件の犠牲者は、コラム教授の助手のウィロビー・スミス。大学を出た後、非の打ち所のない推薦状を持って面接に現れ、採用され、片腕となって活躍していたという。
現在で言うと、“オーバードクター”のような身分だろうか。こんな人、多いでしょうな。私もそれに近いような状態だった。巻き添えになって犠牲になってしまった彼には同情を禁じえない。
本棚の後に人が隠れられる場所がある、という展開には驚いた。小さなワンルームマンションの一室に細高い本棚をやっとこさ置いている私としては、本棚の後ろに人が隠れているなんていう発想はとても出てこない。
「本のうしろに隠れ場があってもおかしくはない。知ってのとおり、そのようなしかけは、古い書斎にはよくあるものだ。」
とホームズは言っている。本当によくあったのだろうか。一体何のためにそのような仕掛けを作ったのか。実用性はあるのだろうか?単なるお遊び感覚で流行していたのだろうか?
コラム教授はイギリス人ではなく、亡命ロシア人であることが、別れた彼の妻アンナの証言で明らかになる。
コラム教授が実はロシア人であるということは、近所の人を始め捜査に当たったホームズ達には既知のことだったのだろうか?相手が外国人であるということは良く分からないものだろうか。
確かに日本人である私から見れば、相手がアジア人であれば日本語がうまいと外国人とは分からないこともある。
さすがにイギリス人やロシア人は一目で外国人だとは分かるが、イギリス人とロシア人を区別してみよと言われては難しいかもしれない。
コラム教授はイギリス人に成り済ましていたのだろうか。そうすると、ロシアなまりを感じさせないほど非常に英語が流暢だということになる。さすがは学問をする知識人。若い頃に留学していたのだろうか。
コラム教授の別れた妻・アンナは、心の友であるアレクシスの無罪を証明するため、手紙や日記を取り返すためにはるばるやって来たのだった。
しかし、このような物件を証拠として提出して、果たして採用されて無罪放免されるのだろうか。それほど裁判に期待できるものであろうか。その後のアレクシスの運命は?
1894年『金縁の鼻眼鏡』事件の発生年(と記されている)
1904年『金縁の鼻眼鏡』初出
1917年 ロシア革命
世界史上の大事件であるロシア革命にからむエピソード、かなりドラマチックです。
アンナは20歳の時、50歳のコラム教授と結婚する。しかしどうやらその結婚生活はあまり幸せなものではなかったようです。そしてアンナはおそらくアレクシスの方に魅かれていたよう。この三人の間でどのようなドラマが演じられていたのだろうか。物語にはロシア革命前夜の社会状況も絡んでくる。物語が膨らんできそうです。
シャーロック・ホームズシリーズの4つの長編のうち、『緋色の研究』『四つの署名』『恐怖の谷』は二部構成をとっています。この『金縁の鼻眼鏡』も、ロシアでの出来事を描写した“第二部”が描けそうで、短編ながら長編に匹敵するほどの広がりと深さを持った作品です。「ホームズ物の最高傑作」という評価も納得できるものです。
(なお、ホームズ物の最高傑作という話で言えば、『バスカビル家の犬』が一般的な模様。しかし私はこの作品はあまり好きではない。長編作品でいえば『恐怖の谷』が最高であると思う。短編作品は全て読んでいないので分からないが、『金縁の鼻眼鏡』も候補に挙げられる。まあ個人の好みは人それぞれだが。)
【スリー-クォーター失踪事件】
スリークォーターの失踪
その168 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112168.html から
その185 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112185.html まで
読書時間 27分
ページ数 44頁
総文字数 480×44=21120字
読書速度 21120÷27=782字/分
大切なラグビーの試合を前にして、チームの有力な選手が失踪。チームのキャプテンに依頼されてホームズが捜査を開始。その前に立ちはだかるアームストロング博士!
物語冒頭での、事件の依頼者オーバートンとホームズとの会話が面白い。ラグビー中心に生活が回っている依頼者は、ラグビー事情に疎いホームズが信じられず、「おどろきました」「あなたは、いったいどこにいたのですか?」と世界の狭さを露呈する。それに対してホームズは
「きみはぼくとはちがう、楽しくて健康な世界に住んでいるのですよ」。
体育会系馬鹿に対して紳士的に対応。ホームズ先生はラグビーなんかよりもっと重要な仕事に従事しているのである。もっとストレートに言ってやってもいいのに。
私自身、子どもの頃から体育の授業と運動会は大嫌いで、外に出たり体を動かしたりするのも大嫌いで、従って遠足や旅行すら嫌いだという、徹底的な引きこもりの性格なので、体育会系馬鹿に対しては被害妄想的な感情を抱いているのである。また、スポーツは見ることにも全然関心がなく、プロ野球も高校野球もオリンピックもワールドカップも全く関係のない世界に住んでいる。
失踪したゴトフリ=ストーントン青年のおじ・マウント=ジェームズ卿はイギリスきっての大金持ちであるが性格が悪くてケチで、ゴトフリにも辛く当たっている。この人物の挿絵も描かれており、シルクハットをかぶって白いネクタイをしているという、身なりは立派のようだが文中では
「なんとも奇妙」「みすぼらしくこっけい」
「ひどく田舎じみた牧師か、葬儀屋のやとわれ会葬人といったところ」
と描写されている。
当時の服装事情については良く分からないのだが、その当時の一般常識としてはそう感じるのが正しいのだろう。
ホームズの捜査の前に立ちはだかるのは、レズリ=アームストロング博士。腕っ節が強くてマッチョのような姓ではあるが、これがなかなかの人物である。
「ケンブリッジ大学医学部の学部長であるばかりか、自然科学の諸分野における思想家として、ヨーロッパじゅうに鳴りひびいている」
「ゆだんのない厳格な人物、禁欲的で、みずからをおさえられる手ごわい精神の持ち主。ふかい学識のある人物」
とワトソン博士は描写している。
さらに、恐喝王ミルバートンとは違って徹底的に守りに強い人間であり、ホームズの尾行に対して一度は道中皮肉を言って追い払い、一度は巻いてしまって宿舎に皮肉の手紙を送りつけるという痛快な行動を披露。
只者ではない印象であるが、惜しむらくは決め付けが強すぎて頑固なこと。ホームズの職業に対して悪い先入観を持って誤解していたようである。最初から話し合って協力していれば、無駄に力比べをすることもなかったろうに。
学識や肩書きを持つようになると、頑固になる危険性があるという戒めの見本である。
【アベ荘園】
アビ屋敷
その186 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112186.html から
その206 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112206.html まで
読書時間 25分
ページ数 51頁
総文字数 480×51=24480字
読書速度 24480÷25=979字/分
なかなか後味が良い作品。
TVでよく、ミステリーというか、探偵が出てきて犯人を捜すようなドラマがやっているが、私はどうもそういうのが苦手である。
というのは、どうも犯人に同情してしまうような、被害者が殺されて当然、加害者が被害者を憎んで殺すのも無理はない、というような状況が多く、犯人が助かって欲しい、逃げおおせて欲しい、と思っていても結局は探偵が犯人を見つけてしまう。
そんなのが苦手で、どうしても『〜〜殺人事件』なるドラマが嫌いなのである。
しかしそういうタイプの展開は、松本清張あたりまでで、最近は変質者が常人には理解不能な犯罪を犯すサイコホラーのようなのが多いとも聞く。どちらにしろ、殺人や犯罪や恐怖などの負の感情を扱うのは嫌いだ。推理ものは古典的作品に限る。
【第二のしみ】
二つのしみ
その207 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112207.html から
その229 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0112229.html まで
読書時間 29分
ページ数 53頁
総文字数 480×53=25440字
読書速度 25440÷29=877字/分
冒頭、ホームズは現在探偵業を引退して田舎で養蜂と学究の生活を送っているということが記されている。
本事件は、戦争の引き金になりかねない秘密文書が紛失、政府関係者が依頼に来るという重大事件。ホームズが扱った事件の中でも、重要なものの一つだろう。
本作品でも、恐喝王ミルバートンのような職業の男が登場するが、彼もまたミルバートンと同じく、攻めるに強く守るに弱い男だった。嫉妬深いサイコな夫人にあっけなく殺されるとは。そもそもこのような職業で、そんなタイプの女性と結婚しているなんて、日頃の危機管理がなっていない。
同じ女性でも、ホープヨーロッパ担当相夫人は気丈である。ホームズ物に登場する女性の中でも優秀な女性メンバーのうちに入るのでは?
しかし、戦争の恐れがある重大事件の割には、偶然あっけない形で終わったものだ。別にホームズが捜査しなくても、このままホープ夫人が闇の中に葬っていたかもしれない。
人間の体の中でも、日々癌細胞が生まれているが、免疫力によって消えているという。国際紛争も、こんな風に人知れず萌芽の段階で回避されているのかもしれない。
長く続いた本作品もこれで終わり。半年以上続いていたわけだ。シャーロック・ホームズシリーズの短編は速読訓練に適していると思うので、またいつか他の短編集も取り上げて欲しい。
【三人の学生】800字/分
【金縁の鼻めがね】788字/分
【スリー-クォーター失踪事件】782字/分
【アベ荘園】979字/分
【第二のしみ】877字/分
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