フランス革命後、イギリスはじめヨーロッパの君主国はフランスに対して宣戦を布告し、フランス国内でも王党派が共和政府に対して抵抗していた。
王党派のかしらとして“ガー”と呼ばれる優れた貴族がイギリスからフランスにやってきた。対する共和政府も、“ガー”を捕まえるため、一人の女スパイを派遣した。
やがて二人は遭遇し、愛し合うことになり……。
というのがあらすじ。“みみずく党”というのは、王党派のこと。
タイトルを見て、“みみずく党”なる秘密結社なり盗賊団なりが大活躍する娯楽冒険活劇かと予想していたのであるが、少々あてが外れてしまった。
なるほど確かに上に記した簡単なあらすじを見ると冒険活劇のように思われるが、非常に重い作品であった。
『紅はこべ』ではなく『二都物語』路線の物語である。
そもそも訳し方が悪いのか、原作の書き方が複雑なのか、話の展開が分かりにくい。
冒頭、共和政府のユロ連隊長率いる部隊と王党派の部隊との戦闘が描かれ、次に王党派の幹部面々が集まった場面が描かれる。実はこの時、“ガー”も登場しているようだが、分かりにくい書き方である。そのため、この時交された会話の意味がよく分からない。
次にようやく主人公ともいえる女スパイ・マリーが登場するのであるが、それはまだ明らかにされていない。初期の頃は、そのお付きのフランシーヌが中心の描写がされていて、主人公がフランシーヌでマリーは単なる脇役ではないかと思っていた。
そして早速マリー達と“ガー”が遭遇するのであるが、“ガー”は最初、理工科学校学生のギュア・サン・シールとして登場する。以後“ガー”は、“学生”だとか“ガー”だとか“モントーラン侯爵”だとか“侯爵”だとか色々書かれていて表記が統一されていず、混乱する。
また、物語の記述法も、事件描写が中心で、説明が十分でない感じである。
登場人物の心理描写もあまりされていない。
ストーリーが複雑な映画を、ナレーションや説明なしで観ているような、と形容するのがピッタリくる。
私は個人的には物語は小論文のように起承転結と時系列に沿って分かりやすく描かれている方が読みやすい。その点で、この物語は少々流れがつかみにくかった。これは訳し方の問題なのだろうか、原作の書き方なのだろうか。
1回読んだだけでは分からず、繰り返し読まないと分からないだろう。
しかし物語の内容は、確かにスリルやサスペンスや冒険活劇が含まれているとはいえ、やはり重い。
児童文学全集に収録されているのであるが、ちょっと背伸びした収録ではないか。
◎書誌的事項◎
◆カラー名作 少年少女世界の文学12(文学30巻版)(1970年)
『みみずく党』
オノレ・ド・バルザック原作
藤原一生(文)
中村英夫(画)
なお、本作品は『ふくろう党』と訳されることもあるようです。
バルザックの出世作といわれる本作品ですが、日本での紹介はあまりされていないよう。
バルザック全集 1
に『ふくろう党が『Z・マルカス』という作品と共に収録されているくらい。
それほど日本での紹介があまりない作品を、少年少女向け文学全集に収録するという選択方針はすごい。
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