シェイクスピア作品をテーマにした60分ドラマの6本連作。
『ヴェニスの商人』『ロミオとジュリエット』『オセロ』『真夏の夜の夢』『リア王』と続いて最後に『テンペスト』でフィナーレを迎える。
最初は独立した別個の物語かと思っていたが、実はある古い団地とその近くの海岸通りグローブ座という場所を共通点としてつながっていて、最後の『テンペスト』で主人公達が再登場する。
最終章に先立つ5つのエピソードでは、先に登場した役者が別の役で出演していて、これは手塚治虫のマンガにおけるスターシステムのようなものかと思っていたのだが、実はシェイクスピアの
「人生は動く影、所詮は三文役者。色んな悲喜劇に出演し、出番が終われば消えるだけ。 」
という名言を踏まえた設定であった。
そして本当に重要な登場人物は5つのエピソードで主役を務めた人物達で、今でも舞台となった古い団地に住んでいるという共通項を持っている。
主役再登場&全員集合の場面での再会シーンは見所だった。そして今まで共演がなかった人物は“祝・初共演”ということである。
オーソドックスな熱血・恋愛ドラマである『ヴェニスの商人』『ロミオとジュリエット』
お笑い&探偵活劇ありサイコミステリーありの盛り沢山の内容で1時間ではもったいないくらいの充実ぶりの『オセロー』
大阪弁(?)をしゃべる双子の妖精が暴れ回って大騒動を起こすハチャメチャ喜劇編の『真夏の夜の夢』
『リア王』では今までのエピソードの隠れた共通項となっていた古い団地の立ち退き取り壊し問題が浮上。これに表の共通項となっていた海岸通りグローブ座の経営者父娘の親子問題も絡んでくる。
そして5つのエピソードが収束してフィナーレにつながる『リア王』から『テンペスト』にかけての流れが圧巻。
極限状態における人間の理性とは、「幸せ」とは何か。パニック・サスペンス調で密度の濃い60分であった。
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『テンペスト』で収束するための伏線をそれまでの5つの章でパズルのように張り巡らせていたという、面白い構成である。
それにしてもあの方の意外な正体と変身ぶりには驚かされた。団地周辺の人々を魔法にかけるだけならともかく、地球上の人々全員を消してしまうとは、一体どれほどの魔力を持っているというのだ。
それから、一つ前のエピソード『リア王』で生き別れになっていた娘との同居を始めた紀里谷(與真司郎)であるが、『テンペスト』ではまた一人で行動していたではないか。
「団地にはお年寄りと子どもが11人います」
ということだったので、団地にいるんだろうか。娘さんと一緒にいなくていいのだろうか。ここら辺、話の展開上、子どもやお年寄りは団地でいた方が都合がいいということなんだろう。
それからやはり『リア王』で登場したクラウン(日高光啓)であるが、確かリア王と共に元の時代に戻ったのではなかったか?押し入れの中で「ワーッ」とか言っていて、ふすまを開けると消えていたはずななのに。その後戻って来て再び居候しているのだろうか。「帰ってきたクラウン」である。
全員で完成した1万個のドミノ。その後世界は元に戻ったのだろうか。
「私の魔力は消え、生身の人間に戻った」
という字幕があったので、何もかも元に戻ったのだろう。
(字幕の字が小さすぎてしかも表記時間が短いのが視力の弱い私にとって残念だった)
その後の岸信子(川村ゆきえ)と瀬尾(西島隆弘)の関係はともかく、岸親子の関係はどうなったのだろうか。海岸通り団地や海岸通りグローブ座の立ち退き問題は?
そもそもヒップポップなる魔力で小説の登場人物を現代に呼び覚ますなんて荒唐無稽な設定ではあるが。
そして隠れた名脇役として、十二支シェイクスピア劇団の団員達がいる。これも面白い設定で、もっと活躍しているシーンが見たかった。
ともかくこれは非常に見ごたえのあるドラマだった。こんな風にシェイクスピアを料理する方法があったとは。
シェイクスピアを生んだイギリスでも高い評価を受けるんではないだろうか?
wikipedia:未来世紀シェイクスピア
未来世紀シェイクスピア(関西テレビ) http://www.ktv.co.jp/mirai-shake/
未来世紀シェイクスピア(avex) http://mv.avex.jp/mirai-shake/
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