(あらすじ)
村はずれに廃墟となって建つ時計屋敷。最初の住人も次の買い手の謎の失踪や死の後、幽霊屋敷として恐れられていた。
戦災者のための住居供出の達示が村に下り、幽霊伝説を信じない七人の大人が時計屋敷の調査に向かうが、帰ってこない。
八木音松少年を中心に5人の少年達が時計屋敷の探検に向かう!
(感想:海野十三版・少年探偵団の冒険譚)
タイトルに“時計屋敷”と入ってるだけで、江戸川乱歩描く少年探偵団の世界を思い出しますな。冒険・探偵・昭和初期・洋館・懐古趣味……。少年の日の冒険に誘う単語である。
今でこそ時計は100円ショップでも買えるもんですが、私が子供の頃はまだ、時計は高級品で、一家に一台の時代でした。私の家でも時計が置いてある部屋は“時計の部屋”と言ってたくらいです。また、いとこの兄ちゃんに連れられて遠い親戚の家に行ったことありますが、その家には時計がなく、帰りの電車に乗るために時間を知るため、電話の117で時刻を調べたものでした。
だから物語の舞台となった時代、時計台のある時計屋敷なんてのは相当豪華なもんだったんでしょう。
そんな豪邸が幽霊屋敷として放置され、そこを舞台に繰り広げられる少年探偵団の活躍。舞台も役者も揃った。これが面白くないはずがない。
さて海野十三版・少年探偵団の結成ですが、団員の姓が面白いですねえ。
団長の八木音松少年以下、初登場順に
六条君 五井少年 四本君 二宮少年
……と、全員数字が頭についている。
まあなかなかの個性派ぞろいで面白い。特に四本君は科学的知識を持っているのが強み。彼らの活躍をもっと読みたい。続編は書かれなかったのだろうか。
時計屋敷に忍び込んだ少年探偵団だが、迷路のような通路に危険な罠が仕掛けられていてピンチの連続。まるで戦争中の城である。この屋敷を建てたヤリウスは一体何でまたこんなに罠を仕掛けたのだろうか。住むのに危なくて仕方ない。反乱でも起こして籠城戦するつもりだったんだろうか?
探検早々に八木団長が団員達とはぐれ、一人で危険な冒険に。
溺死寸前に助けてくれた怪囚人の正体とは?
結局
「世の中のことは、なんでもみんな答が出るというわけにはいかないよ」
とうやむやに終わってしまった。
物語の進行上、必要に迫られて登場させられた人物のようである。
あと、物語中でも触れられている
あの大時計が四時をうてば大爆発するというが本当だろうか。もし本当ならそれは誰が仕掛けたのか、ヤリウスが仕掛けたものなら、それはなぜであったか。
が、時計が4時を打てば大爆発するという設定も乱暴である。時計というより自爆装置である。これもまた、物語の進行上都合がいい設定である。
……とまあ、ご都合主義的な展開というか、少年冒険譚の典型パターンを踏襲した楽しめる娯楽作品である。
小学生時代に読んでおきたかったが、大人になった今読んでも少年時代のわくわく感を思い出せるようで十分楽しめる。
海野十三全集 第11巻 四次元漂流
↑こちらに収録されているようだ。
時計屋敷の秘密
第1回 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0111001.html から
第24回 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0111024.html まで
青空文庫 図書カード:No.3054 時計屋敷の秘密
http://www.aozora.gr.jp/cards/000160/card3054.html
不壊の槍は折られましたが、何か? ■[小説]時計屋敷の秘密/海野十三
http://d.hatena.ne.jp/Wanderer/20070204#p2
wikipedia:海野十三
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