1977年のニアレトロな時代を舞台に小学4年生のさよと灰田くんが謎の本『七夜物語』に導かれて7つの世界を冒険するという川上弘美の新聞連載小説「七夜物語」。
現在2人は無事に2つ目の世界の試練に耐え、冒険から帰って来たところです。
1つ目の世界は、大きなネズミ“グリクレル”が支配する台所が舞台であるという、いかにも児童文学にありそうなという展開であったが、2つ目の世界は、心理学の世界とか、深層心理・潜在意識の世界といった、児童文学の範疇を超えた、考えさせられる内容だった。
多分小中学生時代の私が読んだら、冒険活劇らしくなくてちょっとつまらないと思ったかとも思うのだが、理屈だとか屁理屈だとか色々な観念を身に付けた今読むと、色々な深読みができて非常に面白い。
2人が迷い込んだ世界は、眠りが支配する平和な世界で、油断すると眠り込んでしまう。その繰り返しである。
逃避願望が強い私がもしこんな世界に迷い込んでしまえば、これ幸いとばかり眠ってもう元の世界に戻ろうとはしないだろう。
さよと灰田くんについても、このままずっと寝てこのままここにいたらいいのに、と思いながら読んでいた。
ところが先に2人と仲良しになった口笛部員を名乗る定時制高校生カップルの声が聞こえてきて2人を奮い立たせ、現実の世界に戻すのである。
私ならそんな声なんか無視して絶対に戻らないのに。
特に切り抜き保存していないので手元にないのであやふやなのだが、灰田くんに対しては
「だらしないまま一生を終えていいの」
という声が聞こえてきたそうである。
そう言われると、確かに絶対に戻らないといけないように思うなあ。
「元の世界で前のような生活を繰り返すために戻る」
というのと
「元の世界で前の生活を改善して人生を変えるために戻る」
というのでは印象が全然違う。
人生を生きるというのは、同じような生活を繰り返すというのではなく、改善して向上していくべきものなのだ。
……というようなことを考えさせられた。
自己啓発のテーマにできそうな内容である。
とはいえ、灰田くんはまだ小学4年生。人生まだまだこれからで、今から奮起すれば明るい未来が開けてくる。
中年を迎えた私にしても、まだ刀折れ矢尽きるという状況にまで追い込まれていず、最後に挑戦したいことが残っている。
問題なのは、刀折れ矢尽き、客観的にどう見ても絶望的という状況に追い込まれた時である。
「だらしないまま一生を終えていいの」
と言われて元の世界に戻って来るのは、まだ未来に希望があるということなのではないのか。
今の私なら確かにこう言われれば戻って来ようとするが、絶望的状況に追い込まれていれば、やはり戻って来ないだろう。
逆に考えれば、人が絶体絶命の状況に追い込まれた時、生死を分けるのは、こういった未来に対する希望や執着なのかもしれない。
自己啓発だとか人生の向上だとかに関心のある私にとって、そういう方向から読んでみたわけだが、他にも色々な読み方ができる、寓意に満ちた設定ではないだろうか。
例えば、社会学・政治学の方向から見れば、社会の矛盾に目をつぶって安直に生きていくか、社会の改善を目指して行動するという茨の道を進むかどうか。
経済学の方向から見れば、現在、税収が減って年金や公的サービスが危機的状況といいますが、税金を払う義務を遂行するかどうかという(累進課税の原則は守るべき)。
あと、支え合う友人は必要だとか、このエピソードから色々なことが考えられる。
第二夜のエピソードは、ちょっと考えさせられる、大人が読んでも面白い深い内容でした。
楽しいのう。あと五つ、どんな世界が待ってるんだろうか。
連載期間が延長してもいいので、たっぷりじっくりゆっくりと描いていってほしい。
※第一夜の冒険についても書いています
■[名作文学]川上弘美「七夜物語 ななよものがたり」1977年日本のアリス
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20091220/p1
※『七夜物語』愛読者様のブログにTBさせて頂きます
後は野となれ 川上弘美「七夜物語」第135話――救世主は口笛部
http://tktt123.blog83.fc2.com/blog-entry-120.html
昭和の子ども 連載小説「七夜物語」
http://do.eek.jp/diary3/diary.cgi?no=16
サラ☆の物語な毎日 『七夜物語』その後
http://blog.goo.ne.jp/marupippo/e/97d389a49d3b6be8855a509372b5eb62
日本語教師・奥村隆信 ひとり語り 川上弘美『七夜物語(ななよものがたり)』(朝日新聞朝刊)、連載100回に
http://tiaokumura.exblog.jp/12529251
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