↑少年少女向け完訳版。偕成社文庫版は角川文庫版と同じなのでしょうか?
『三銃士』
誰もが耳にしたことあるデュマ『三銃士』。読んだことありますか?
私はなぜか本も映画もアニメも人形劇も今まで全く縁がなく、40にして初めて原作(少年少女向け翻訳版ですが)を読みました。
ざっとあらすじを書きますと……。
(前半)
フランス南部の田舎町から立身出世を夢見てパリにやって来たダルタニアン。国王護衛の銃士隊に見習いとして入隊する。
イギリスとの戦争を目論むリシュリュー枢機卿が和平派の王妃の追い落としを画策。ダルタニアンと三銃士はその陰謀を阻止するために立ち上がった!
(後半)
フランスとイギリスの戦争が始まった。
国家の危機に銃士隊やリシュリュー派も団結して戦争に向かうのであった……。
↑現代風挿絵にするとこうなる?
かなりアバウトなんですが、皆さんもう既に知っておられるでしょう。
知らない方はこの機会に映画を観たり本を読んでみて下さい。面白いですよ。
(追記)
小学館 少年少女世界の名作文学(全50巻)版で読みました。
訳者・画家等の書誌データを記すのをうっかりして忘れていました。
なお、この全集の目録については、以下のサイトに記述があります。
http://homepage1.nifty.com/ta/0sa/shogaku/j_zen.htm
http://nazede.gozaru.jp/meisakubungaku.html
http://www.fukkan.com/fk/VoteDetail?no=9270
しかしリシュリュー枢機卿、前半と後半で全くの別人ですな。とても同一人物だとは思えません。
前半では陰険な悪の陰謀を企みますが、単なる無能な悪人ではなく、かなり有能な悪人です。
お話上は、国王&王妃派の銃士隊VSリシュリュー枢機卿派の護衛隊、ということになってるんですが、リシュリュー派が圧倒的に優勢です。
何せリシュリュー派は王宮やフランス国内はおろか、イギリスにまで秘密のネットワークを張り巡らせています。
ロシュフォール伯や女スパイのミラディといった有能な部下も揃っています。
王妃の侍女・ボナシュー夫人の夫も計略で味方に引き入れてしまうくらいの勢いを持っています。
対する銃士隊の方はといえば、頼みの三銃士も大丈夫なんかいなと拍子抜けしてしまうくらいの有り様です。
リシュリューの陰謀を防ぐためにダルタニアンをイギリスに送るために三銃士はフランス国内でバラバラになってしまいます。
その後敵を倒してからも職場には戻らず、宿屋に居座って無銭飲食で迷惑をかけ続けていたという……。これが評判の三銃士のすることかとがっかりです。
まあ後半では活躍して名誉挽回するのですが。
それで、前半ではあんなにいがみ合っていた銃士隊とリシュリュー派も戦争という国難のために一時停戦して戦場に向かいます。
後半でのリシュリューは、国家を思う気持ちのために個人的な感情は捨てる、という立派な人物として描かれています。王妃追い落としのために陰険な陰謀を企んだ同じ人だとはとても思えません。
何はともあれ、ダルタニアン&三銃士、銃士隊、リシュリュー派の一致団結、そしてイギリスのバッキンガム公爵の願いによって戦争も集結。
(しかしフランス国内に置き去りにされたイギリス軍は気の毒だ)
↑視点を変えた再構築版らしい。
しかしダルタニアンに最大の危機が訪れます。
ダルタニアン、リシュリューの名によってロシュフォール伯に逮捕される。
リシュリュー、ダルタニアンがイギリスと内通した罪により裁く、と宣言。
ダルタニアンはアトスがミラディから取り上げた証明書を持ち出し、弁明。ミラディが死んだことも伝えます。
考え込んだリシュリュー、ダルタニアンと和解し、銃士隊の副隊長に任命してハッピーエンドに終わります。
めでたしめでたし。大団円、といったところです。
しかし、リシュリュー卿は始めからこのような結末を意図していたのでしょうか。
リシュリュー卿は女スパイのミラディにイギリス首相のバッキンガム公爵の暗殺を命じ、ミラディはその褒美として、ダルタニアンの縛り首を要求します。
ダルタニアンは有能でいい奴だから殺したくない、と一度は拒むリシュリューですが、ミラディの強硬な態度に「国家のために必要な犠牲だ」と従います。
この約束の実行のためにダルタニアンを呼び出したわけですが、そこで初めてダルタニアンからミラディが死んだことを聞かされるのです。
だからもし、ミラディが死んだことを聞かされなかったら、どうなっていたのでしょうか?
「ロシュフォールとふたりで、ちょっときみをからかってみただけのことさ」
と誤魔化していますが、実際のところはどうなんでしょう。前半の単純な陰険悪役と違って、後半の彼の性格は非常に複雑で、よく分かりません。完訳版ではここのところ、どう読み取れるのでしょうか。
また、この場面での申し開きの場面を始めとしてそれまでも、ダルタニアンが非常に有能ですね。
冒頭こそは血の気の多い八方破れなキャラとして描かれていますが、その後は冷静沈着で非常に有能な青年として描かれています。
さて、目出度く和解した銃士隊とリシュリュー派ですが、その後うまくやっていけるのでしょうか。その後の展開が心配です。
共通の外敵に向かって一致団結している分には構わないのですが、やがてまた勢力争いが再燃しないでしょうか。
なにせ前半であれだけ陰険な陰謀を行っていたリシュリュー枢機卿ですから。
特に、陰謀で追い落とし直前まで苦しめられた王妃様との感情的しこりが心配です。今後王妃とリシュリューの関係はどうなっていくのでしょうか。
この物語には続編がまだまだあるようです。
続編では王妃はマザラン枢機卿と良い仲になっているようですが。
続きが気になります。全12巻を完読してみたい。しかし時間が……。
ちなみにこの第一部、少年少女向け翻訳でも十分面白いので、まだ読んだことない方は一度読んでみられては?
三銃士
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E9%8A%83%E5%A3%AB
ダルタニャン物語
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%8B%E3%83%A3%E3%83%B3%E7%89%A9%E8%AA%9E
アレクサンドル・デュマ・ペール
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%A5%E3%83%9E%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%AB
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