OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

ルコック探偵尾行命令(ネタばれ注意!)

(あらすじ)
 パリの裏町の酒場で起こった殺人事件。
 3人を殺害した男が現行犯で逮捕される。
 何か裏がありそうな事件であるが、犯人は何かを隠して多くを語らない。
 ルコック探偵と謎の囚人・メイとの追いつ追われつの知恵比べが始まる!


  
 いや〜これは傑作ですね〜。
 一見、簡単な突発的な事件かと思われた裏には20年前の親の代から続く因縁があったというわけです。
 シャーロック・ホームズに先立つ名探偵ルコックの地道な活躍も面白いのですが、何といっても犯人役のメイが素晴らしい。
 単なる悪役ではありませんよ。芸達者な才人で、アルセーヌ・ルパンを思わせます。或いはその孫のルパン三世でしょうか。
 この作品をアニメ化・実写ドラマ化するのであれば、メイの声は山田康雄さんか栗田貫一さんが似合うのではないでしょうか。
  
 名探偵ルコックは警視庁内部(特に上司・ジェブロル警部)の妨害を受けながらこのルパン一味と闘うわけです。
 実はこの犯罪者一味をお膳立てしていた黒幕は、犯人メイの執事さんなのです。
 まあ言ってみれば、ルパン&ルパンの執事&ルパン一味 VS ガニマール警部、といったところでしょうか。
  
 そして、どうしようもなく捜査が行き詰まったところで、もう一人の名優が登場します。
 ルコックの師匠・タバレ先生です。
 行動派のルコックが体を張って捜査して行き詰まった難問を、あっさりと解いてしまいます。
 まるでミス・マープルや隅の老人を思わせる安楽椅子探偵ぶりですね〜。
  

  
 ともかく本作品は、犯人との体を張った知恵比べあり、推理ありの豪華スペクタクル作品。江戸川乱歩お気に入りの作品だったというのもうなづけます。
 
 実は私、中学生くらいの頃、旺文社文庫版を読んでいます。
  
 ルコック探偵 (1979年) (旺文社文庫)
  
 しかし当時の私には少々難しく、苦労しながら何とか読み終えたという感じでした。
 今回児童向け全集版で読み、非常に面白く読ませて頂きました。
 氷川瓏の訳文も素晴らしい。緊張感あふれた簡にして要を得る名訳ではないでしょうか。
 また、原作のいたづらに長くてだれる展開が適度に編集されているのも読みやすい。完訳至上主義はこの際置いときましょう。    

(書誌的事項)
【今回私が読んだ版は】
小学館少年少女世界の名作24 フランス編5  1975年2月25日発行
ルコック探偵尾行命令』
  ガボリオ原作 氷川瓏(訳・文) 中村英夫(絵)
    http://nazede.gozaru.jp/meisaku.html

 1964年12月20日発行の小学館少年少女世界の名作文学22 フランス編4に収録されていたのは 
ルコック探偵』(河畔の悲劇、オルシヴァルの犯罪)
でした。
 
■[名作文学]ルコック探偵 河畔の悲劇(オルシヴァルの犯罪)
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20111221/p1
 
 少年少女向け名作文学全集にルコック探偵とは随分マニアックな収録です。
 その約10年後に発行された本全集には、ルコック探偵シリーズの別の作品・シリーズ中最も評価が高い作品が満を持して収録されたわけです。
 
 小学館からは似たような少年少女向けの大規模な名作全集が3種類出ていました。
 古い順から
   
★少年少女世界の名作文学(全50巻)
   http://nazede.gozaru.jp/meisakubungaku.html
★カラー版少年少女世界の文学(全30巻)
   http://nazede.gozaru.jp/list07.html
★少年少女世界の名作(全55巻)
   http://nazede.gozaru.jp/meisaku.html 
  
 最初の50巻版が基本で、後の版は基本的に同じ作品が再収録されることが多く、その時は表現が少し修正されたり、ページ数が減らされて短く編集されていることが多いです。
 中には『秘密の花園』のように、別の訳者が新たに新訳した作品もあります。
   
■[名作文学]秘密の花園 人々を幸せにする“読書療法”
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20070204/p1
  
 ガボリオのルコック探偵シリーズに至っては、別の作品を新たに収録するというパターンを取っています。
 編集者の中にルコック探偵シリーズの熱心なファンの方がいらして猛烈にプッシュされたのでしょうか?
 そのおかげで、世界最初の長編ミステリーシリーズといわれるルコック探偵シリーズの最高傑作を読みやすい形で読めるわけです。
 さらに、中村英夫の挿絵も渋い!雰囲気出してます。
 

 
 児童向け名作全集としてはかなりマニアックな選択とは思いますが、資料的価値は非常に高いと思われます。児童向け名作全集にこんなマニアックな作品を選んでくれた編集部に感謝!
   
 明治の探偵小説 (双葉文庫―日本推理作家協会賞受賞作全集) 欧米推理小説翻訳史 (双葉文庫―日本推理作家協会賞受賞作全集〈72〉)
  
 ルコック探偵 (1979年) (旺文社文庫)
 世界推理小説大系〈第2〉E.ガボリオ (1964年)
  
■[名作文学]ルコック探偵 河畔の悲劇(オルシヴァルの犯罪)
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20111221/p1
■[名作文学]世界推理小説大系第2巻 ガボリオ 永井郁・訳 東都書房
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20120131/p1
ジュブナイル版 黒岩涙香『幽霊塔』(森いたる『ゆうれい塔』)
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20120626/p1
      
odd_hatchの読書ノート
 ガボリエ「ルコック探偵」(旺文社文庫
  http://d.hatena.ne.jp/odd_hatch/20110810/1312925949
    
ぐれた
小学館少年少女世界の名作フランス編−5「ルコック探偵尾行命令」 
http://73622061.at.webry.info/200610/article_20.html
  
雨の国の王者
ガボリオ『ルコック探偵尾行命令』小学校(少年少女世界の名作フランス編−5)
http://blog.goo.ne.jp/orangend/e/3e8bb8b07dda6771d96074467c5d90a5
  
奈良の古本屋・智林堂店主のブログ
SF&ミステリのレア物は児童書名作全集を狙え
http://chirindote.exblog.jp/10578607/
   
ミステリー・推理小説データベースTOP > 名探偵の誕生 > ルコック探偵
  http://www.aga-search.com/40lecoq.html
   http://www.aga-search.com/40-5lecoq.html
    
   

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