『柿色の紙風船』 海野十三・作
病院で使用している医療用ラジウムを盗んで売ろうとする悪人の回想談。
このラジウム、何に使ってるかというと、何と「痔」の治療!
昔は痔も放射線治療してたんですか!!
『これでわかる からだのなかの放射能--正しく知ろう! 放射能汚染と 健康被害』
〜という本があります。放射性核種について、色々なエピソードと共に紹介した本です。
そこに描かれていることには、昔はラジウム療法といって、ラジウムが医療に使われていたり、ラジウムが体にいいと思われていて、ラジウム健康法というのがあったそうな。
ラジウムキャバレーなるものができて、客にラジウム水を飲ませたり、ラジウムから発生する放射性ガスを吸入させたりしていたとか。
また、ラジトールなる怪しげな薬が万能薬として使われていたとか。
今から思えばとんでもないことです。
しかし、人類は進歩したと言えるのでしょうか。
これと変わらないような御用学者が今でもうじゃうじゃいるではありませんか!科学的真実よりお金・権力・イデオロギーを優先させるトンデモ大庭嘉門御用学者です。
100年後、日本が存続しているのかどうか不安ですが、もし存続してるなら、御用学者の言説もお笑いトンデモ憤懣エピソードとして記録されていることでしょう。自分の死後のことはどうでもいい、というつもりでしょうが、騙し逃げは許してはならない!
それはともかく、放射線発見当初は放射線ブームとなり、医療でも色々な応用が考えられたのでしょう。
しかし、痔の放射線治療まで行われていたとは。
この物語でも犯人は痔を患い、計画的にラジウム治療を受けてラジウムをお尻に入れたまま逃走します。物語では痔が良くなったというのだから、効いたようですが、本当に効いたのでしょうか?
海野十三の探偵小説にはおなじみの帆村荘六探偵も少しだけ登場します。ということはこの作品、帆村探偵シリーズでもあります。
ところが本作品の帆村探偵、やや精彩を欠いてまんまとしてやられます。
『ネオン横丁殺人事件』の時のようにワープして犯人の先回りしたら良かったのに。
■[速読読書]『ネオン横丁殺人事件』海野十三・作〜帆村荘六はワープしたのか!?
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20080103/p1
本作品の犯人、お尻にラジウムを入れて盗むだけあって、なかなかの知能犯でもあり、強運でもあります。回想談の文体も飄々として茶目っ気があります。
名探偵を出し抜く怪盗ルパンのような、と思ったら、意外とえげつない残虐性も持っているようで、ルパンのようなという認定は取り消しさせて頂きます。
痔の治療用のラジウム。一体どんなのだったのでしょうか。お尻に入れられるというのだから、小さいはずです。しかしかなり高価なようで、犯人はこれを売って海外に高飛びして老後は悠々自適に暮らすつもりです。
これで終わっては面白くない!
実はこのお話は続きがあって、その後、帆村探偵の奮起により見事に犯人逮捕……とどんでん返しがあれば面白いのに。
(原発安全デマ御用学者の騙し逃げは許してはならぬ!)
赤外線男 他6編 (春陽文庫―探偵小説傑作選 名作再刊シリーズ)
十八時の音楽浴 (1965年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)
海野十三 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E9%87%8E%E5%8D%81%E4%B8%89
帆村荘六 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%86%E6%9D%91%E8%8D%98%E5%85%AD
【速読読書】カテゴリは、『無料で速読トレーニング』http://www.servicemall.jp/sokudoku/
さんが出している2つのメルマガ
『世界の名作を読みながら速読力を身に付ける』
http://www.mag2.com/m/0000144067.html
『日本の名作を読みながら速読力を身に付ける』
http://www.mag2.com/m/0000145860.html
の使用テキストの感想文です。
『柿色の紙風船』 海野十三・作
第1回 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/s/0142001.html
から
弟38回 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/s/0142038.html
まで
→バックナンバーへ
← 人気blogランキングにご協力お願いします。m(_ _)m
↓また、ご意見ご感想・ブックマークなど頂けましたら励みになります。
コメントやリンク付きTBもお待ちしております。m(_ _)m