魯迅の『阿Q正伝』は風刺小説として、行間まで読みこなすのはなかなか難解な小説ではないでしょうか。
ところが日本でもかつて少年少女向けに紹介されていたというから驚きです。
カラー名作 少年少女世界の文学(全30巻)(小学館)
第25巻 東洋編2 (1971年1月25日発行)
阿Q正伝 魯迅・原作 后藤有一・文 梁川剛一・画
http://nazede.gozaru.jp/list07.html
これを旺文社文庫版『阿Q正伝』(松枝茂夫訳)と読み比べてみました。
少年少女版は、原作の出来事についてはほぼ全て訳出されています。
ただ、原作(というか松枝茂夫訳版)には、地の分で皮肉めいた解釈が書き込まれているのですが、そういった部分が少しはしょられています。
例えば、阿Qが尼さんに八つ当たりし、尼さんが逃げた後に阿Qを罵った後、松枝版では
「彼は永遠に得意だった。これまたあるいは中国の精神文明が全世界に冠たる一証ではあるまいか。」
という記述があります。
さらに、
「(清朝末期に中国は列強から蹂躙されたが)当時の有識者の中には、なおも強弁して、中国は物質文明においてはそれら強国にいささか劣るかも知れないが、中国の精神文明は世界第一であるといった。それを魯迅は皮肉っているのである。」
という松枝師の注解も入っています。
ところが少年少女版ではこういった部分は飛ばされています。
そういった理屈はいいから、事実・出来事のみをあるがままに読んでもらって、とにかく何か残ればいい、という編集方針なのでしょうね。
この物語、主人公は清くも正しくもなくてヒーローというには程遠いし、最後には誤解のうちに処刑されてしまいます。
シュールだとか不条理ともいえるストーリーです。
少年少女の読み物として、かなり背伸びした選択でしょう。
本書を読んだ時は分からなくても、何かを感じ、将来、完訳を読むきっかけとなればいいのではないでしょうか。
尼さんに「子どもがいないくせに!」とののしられた阿Qは色気付きます。
それ故に、日雇い仕事に雇われた趙旦那の家で、女中・ウーマーを、突発的に口説くに至ります。
松枝訳では、以下のように記されています。
「おれと寝よう。おれと寝よう!」阿Qが突然詰めよって、彼女の前にひざまづいた。
かなり直接的な記述です。肉体関係に重点を置いているのでしょうか。
これを英語で訳するとどうなるのでしょうか。
この部分、少年少女版では以下のように記されています。
かれはウーマーの足もとにひざまずき、
「ウーマー、おらが嫁になれ。おらが嫁になれよう。」
といった。
この訳し方の違い、少年少女向けならではです。
『阿Q正伝』が少年少女向け文学集に入っていた時代、すごい時代だったんですね。
この時代を頂点に日本の知的水準は下降線を辿っているのではないでしょうか。
それにしても梁川剛一さんの描く阿Q、生々しくリアル。トラウマになりそうです。
wikipedia:阿Q正伝
■[名作文学]『阿Q正伝』と『安倍Q凄伝』阿Q安倍Q竹Q山Q、QQQ……
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20131102/p1
■[名作文学]阿Q正伝 松枝茂夫訳 旺文社文庫版の特長
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20131114/p1
阿Q正伝 とは - コトバンク
http://kotobank.jp/word/%E9%98%BFQ%E6%AD%A3%E4%BC%9D
阿Q正伝 井上紅梅訳 青空文庫
http://www.aozora.gr.jp/cards/001124/files/42934_16419.html
読書感想文の書き方「阿Q正伝 魯迅」
http://読書感想文.com/article/124467779.html
魯迅と『阿Q正伝』
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n217/n217_04-01.html
平成26年4月1日 消費税8%まであと何日? http://counting.hatelabo.jp/count/40440
平成27年10月1日 消費税10%まであと何日? http://counting.hatelabo.jp/count/72110
↑人気blogランキングにご協力お願いします。m(_ _)m
↓また、ご意見ご感想・ブックマークなど頂けましたら励みになります。
コメントやリンク付きTBもお待ちしております。m(_ _)m