しあわせの書　読者に挑戦！の本（ネタばらし注意！）

作者:妻夫, 泡坂
新潮社

（あらすじ）
　迷探偵ヨギ・ガンジー一行が、人探しを頼まれる。
　行方不明になった人物は、新興宗教団体・惟霊講会の熱心な信者であった。
　惟霊講会の集まりに調査に向かうガンジー一行。
　ヨギ・ガンジーの二番弟子・美保子は内部に潜入し、やはり惟霊講会を調査している青年・海尻五郎と知り合う。
　迷路のような惟霊講会の建物内を調べる二人であったが、ついに監視員に見つかってしまう。
　すったもんだの成り行き上、惟霊講会の次期後継者を決めるための断食修行の指導＆判定人をすることとなったヨギ・ガンジー。
　しかしその裏では、驚くべき陰謀が進行していたのである……！
　　
　
（以下、リンク先を含め、ネタバレ注意！）　
　朝日新聞の日曜読書欄「売れてる本」で紹介されていて、そういえば日曜昼のラジオ番組（トーキングウィズ松尾堂か日曜喫茶室）でも話題になっていたな、と思って、読むのは今でしょ、と思い立って読んでみたものです。
　　
　新興宗教の本部の建物内部は迷路のようでおどろおどろしくて、この謎のカルト教団と全面戦争か！？と思っていたら、なぜか頼まれごとを引き受けて手伝っているという、ゆるい展開。
　死者の出ないクローズドサークルミステリーのようなものか、こんなのもほのぼのとしていいのう、なんてゆるゆると読んでいたら、最後に驚愕の真相が明らかに！
　知らぬが仏といいますねえ。
　　
　確かに、最後に驚きのどんでん返しがあり、特に結末に向かう怒涛の展開部分は、消灯時間を遅らせて一気に読んでしまいました。
　確かにストーリーとしては面白かったのですが、そんなに評判になるほどのトリックなのかなあ？
と思って一晩寝て、翌日、不思議に思いながらアマゾンのカスタマーレビューを調べていると、ようやく本書に仕掛けられたトリックに気付きました。
　まさかそんなことが本当に行われているとは！
　　
　私の読解力・注意力のなさを露呈しているようでお恥ずかしい。
　しかし、本書ではこの仕掛けについて明らかな説明はなく、ある人物の一つのセリフにしか記述がないのです。
　この仕掛けに気付かずじまいな方も多いのではないでしょうか？

　実際、質問サイトでも以下のような質問がありますし。
　　　
「しあわせの書」の仕掛けって？
　　http://okwave.jp/qa/q1186933.html

　　
　アマゾンのカスタマーレビューを見ても、この作品が思ったほどでもなかった、と書かれている方で、この仕掛けに気付いていない方が多いのではないでしょうか？
　　
　しかし、今でこそ、アマゾンカスタマーレビューや色々な紹介記事・書評などで本書の仕掛けは広く知られているわけですが、発行当初、本書を読んでこの仕掛けに気付いた人はどれくらいだったのでしょうか？やはり気付かずに終わった、という方も多いと思うのですが。
　情報の少ない初版発行時にこの仕掛けに気付いた読者は、相当好奇心旺盛で自由な心を持った方だと思われます。
　発見して、どんなに驚いたことでしょうか？
　　
……という意味で、本書は、読者に挑戦！この仕掛けに気付くことができるかな？！
と、読者の知的好奇心や探究心に挑戦した本であります。
　　
　なお、帯には、もっとすごい物語の復刊のお知らせが掲載されていました。