特撮怪獣スぺクタルドラマ　荒神　宮部みゆき

　　　　

　朝日新聞朝刊連載　宮部みゆき『荒神』が終了しました。
　怪獣特撮映画＋日本版ハリウッド映画のスぺクタル大作でした。
　江戸時代中期の山の中の小さな村に怪獣が出現！
　隣接し、お互いいがみ合っている小藩に住む人々の運命が交錯する。
　　　
　主要人物が複数登場し、複数の物語が並行して進行していきます。
　やがてそれらの物語が一堂に会し、怪獣との対決というクライマックスを迎える。
　　
　しかし江戸時代の山の中になぜ怪獣が現れるのか？
　その出現の秘密には、当時の最先端技術？が関わっていた！
　現代の科学技術の暴走を予見するかの物語であります。
　怪獣を生み出そうとする勢力があり、復活させてしまう人々があり、怪獣と戦ったり暴走を止めようとする人々があり、怪獣を利用しようとする人があり……。
　現代の軍事産業や原子力ムラを巡る構図と同じですね。
　　
　それで、怪獣を倒すくだりが、斬新です。
『大怪獣プルガサリ』の最後をもう一段階ひねったような結末。
　よく考えれば、昔の怪獣映画や特撮番組でもありそうな解決法ですが、寡聞にして知りません。
　それはともかく、人間ドラマとしてもよく描けているので、
　映画化しても見ごたえある作品となるのではないでしょうか？

　こうの史代さんの挿絵も良かった。
　単行本化する際には、挿絵も完全収録して頂きたいものです。
　　
　蛇足ながら付け加えると、登場する人々はそれぞれの運命を背負っており、かけがえのない人生を送っています。
　群像劇のような構成になっていて、全ての人が主人公なのであります。
　それは原発事故においても言えることであるし、今後日本の国民が体験するであろう軍国主義ファシズムという試練に対しても同じことが言えるのではないでしょうか。
　さらに蛇足として、いがみ合う２つの藩は、現代の日本を取り巻く国際的緊張を思わせます。
　現代社会を反映したＳＦとしても読むことができるのではないでしょうか。

「私が子供のころ、映画でもテレビドラマでも、時代劇は老若男女がこぞって楽しめる国民的な娯楽でした」
「なかでも〈特撮時代劇〉とでもいうべきジャンルのものが大好きでした」
「戦国合戦時代や江戸時代を背景に、妖術使いやあやかしのものどもが登場」
「そうしたドラマチックな物語から私は多くの影響を受け、今日に至っています」
「様々な作品へのオマージュを含ませたつもりですが、連載を終えた今、私自身の耳に響いてくるのは、大映の映画「大魔神」シリーズの遠い木霊です」
【挿絵と読者に導かれ　「荒神」連載を終えて　宮部みゆき】
　　　http://t.asahi.com/enud
　　　　↑私、大魔神映画って、見たことないんです。
　　　　やはり古典的名画は基礎教養として見ておくべきですね。