放射線被ばく CT検査でがんになる
↑上の本についての続きです。主要なことは
■[健康]CT検査で数十年後にがんになる確率が少しだけ高くなる
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20140531/p1
で述べました。今回は、トピック的なことについて覚え書きです。
平成16年2月10日に読売新聞掲載で話題になった「Lancet論文」というのがあります。
がん患者3・2%は診断被ばくが原因−オックスフォード大調査(読売新聞) −調査対象15か国中、日本突出
http://www.asyura2.com/0311/health7/msg/921.html
「がん患者3・2%は診断被ばくが原因」
というものですが、これは実際にそれだけ増えた、という観察結果があったわけではなく、「しきい値なし直線モデル」に当てはめて「推定」した値、ということです。
その「推定」までのプロセスが信用できるのかどうか、あくまで「机上の空論」ではないでしょうか。
それで、その根拠となるデータの多くを占める研究は、原爆被爆についての研究です。
原爆被爆のデータを医療被曝に当てはめることについての疑問は先のエントリーで述べました。
それはそうとして、「しきい値なし直線モデル」については原発事故に関しても問題になっている議論百出のテーマです。
近藤医師によると、
「直線・しきい値なし仮説は、もはや仮説ではなく、事実ないし真実と考えられます。」
とのこと。
これは重要な指摘ではないでしょうか。
wikipedia:低線量被曝問題
wikipedia:被曝
ここではしきい値論争に踏み込むつもりはありません。
私個人としては、確かに「しきい値なし直線モデル」に妥当性があると思います。
ただ、そこに機械的に医療被曝を当てはめて「推定」するのはいかがなものかと。
日本医学放射線学会 の見解
http://www.radiology.jp/modules/news/article.php?storyid=106
社団法人日本放射線技師会
社団法人日本放射線技術学会 の見解
http://www.jart.jp/news/tclj8k0000000l97-att/20101110_mes.pdf
兵庫県健康財団 の見解
http://www.kenkozaidan.or.jp/health/2005/01/post-21.html
後から訴えられないように防衛的にCTを撮る、という件に関連して、割りばし事件について言及されています。
「この男児はグッタリして意識も落ちており、通常の子どもが頭を打ってコブができた場合とは異なります。通常の知識・能力を備えた医者には、男児の容態からして、生命の危機が一見して明らかだったはずなのです。」
として、CTではなく、被曝の少ないレントゲン検査をするべきだった、と書かれています。
この不幸な事件について私がとやかく言う権利も能力もありません。
本書において近藤氏はCT検査を批判しているため、あくまでもCT批判の論理を貫くため、レントゲン検査でも十分だ、という論法です。
しかし、こけて頭を打ってぐったりしたというのなら、脳出血という可能性もあり得るはずで、その場合、CT検査でないと分からないのではないでしょうか。
(ウィキペディアを見ると、男児は一時的に意識障害が見られたがその後回復した、と書かれています。「グッタリして意識も落ちており」という近藤氏の記述と矛盾します。近藤氏はこの事件について裁判を傍聴するなど調査していたようですが?
ネット上では情報が錯綜しており、一つの記事を見ただけで軽々しく発言できないと思いました。)
wikipedia:杏林大病院割りばし死事件
医療事件というと、奈良県の「大淀町立大淀病院事件」もありました。
この事件の被害者の祖母は看護師としての経験から、病院側に頭部CTを求めたが、病院側はその必要はない、と拒否したとの記述があります。
後から見れば、早目の頭部CTが必要だった事件だと思われます。
wikipedia:大淀町立大淀病院事件
後から色々と批判することは簡単で、実際に現場で直面した時、どう判断するかは難しいものです。
何でも一概に決められるものではなく、例外は必ず存在するものです。
ということは、何でもかんでもCT撮影を悪者扱いするのはどうなのでしょうか。
本書を読んでの結論です。
本書に書かれていることを批判するようなことを書いてきましたが、全否定しているわけではありません。
やはり、医療被曝の影響は少しばかりはあると思いました。
一言でまとめると
【CT検査で数十年後にがんになる確率が少しだけ高くなる】
です。
少なくとも50歳を越えるまで、特に子ども時代は、好奇心や軽い気持ちでCTを受けるのは避けるべき、余程の必要性がないと受けるべきではない、と思いました。
しかし、必要な検査は必要だと思います。
ではどう判断するかというと、近藤氏が書かれているように、自分の身は自分で守る、軽々しく病院に行かない、ということが大事だと思います。
しかし、色々な事例を見てみると、一見、CTが必要でなさそうな症例で、CTが必要だった、という事例もあるようです。
日々是よろずER診療
頭痛を訴える若い女性
http://case-report-by-erp.blog.so-net.ne.jp/20080515
藤井脳神経外科・整形外科
最近転びやすい・・・慢性硬膜下血腫でした
http://fujiiclinic.cocolog-nifty.com/fnoclinic/2010/06/post-3e85.html
こういった知識を色々と知ると、やはり心配になってCTを撮りたくなるという心理も分かります。
何でもかんでもCTは悪、金儲けだ、癌になる、とバッシングするのも医療現場に混乱を招くような気もするのです。
あと、本書について検索しましたが、医療現場の方はどう思われるのでしょうか。
意外と専門家からの反論は見かけないように思われますが。
これを機会に議論が広がっていけばいいかと。
放射線被ばく CT検査でがんになる
wikipedia:近藤誠
wikipedia:「ニセ医学」に騙されないために
「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!
無趣味で人付き合いが苦手な女医の家計簿
金スマ、近藤医師が危険すぎるワケ&がんについて正しく理解して。
http://jyoi-kakeibo.com/tondemo/4638/
金スマ、近藤医師が危険すぎるワケ&私の体験したトンデモ医者(汗)
http://jyoi-kakeibo.com/tondemo/4685/
金スマ、近藤医師が危険すぎるワケ&実際に「放置」した人の顛末。
http://jyoi-kakeibo.com/tondemo/4676/
頭ぶつけた 平気か病院に行くべきか
http://kenkou.gendai.net/vertigo_ringing-ears/%e9%a0%ad%e3%81%b6%e3%81%a4%e3%81%91%e3%81%9f%e3%80%80%e5%b9%b3%e6%b0%97%e3%81%8b%e7%97%85%e9%99%a2%e3%81%ab%e8%a1%8c%e3%81%8f%e3%81%b9%e3%81%8d%e3%81%8b/3281/
http://blogmasaki-ph.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/post-9def-3.html
頭を打って吐き気を訴える娘に、医者「異常ないから帰れ」
納得出来ず、別の病院に連れて行ったら...。 - かぞくちゃんねる
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