OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

日本の医療制度の「既得権益」で守られているのは、一般の国民なのです。

 沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉 (集英社新書) 沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉 (集英社新書)


 私たち一般庶民の生活や医療や老後を考える上で重要なことが、本書には色々と記されています。それらを一つ一つ挙げていくことは私にはできません。内容を詳しく紹介されたブログも色々あるので、ぜひ検索して見て下さい。本項にも幾つかリンクさせて頂きました。
 でも一番いいのは、実際に本書を読むことでしょう。

 本書ではアメリカの政治状況について記されています。政治は公平に行われている、と思うのはもはや幻想ですね。 大企業や投資家といった金と権力を持った連中がロビー活動を行い、利潤を追求しているというのが現実です。そして日本の政治も同じようになっていく、いや既になっているでしょう。
 そしてアメリカの製薬企業や投資家がビジネスチャンスとして狙っているのが、日本の医療業界。彼らの参入に障壁となる日本の国民皆保険制度などを潰そうと虎視眈々と狙っています。
 離れ小島の竹島尖閣諸島を領土的に狙うというのは、ビジュアル的に分かりやすいものです。医療制度の改悪というのは分かりにくいものですが、国民の医療や生活に直接関係する重要な問題です。
 目下の危機は竹島尖閣諸島よりも日本の医療と国民皆保険ではないか。国民の命をアメリカの大企業や投資家に売り渡していいものか、これは日本の庶民をアメリカの大企業や投資家の奴隷とするものであり強生連行ではないのか、ということです。

 新自由主義の論客が規制緩和を主張する際、反対する層を「既得権益」と攻撃します。
 日本の医療制度を考える際、「既得権益」で守られているのは、一般の国民なのです。まさしく、このブログを書いている私であり、このブログを読んでいるあなたのような人々が「日本の医療制度の既得権益」で守られているのであります。*1
 医療や介護を金儲けの手段として考えている連中が、この「既得権益」を狙っているのです。
 しかし悲しいことに、我々一般庶民は自らが享受している「既得権益」についてよく分かっていません。
 日本の医療制度が改悪されようとする時、まず反対するのが医師や医療関係者でしょう。
 だから「既得権益」を狙う連中は、医師や病院や医療業界を「既得権益者」としてバッシングするでしょう。アメリカもそうだったといいます。日本もそうなるでしょう。

「政府やマスコミが医師たちを積極的に仮想敵にし始めたら要注意です」

 医療業界を規制緩和して外資系の企業が参入したら良くなるのではないか、と騙されてはいけません。我々国民は、我々を守っている日本の医療制度について知る必要があります。
「無知は弱さになる。持っている人がその価値をわかっていないものほど、奪うのは簡単ですからね」*2


 wikipedia:既得権益


■[健康][経済]ハーバード大学の医療政策学×医療経済学の方が
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20150919/p1
   ↑追加記事書いてます

(目次)
序章 「臨終」の格差
第一章 オバマもびっくり! こんなにアメリカ化していた日本医療
第二章(株)アメリカに学ぶ、大衆のだまし方
第三章 マネーゲームから逃げ出すアメリカ人
第四章 逃げ切れ! 日本

【序章 「臨終」の格差】
 事例として、アメリカの2つの老人施設について紹介。
 入居金38万ドル(3800万円)で月額6000ドル(60万円)の施設は快適。
 一方、月額2000ドル(20万円)の施設は、全米500か所以上に施設を持つB社傘下の国内最大規模大型チェーン老人ホーム。こちらの待遇は悪く、入居者はケアを受けられず、ほとんど放置状態。
 B社のような投資家所有型大型チェーン老人ホームの特徴は、介護スタッフの数がぎりぎりかそれ以下に抑えられている。時給は平均5.5ドル(550円)で、最低賃金以下で膨大な業務量。
   
 アメリカでは人工透析は贅沢品で、透析センターは7割以上が投資家ファンドが所有しており、費用は高額で富裕層にしか払えない。糖尿病が重症化した一般国民の多くは筆舌に尽くし難い苦しみを味わって死ぬ。
 アメリカの医療や介護業界は、営利企業が公的サービスを飲み込んできた。
 医療・介護系コングロマリットや投資家は、次は日本の医療を狙っている。
「高齢者の生活は今やれっきとした<有料投資商品>です。」
「着々と準備は進んでいます。世界最速で高齢化する日本は、投資家たちにとってドリームランドになるでしょう。」

【第一章 オバマもびっくり! こんなにアメリカ化していた日本医療】
 日本人の健康と生活を守ってきた「国民皆保険」や「高額療養費制度」を始めとした日本の医療制度。
 ビジネスチャンスを狙うアメリカの企業や投資家は着々と切り崩してきた。
   
混合診療>の危険性とは。
 製薬メーカーにとって、安全確認の申請や治験など、手間や費用がかかる上に価格を安くされる公的保険に入るより、自由診療でそのまま売った方が遥かに儲かる。
 だから混合診療にすると、公的保険枠から自由診療枠に治療や機器が移ってくる。
 それが続くと、国民健康保険制度は残っても、使える範囲がどんどん小さくなっていく。その結果、経済力イコールいのちの格差となっていく。

 wikipedia:ユニバーサルヘルスケア
 wikipedia:高額療養費
 wikipedia:混合診療
 wikipedia:自由診療


【第二章(株)アメリカに学ぶ、大衆のだまし方】
 オバマケアは、日本の保険制度のように国が行う社会保障ではなく、民間の保険会社が骨子を書いた制度であり、民間の保険会社に加入するというもの。
 よって、保険会社にとって都合が良い儲け主義であり、その矛盾が色々と出てきている。
 アメリカでは保険業界・製薬業界・投資家などによるロビー活動で政治ががんじがらめに縛り付けられている。TVやマスコミ業界も例外ではない。
 医療制度の商業化に反対する医師はマスコミを使って悪者のイメージを与えられた。
「政府やマスコミが医師たちを積極的に仮想敵にし始めたら要注意です」
「なぜなら真のターゲットは私たち医師ではなく、その先にあるあなた方患者のいのちと健康なのですから」
 ↑仮想敵を作って国民同士を争わせるのは、ヒトラーを始めとして、独裁者の方法ですね。日本でも少し前に公務員バッシングをした橋下徹という独裁者がいましたが。
  
第三章 マネーゲームから逃げ出すアメリカ人
 オバマケアに怒った医師や市民による反乱の事例。
 保険会社との契約を打ち切り、自由診療に切り替えた医師。
 オバマケアを解約して教会主催の医療共済に入会した市民達。
 地域自治体を舞台に反対運動を続ける市民達。
 ラルフ・ネーダー氏もサイトを立ち上げ、全米講演を続けている。
(しかし、製薬業界を始めとするオバマケアムラ、いや、オバマケア帝国もそれに対するカウンター運動を始めるのではないだろうか。
 その後の展開はどうなったのだろうか?)

第四章 逃げ切れ! 日本
 アメリカのグローバル企業から狙われている日本の医療業界の現状について。
「まずは自分の国の医療制度をよく知ることです」
「無知は弱さになる。持っている人がその価値をわかっていないものほど、奪うのは簡単ですからね」

 長野県の佐久総合病院の事例。東京都足立区の給食革命。兵庫県立柏原病院の小児科を守る会。
 著者は、地域社会で頑張って医療を守る運動をしていこう、と述べています。
 しかし、それをやるには、余程カリスマ性のある人物でないと。
 少なくとも、私程度の人間が何を言っても何をやっても、他人を動かすことはできないでしょう。ブログやツイッターですら何を書いても何の反応もないくらいだから。

■[健康][経済]ハーバード大学の医療政策学×医療経済学の方が
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20150919/p1
   ↑追加記事書いてます

 沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉 (集英社新書) 沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉 (集英社新書)

今政府の中では、全国に28万人の患者を持ち、年間1兆円の医療費がかかる人工透析を公的保険から外し、自己負担にせよという話が出ている。この計画に誰よりも胸を熱くさせているのは、1兆円市場の新ビジネスに参入したいアメリカの透析産業とその株主である投資家群だ。 p187

 沈みゆく大国アメリカ (集英社新書) (株)貧困大国アメリカ (岩波新書) 政府は必ず嘘をつく  アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること  角川SSC新書


 本当の医療崩壊はこれからやってくる! 安倍医療改革と皆保険体制の解体: 成長戦略が医療保障を掘り崩す 日本医療クライシス「2025年問題」へのカウントダウンが始まった


 wikipedia:佐久総合病院
 wikipedia:県立柏原病院の小児科を守る会
 wikipedia:医療崩壊
 wikipedia:国立病院立ち枯れ作戦


出版社公式ページ
  http://shinsho.shueisha.co.jp/tsutsumi/
  http://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0785-a/


著者インタビュー
「沈みゆく大国アメリカ〈逃げ切れ!日本の医療〉」堤未果
  http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/160656/1
『沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉』著者 堤未果さん
 ベストセラーズインタビュー #新刊JP
  http://www.sinkan.jp/special/interview/bestsellers68.html


心療内科医が現代日本の病理を斬る!〜心のケアのあり方から震災後の日本社会について考える〜
 沈み行く大国アメリカ<逃げ切れ!日本の医療>を読んで
  http://ameblo.jp/dr-nagi/entry-12050747246.html
  http://ameblo.jp/dr-nagi/entry-12051049032.html
  http://ameblo.jp/dr-nagi/entry-12051431064.html
  http://ameblo.jp/dr-nagi/entry-12053581823.html
本読みな暮らし
 沈みゆく大国アメリカ<逃げ切れ!日本の医療>
  http://yo-shi.cocolog-nifty.com/honyomi/2015/06/post-b4ee.html
墓石さんのブログ
 沈みゆく大国アメリカ<逃げ切れ日本の医療>
  http://hakaihisan.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-891a.html
*乱読事始め*
 沈みゆく大国 アメリカ<逃げ切れ! 日本の医療>ー堤 未果:良書です。
「無知」は隙を与えることになる事を知ってほしい。
 大切なものを、当たり前の暮らしを合法的に奪われてしまわないように。
  http://kittentbook.hatenablog.com/entry/2015/07/21/181239
ヨッシィー☆のとことん前向きなブログ
【書評】『沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉』(堤未果
  http://maemuki-blog.com/shohyou/yononaka/tsutsumi-nihonno-iryou/
ちば合同労働組合.
 書評『沈みゆく大国アメリカ〈逃げ切れ!日本の医療〉』.
  http://www.chiba-goudou.org/wp/%E6%9B%B8%E8%A9%95%E3%80%8E%E6%B2%88%E3%81%BF%E3%82%86%E3%81%8F%E5%A4%A7%E5%9B%BD%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%80%88%E9%80%83%E3%81%92%E5%88%87%E3%82%8C%EF%BC%81%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE/
中村ゆきつぐのブログ
医療における既得権益は医師ではなく国民!山形大嘉山孝正先生の講演より。マスコミさんへお願いします
  http://blog.livedoor.jp/dannapapa/archives/3908391.html
  http://blogos.com/article/71216/
医療政策学×医療経済学
 今話題の「沈みゆく大国アメリカ」を読んで
  http://healthpolicyhealthecon.com/2014/12/24/%E6%B2%88%E3%81%BF%E3%82%86%E3%81%8F%E5%A4%A7%E5%9B%BD%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB/


ブクログ http://booklog.jp/item/1/4087207854
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*1:現行憲法を巡る問題も、同じ図式です。日本国憲法の「既得権益」で守られているのが一般国民であります。

*2:繰り返しますが、日本国憲法の改悪を巡る問題についても、同じことが言えます。