OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

ハーバード大学の医療政策学×医療経済学の方が

 沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉 (集英社新書) 沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉 (集英社新書)


 先日、堤未果さんの『沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉 (集英社新書)』について感想を書きました。

■[健康][経済]日本の医療制度の「既得権益」で守られているのは、一般の国民なのです。
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20150913/p1

  
 他の方はどう書かれているだろうと検索して色々見た中で、ハーバード大学博士課程で医療政策学を学んでいる方のブログが出てきました。

医療政策学×医療経済学
今話題の「沈みゆく大国アメリカ」を読んで
  http://healthpolicyhealthecon.com/2014/12/24/%E6%B2%88%E3%81%BF%E3%82%86%E3%81%8F%E5%A4%A7%E5%9B%BD%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB/


 ハーバード大学というと、『沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉』中で

ハーバード大学オバマ大統領の熱心な支持者だ」
献金者リストでもトップ5に入っている。ロビー活動にも余念がない。
 オバマケアを批判する声に対しては、速やかに反論する徹底ぶりだ。」(P100)

と書かれていますが、まさにその記述を裏付けるように、
「3〜4ページに1つはオバマケアに関する間違った説明がありました」
とけなしています。
 しかし、このブログの記述と『沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉』を読み比べてどちらが説得力あるかと判定すれば、やはり『沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉』です。
 何と言っても『沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉』(タイトルが長い)では、足を使った取材やインタビューが駆使されているので、説得力が違います。
 ハーバードの学者先生は「著者のリサーチが不十分」「バイアスのある証言(Anecdote)の寄せ集め」と批判されていますが、ではご自身はというと、大学の先生やら専門家やらの証言ばかりです。

オバマケア導入で得をした人に話を聞けばプラスの意見が得られます」
「この本は、この「マイナスのコメント」を寄せ集めたものである」

と批判されていますが、このブログ記事自体、「プラスのコメント」を寄せ集めたものです。
 というか、オバマケアを推進した側のコメントを寄せ集めています。
「最後に実際に現場で患者さんを見ている医師の証言」として、これまたハーバード大学のご同僚の紹介です。
 まるで世界がハーバード大学のみで成り立っているかのような世界観ですね。

 堤さんの著書では、アメリカの医師達がオバマケアに耐え切れず、保険会社との契約を打ち切って自由診療に戻って、患者さんのための医療ができるようになったという事例が幾つか紹介されています。
 今後の日本国民の医療の未来を考える際、少数の特権階級のハーバード大の事例より、多くの普通の勤務医や町医者の事例の方が多数派の未来をよく表しているでしょう。
 
 そして驚くべきことに何と、“あの方”の証言も大々的に紹介されています。
“あの方”とは、『沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉』を読んだことある方ならよく知っている、【ジョナサン・グルーバー教授】その人です!

MITの医療経済学者であり、オバマケアのデザインを行った人の一人であるジョナサン・グルーバー教授はこのように反論しました。「証言の寄せ集めはデータではなく、エビデンスでもありません。我々はきちんとデータを集めており、平均すると、アメリカ国民の保険料はオバマケアによって安くなっていることが分かっています。人によっては残念ながら損になってしまっているかもしれませんが、そういった個々の話に惑わされずに、データを用いてきちんと全体像を見るようにしてください。」

 おいおい、だから、堤さんの著書では、この方の失言で大問題になったくだりが紹介されてるんではなかったかい?

「この法律はオバマケアが増税政策であることを伏せる形で書かれました。そこを明らかにしてしまったら、成立しなかったからです」
「都合の悪い情報は伏せること、それは政治的には非常に有効なのです。そもそも法律を通すためには、有権者の<愚かさ>というものが不可欠ですから」
オバマケアは、国民が愚かすぎて内容を理解できなかったから成立した法律だ」

 こんな発言をする人の証言を紹介するのはまずいんじゃないの?
 この方、本を読まずに批判してるんではないですか?
 ブログには賛同者のコメントがずらりと並んでいますが、誰も指摘しないのですか?
 このコメンテータ達も本を読んだのでしょうか?

 私が思いますに、オバマケア・製薬企業・保険会社とのつながりが深いハーバード大学で学んでいるこの方も、そちらのムラ(帝国)の住人ではないかと。
 もしかして将来、日本の医療特区へのアメリカ企業参入問題について問題になった時、
ハーバード大学で医療経済を学んだ専門家”
という肩書きで発言し、アメリカ企業による日本の医療市場参入における代理人・ロビーイストのような役割を果たすのではないかと。
 Yusuke Tsugawa先生。
 この名前を覚えておいて損はしないでしょう。

(9月22日追記)
 9月21日付で、
「日本だけが混合診療解禁などの自由市場主義的な方向に向かっていることに、個人的には一抹の不安を覚えています」
という結びの記事を書かれています。
  http://healthpolicyhealthecon.com/2015/09/21/regulated-market/

  
 沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉 (集英社新書) 沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉 (集英社新書)


 沈みゆく大国アメリカ (集英社新書) (株)貧困大国アメリカ (岩波新書) 政府は必ず嘘をつく  アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること  角川SSC新書


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■[健康][経済]日本の医療制度の「既得権益」で守られているのは、一般の国民なのです。
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20150913/p1


出版社公式ページ
  http://shinsho.shueisha.co.jp/tsutsumi/
  http://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0785-a/


医療政策学×医療経済学
 今話題の「沈みゆく大国アメリカ」を読んで
  http://healthpolicyhealthecon.com/2014/12/24/%E6%B2%88%E3%81%BF%E3%82%86%E3%81%8F%E5%A4%A7%E5%9B%BD%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB/


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