OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

「歴史に学んで未来を予測する」ということとは?

 2022―これから10年、活躍できる人の条件 (PHPビジネス新書) 2022―これから10年、活躍できる人の条件 (PHPビジネス新書) 

 オビには、
「なぜ、神田昌典は、
 「日本人の未来は明るい」
 と言い切れるのか?」
というフレーズが。
 神田昌典さんが未来を語った本。
 簡単にまとめると、色々悲観的なことも書かれていますが、適者生存競争に勝った者にとってはいいことも多い、というところか。
 まあ私は適者生存競争に勝ち抜くことは無理だろうから負けて消えていく組の方だろう。
 
 この本を読んだきっかけは、日本有数の占い師・カウンセラー・コンサルタントである方がメルマガで勧めていたから。
 本書の影響か、その先生は、日本の未来は明るい、今に日本が世界をリードする、と楽観的な日本の未来像を語っておられます。
 我々の身の回りに未来予測の材料はあります。何を取捨選択するかで予測は大きく違って来るでしょう。
 神田さんも占いの先生もそうですが、かなり楽観的な題材を選び、楽観的な予測を導いているという印象です。
 そりゃあ当然のことで、コンサルタントや占い師という職業は、長所を見つけて勇気付ける職業です。
 そういったプラス思考が身についているので、未来予測の方法もかなりプラスの方向に向かうのでしょう。
 ところが私はマイナス思考をも超える最悪思考で、最悪の題材を選んで最悪の結果を導き出します。
 実は私は占い師になりたかったのですが、この性格がネックとなって占い師失格となりました。
 本書で神田さんは、メラノーマ(悪性黒色腫)をイメージ療法で治療した経験について書かれています。これなどはプラス思考の最たるもの。
 マイナス思考をも超える最悪思考の私だったら、メラノーマを宣告された時点で闘病をあきらめ、なるべく早く苦痛を味わわないで死ねる方法を模索するでしょう。
 本書は、メラノーマをも治すプラス思考の経営コンサルタントが書かれたオリジナリティあふれ、示唆に富み、勇気付けられる本であり、客観的に採点するなら星5つは当然の結果。
 しかし、マイナス思考をも超える最悪思考の持ち主である私から見ると、色々と反論したくなる点も多いのです。
 それで、以下は蛇足とも言える私のつぶやき。
  
 まず、未来予測について書かれた本といえば、他にも色々出ています。
 私が今まで読んだ中では、以下の3冊が、本書より説得力あり、現実的だと思います。
 
 沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉 (集英社新書) 沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉 堤未果

■[健康][経済]日本の医療制度の「既得権益」で守られているのは、一般の国民なのです。
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20150913/p1


 「格差突破力」をつける方法―勉強法から人生戦略まで (新書y) 『「格差突破力」をつける方法』中山治

■[日々の哲学]16日の総選挙を予見!?5年前に書かれた本
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20121208/p1
■[自己啓発]5年間の時代の流れを的確に的中させていた!驚きの自己啓発
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20121210/p1
■[自己啓発]ハケン国家の時代を生き抜く方法
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20130107/p1


 消費増税で日本崩壊 (ベスト新書) 『消費増税で日本崩壊』斎藤貴男・著

■[日々の哲学]消費増税で日本崩壊1 数年後の庶民の生活をシミュレート
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20120927/p1
■[日々の哲学]消費増税で日本崩壊2 消費税で正社員減少・派遣社員増大
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20121003/p1


 上で挙げた3冊はかなり悲観的な内容です。
 皆様がこれら3冊と「2022これから10年〜」と読み比べると、どう思われるでしょうか。
 神田さんは、未来へのマイナス要因を意図的に無視して計算に入れていないので、かなり未来像が楽観的にぶれていると私は思います。
 例えば本書でも、「日本列島は地震の活動期に入っている」という点について一応触れられていますが、そのことはなかったことにしてあえて計算から除外しています。
 地震の活動期に入ったのなら、二度と福島の悲劇を繰り返さないように十分な対策を立てる必要があるのではないでしょうか。
 原発の再稼働なんてもってのほかです。
 結局、原発事故なんて起こった時は起こった時。庶民は金持ちに従っとけばいいんだ、という愚民化政策ですね。
 私も自己啓発本だとかハウツー書なんかを読むのが好きですが、そういった本はこういう愚民化政策を広める傾向にあるのですね。
  
 また、本書では歴史の「70年周期説」に基づいて未来予測を行っています。
 しかしこういった周期の取り方は、後付けで何とでもできるので、あまり信用するのもどうかと。実際、本書でも注意書きがあります。

「もちろん後付けではどんなことでも言えるから、歴史は70年周期で巡っていると、あなたを説得したいわけじゃない。周期説を探究するうえで、私は84年周期、60年周期等のさまざまな年数で歴史を振り返ってみた。その結果、どの年数で歴史を振り返ったとしても、ある程度、関連は見えてくる。ただ日本において、最も現代を説明しやすいのが70年だったために、本書では、この考え方をとっている。」

「そもそも周期が厳密に70年とは限らない。数年のズレは、当然あるから」

 ちなみに、144年周期説というのもあります。

未(ひつじ)の時代の運命盤 陰陽六行自然学が導く 前田令洋
  http://yorodzu.seesaa.net/article/414225508.html

  
 歴史は繰り返すということに注目するのなら、私は、むりやり周期をこじつけることより、個別の歴史にもっと注目するべきだと思います。
 例えば、第一次世界大戦後、世界で最も民主的だと言われていたワイマール憲法を持つ国からヒトラーが台頭し、独裁制を完成させ、戦争を始めた歴史。
 戦前の日本で憲兵がのさばり、言論が弾圧され、大政翼賛会ができ、戦争を始めた歴史。
 薩長閥体制下の政治で行われた言論統制

■[憲法]加納一朗「開化殺人帖」で比較する明治・平成言論弾圧
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20141019/p1


 或いは、2001年9月11日後のアメリカで行われた言論統制
  
■[映画]華氏911 ブッシュと安倍晋三が重なる 日本の今後が描かれた映画
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20150729/p1

  
 現代の日本は明らかにこういった歴史を繰り返しています。そういう肝心なことに気付かない、或いは気付かないふりをしているのは、歴史から何も学んでいないということなのではないでしょうか。
  
 以上、歴史に学ぶことと未来予測という側面について私が思うところを述べてみました。
 結論として、本書「これから10年〜」は、悲観的要素をあえて無視し、楽観的要素ばかりを選択して未来予測をした結果、地に足がついていないアクロバチックな妄想未来予測だ、ということではないでしょうか。

■[経済]TPPが暮らしを壊す 雇用、食生活、保険・医療の危機
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20130516/p1
■[経済]TPPは21世紀型奴隷制
アメリカ大企業のアメリカ大企業によるアメリカ大企業のための不平等条約
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20130517/p1


2022―これから10年、活躍できる人の条件 神田昌典(3回にわたる感想文)
■1[日々の哲学]「歴史に学んで未来を予測する」ということとは?
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20151106/p1
■2[憲法]神田昌典の名著をあえて“キャリアポルノ批判”という観点から批判してみる
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20151112/p1
■3[経済]これから10年、なくなるのは会社ではなく正社員ではないですか?!
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20151120/p1


 wikipedia:神田昌典


出版社による紹介ページ http://www.php.co.jp/2022/


『2022−これから10年、活躍できる人の条件』公式ファンページ
  https://www.facebook.com/2022world


ブクログ
  http://booklog.jp/item/1/4569797601
  http://booklog.jp/item/1/B0081BIQS8
読書ログ http://www.dokusho-log.com/b/4569797601/
読書メーター http://bookmeter.com/b/4569797601

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