OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

『へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』

 へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々 へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々

(宅老所よりあい・金策の歩み)
1991年11月 お寺のお茶室でデイサービス開始
 やがてお寺に迷惑がかかるようになり、自前の施設が必要になる
 空き家を見つけたが、改修・改築費用が800万円必要であった
 半年で500万円集める。
1992年11月 宅老所よりあい開始
 その後、第2・第3支所も開所
2011年 特別養護老人ホームの建設が必要になる
 森のような場所に建つボロ家に目星をつける
 地代に1億2千万円必要
 支援者から寄付金を募り、3か月で集める
2012年3月 ボロ家を整理・改修
 その後、週末だけのカフェ「よりあいの森カフェ」として営業を開始
 失敗から学びながら人気店に成長
 特養の開所を2年後に定め、金策を開始
 建築費の見積もりは1億6000万円
 市の補助金制度に申請し、7000万円の補助を受けることを計画
 3600万円は利子の安い福祉医療機構から20年返済で借り、
 残り5400万円は何が何でもかき集める計画を立てる

 理想の介護施設を設立・維持するために職員が金策まで行っているのがすごい。
 アルバイトの内容は、ジャムやオリジナルグッズを作って売ったり、各地のお祭りにテキ屋を出店したり、チャリティイベントを開催したり。
 アルバイトは勤務の非番の日に行うというし、夜遅くまで勉強会をやっているというし、ボーナスの一部を寄付に回すというし、一つ間違えばブラック職場です。その職場が本当に正しいのか、“おらが職場”という意識を持ってるかどうかが分かれ目ですね。

 そしてその金策の一環として、雑誌作りも計画された。
 価格は500円と設定。ジャムが400円で雑誌とセットで900円、千円出しておつりの100円を募金してもらうという設定という。
 私も子どもの頃から文章を書くのが好きで、裏が白い新聞チラシを集めて折って記事を書いて本みたいにするのが好きだったクチだから、この金策のための雑誌作りをどうしたか興味ありました。
 普通なら、我々はこんな理念を持って介護に取り組んでます、といったような、銀行の待合に置いてあるような一般的な企業のPR誌のようなのをイメージします。
 ところが鹿子さんが実際に出した雑誌はそのようなものではなかった。
 お金をもらえる文章とはどういうものか、ベストセラーにできる文体とはどういうものか。
 実物を見ていないので分からないのですが、本書を読めば、その雑誌がありきたりのものではないと予想がつきます。
 新聞の無署名記事のような、或いは教科書的な文体ではなく、非常に個性的な文体です。
 やはり、笑い・ユーモアの要素があるのが強みです。
(そもそも、雑誌や著書のタイトルを「ヨレヨレ」とか「へろへろ」とかネーミングするセンス、只者ではないですね)
 一つ間違えばけなしになりそうなすれすれのところで寸止めされた突っ込みでされる人物紹介が最大の特徴。
 新聞や教科書を読み過ぎて無味乾燥の文体になった私にはとてもできません。冗談言っても真面目に受け止められるタイプだから、本書のような寸止め突っ込みを真似したら、本当に怒らせてしまうでしょう。

 しかし、書かれた著者もすごいのですが、このような調子で書かれた雑誌を「企業広報誌」として許可して出した経営陣もすごいと思います。
 試しに、私が・あなたが勤務している会社が広報誌・広報紙を出すとした時、このような文体の文章の掲載がOKされるかどうか想像してみると、これは相当すごいことなんだと実感できるのではないでしょうか。

 ちなみに、「宅老所よりあい」の現・施設長の村瀬孝生さんも、前・施設長の下村恵美子さんも、介護業界では高名な方々で、著書も多く出されています。
 本書には、下村恵美子さんがパピコを食べるシーンがあります。私が子どもの頃からあるお菓子ですが、40過ぎるまで食べたことありませんでした。
 本書を読んだ影響で初めて購入したのですから、影響力とはすごいものです。

 なお、著者の鹿子裕文さんのツイッター
「『ヨレヨレ』は、販売を終了しました。完結です。」
という記述があります。もう重版や続刊はないのでしょうか。

 へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々 ローカルメディアのつくりかた:人と地域をつなぐ編集・デザイン・流通 モンドくん 

 おばあちゃんが、ぼけた。 (よりみちパン!セ) おしっこの放物線―老いと折り合う居場所づくり 認知症をつくっているのは誰なのか 「よりあい」に学ぶ認知症を病気にしない暮らし (SB新書) 

 生と死をつなぐケア (宅老所よりあいの仕事) あれは自分ではなかったか グループホーム虐待致死事件を考える 九八歳の妊娠―宅老所よりあい物語


宅老所よりあい 公式サイト http://yoriainomori.com/

ヨレヨレ 販売コーナー
  http://yoriainomori.com/?page_id=2215
ナナロク社 ヨレヨレ・ヘロヘロコーナー
  http://www.nanarokusha.com/book/2016/01/04/3734.html
  
鹿子裕文ツイッター https://twitter.com/yorehen
  
モンド今日の絵 http://mondo-art.blog.jp/
ボギーの悪趣味音楽作法 http://bogggey.blog.jp/


書評 朝日新聞 http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2016022800013.html
書評 週刊朝日 http://book.asahi.com/reviews/column/2016021900001.html
SUNDAY LIBRARY:私的本屋賞<サンデー毎日 2016年1月24日号より>
  http://mainichi.jp/articles/20160112/org/00m/040/028000c
書評 西日本新聞 http://www.nishinippon.co.jp/nlp/book_auther/article/217551
[書評]『へろへろ』 - 高橋伸児|WEBRONZA
http://webronza.asahi.com/culture/articles/2016010800003.html

福岡にある宅老所に新しい介護モデルをみた 「優しく社会と繋がる未来がほしい」
http://toyokeizai.net/articles/-/102737

鹿子裕文×三島邦弘 へろ戦記 京都・ちゃぶ台篇(1)
http://www.mishimaga.com/special01/102.html

都築響一×鹿子裕文トークイベント「はみ出した先に見えてきたもの」レポート
http://hon-hikidashi.jp/bookstore/11494/

東京新聞:もがきながら楽しむ 『へろへろ雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』編集者・鹿子裕文さん(50)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/kakuhito/list/CK2016013102000192.html

京都発 ミシマの「本よみ手帖」
「世界がひっくり返って面白がる雑誌を作るぞ!」 http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/173393

本屋さんと私 第166回 「あなたの文章が好きなんです」(ナナロク社・川口恵子さん編)
  http://www.mishimaga.com/hon-watashi/166.html



はみ出し者だから見えたリアルな世界
http://www.mammo.tv/interview/archives/no368.html

もがきながら、楽しもう! http://kangaeruhito.jp/articles/-/1508

下村恵美子さん
http://www.asubaru.or.jp/role_models/detail/119

  
ブクログ http://booklog.jp/item/1/4904292642
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