女難
ある男が語った、盲目の尺八吹きの数奇な人生。
彼は12の頃、母に連れられて占い師に見てもらったのです。
老人は私の顔を天眼鏡で覗のぞいて見たり、筮竹をがちゃがちゃいわして見たり、まるで人相見と八卦見と一しょにやっていましたが、やがてのことに、
『イヤ御心配なさるな、この児さんは末はきっと出世なさるる、よほどよい人相だ。けれど一つの難がある、それは女難だ、一生涯女に気をつけてゆけばきっと立派なものになる』と私の頭を撫なでまして、『むむ、いい児だ』としげしげ私の顔を見ました。
占いを学ぶ者にとって、色々と考えさせられる物語です。
不吉な予言を回避しようとしてあがいた結果、かえって予言が成就してしまうことを「エディプス効果」というそうです。
wikipedia:予言
エディプス効果(K.R.ポッパー)
http://www.doctor-sumai.com/colum/002c2-008.html
エディプス効果
http://lifecompassblog.blog2.fc2.com/blog-entry-121.html
語り手の尺八吹きは平凡な幸せを目前にしながら、女に気を付けようと用心するあまり、かえって失敗しているようにも思えます。
占い師の見立ては悪いことを言って恐怖心を掻き立てるというのではなく、「出世するいい人相」ということをメインに言っています。
しかし用心深い人は、付け足しで言われた注意すべきことにばかり注目してしまうのです。(私もこのタイプです)
それなら初めからいいことばかり言って悪いことを一切言わない方が無難ですね。(実際、私が一番初めに習った占い学校ではそう教えています)
旺文社文庫版の解説(坂本浩)から引用します。
「独歩は幼少のころ、地元の国学者として知られた八十幾歳の老翁に女難の相があると卜されたことがあるが、それを基として三つの女難を想像して描きあげたものが、この作品である」
そんな事実があったのですか。
しかし地元の国学者とは誰なんでしょうか。名前は残っていないのでしょうか。
青空文庫図書カード:No.43243 女難 国木田独歩
http://www.aozora.gr.jp/cards/000038/card43243.html
http://www.aozora.gr.jp/cards/000038/files/43243_16115.html
尺八古典本曲練習帳 国木田独歩「女難」
http://umiosa.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_e838.html
ブクログ
http://booklog.jp/item/7/043243
http://booklog.jp/item/1/B009B0FSOS
読書メーター
https://bookmeter.com/books/5891813
号外
なかなか愉快な語り口の短編です。
国木田独歩の短編では語り手は遠景に入ってしまうことが多いのですが、本短編では会話に参加しています。
内容的には、現代の日本社会に通じる問題点に触れていると思います。
自分では何もしないで傍観していながら戦況を知らせる号外のみを唯一の楽しみとしている加藤男爵(加と男)は、ナショナリズムやヘイトに熱狂する現代の日本人にも通じるところを持っているようにも思えます。
「戦争最中はお互いにだれでも国家の大事だから、朝夕これを念頭に置いて喜憂したのが、それがおやめになったのだから、気抜けの体ていにちょっとだれもなったに相違ない、それをがっかりと言えばがっかりでしょう。」
「そこで自分は戦争でなく、ほかに何か、戦争の時のような心持ちにみんながなって暮らす方法はないものかしらんと考えた。考えながら歩いた。」
戦争ではなくみんなが平和になって暮らす方法といえば、まずスポーツが挙げられます。
殺し合いである戦争の代わりにスポーツによって国際協調といこう、ということで始まったのがオリンピックやサッカーなどの国際スポーツ大会なんでしょう。
とはいえ、オリンピックを国威発揚に利用したヒトラーしかり、安倍晋三しかり。
2020年の東京オリンピックを前に安倍政権下の日本では戦時体制化が進んでいるように思えます。
青空文庫図書カード:No.1055 号外 国木田独歩
http://www.aozora.gr.jp/cards/000038/card1055.html
http://www.aozora.gr.jp/cards/000038/files/1055_15939.html
広岡威吹の作家ブログ
国木田独歩「号外」小説感想
http://blog.livedoor.jp/blueskytheory/archives/1798386.html
ダジャレ 国木田独歩「号外」について
https://blogs.yahoo.co.jp/esweisrrrr/19121734.html
『号外』に驚異せよ――国木田独歩と戦争ジャーナリズム――
http://p.booklog.jp/book/74994
ブクログ
http://booklog.jp/item/7/001055
http://booklog.jp/item/1/B009IXUA8M
読書メーター
https://bookmeter.com/books/5785986
■[名作文学]武蔵野・牛肉と馬鈴薯 国木田独歩を極めよう!
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20171019/p1
■[速読読書]運命論者/画の悲み 国木田独歩
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20170922/p1
■[速読読書]「牛肉と馬鈴薯」「春の鳥」国木田独歩
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20170724/p1
■[速読読書]「あの時分」「少年の悲哀」国木田独歩
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20170706/p1
■[速読読書]「武蔵野」「詩想」国木田独歩
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20170626/p1
■[速読読書]非凡なる凡人 国木田独歩
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20150331/p1
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