ノスタルジー1972
私が理想とする小説や映画は、『ナミヤ雑貨店の奇跡』や『三丁目の夕日』的な、レトロ風味でいい人ばかり出てきて残酷な描写がなくハッピーエンドで終わるというもの。
このパターンの物語を色々と探しているところです。
本書はタイトルからしてまさにそれにピッタリそうだと思って気楽に読み始めたのですが、意外にもヘヴィーで軽々しく読めない深刻な短編集でした。
中島京子『川端康成が死んだ日』
幼い日の哀しい家族生活の描写とその44年後。
ノスタルジーというより、重くて悲しくなってきます。
早見和真『永遠!チェンジ・ザ・ワールド』
沖縄復帰運動と現代の国会前デモと。
いくら心ある若者が行動しても、あの頃から何も変わっていないし、むしろ悪くなっているのではと絶望感を抱かせる作品。
朝倉かすみ『空中楼閣』
買ったばかりのカラーテレビで札幌オリンピックを見る幸せな小市民家族と苦学生と。
当時はこのような苦学生は沢山いたのでしょうね。
やがて日本は経済大国となり、苦学生も過去の存在となった……と思っていたら、安倍政権による悪政によって経済格差は広まり、1%が99%を支配する世界となり、苦学生も復活してきているのだった。
堂場瞬一『あるタブー』
ミステリーというかサスペンスというか、読んでいる時は一番次の展開が気になって夢中になって読めた作品。
読み終わってみると結局意味が分からないというか。
作者の経験による新聞記者と警察の関係の描写が勉強になったけど、再読してもう一度よく味わいたい度は一番低い作品。
重松清『あの年の秋』
短い短編ながら、ある家族の三代に渡る大河ドラマを感じさせる名作。
1972年の秋が中心に描かれていますが、40年後、あの人がああなっているという時間の経過。歴史というか、【稗史】ですね。
1972年の時点では、博史はまだ小学生ですが、父親も祖母も戦争の経験が生々しく残っていて、戦争を身近に感じています。
そういった方々がいたからこそ日本は平和的に経済大国になっていったのでしょう。
そして今、戦争を体験した方々は少なくなり、戦争を知らない・民主主義と平和憲法の有り難さを実感できない馬鹿どもが平和憲法を改悪して軍国主義を復活させようとしているのです。
皆川博子『新宿薔薇戦争』
作者の回想に伴い、固有名詞が次々と登場。
最初と最後に自分が登場しない友人達の描写を入れたのは作家ゆえの演出か。
決して軽々しく読めませんが、名作揃いの短編集でした。
ノスタルジー1972
「ノスタルジー1972」中島京子 早見和真 朝倉かすみ 堂場瞬一 重松清 皆川博子著
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■[日々の冒険]ナミヤ雑貨店の奇蹟 タイトル通り“奇跡”の物語
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■[憲法]“三丁目の夕日症候群”よりも悪質なもの
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■[映画]ALWAYS 続・三丁目の夕日 古行淳之介の選択
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20100403/p1
■[日々の冒険]アニメ版『三丁目の夕日』を応援しよう会(5)
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20060503/p1
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