OLDIES 三丁目のブログ

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闘論 (1) 古代史への挑戦 梅原猛と竹内均の対談

 闘論 (1) 古代史への挑戦 (徳間文庫) 闘論 (1) 古代史への挑戦 (徳間文庫)  
  
 梅原猛さんの著書は文体が独特で分量も多くて読みにくいものが多いのです。
 しかし対談なら梅原学説が分かりやすく語られているので、まず対談から攻略していくのも一法かと。
 本書は梅原さんの理解者でもあり好敵手でもある竹内均さんとうまく噛み合っていて、梅原学説入門として最適だと思います。
   
第一章 新しい学問の構想
 大陸移動説を唱えたウェゲナーを例に挙げ、学問論を闘わせる。
 明治以降の日本の文系学問は西洋の学問を紹介する「祖述学」中心で独創性がない!自然科学は人文科学よりは国際性が必要だから少しはマシだけどやはり物足りない!とコテンパンです。
 現在でも大学の文系学部縮小論が出てきたりしているので非常に今日的な議論です。
 文系叩きの風潮に対して文系を擁護する意見が出てきたりしていますが、梅原猛さんが健在ならどのような発言をされたでしょうか。
 さらに、これは竹内さんが言われた例ですが、牧野富太郎は植物研究に熱中するあまりに生家の造り酒屋を破産させたそうで、経済と学問の関係はこうありたい、と。
「小人閑居して不善をなす」ではなくて「大人閑居して学問をなす」と。
 そこでお二方は、日本も経済大国になったのだから今後は学問にお金をかけて世界に通用する学説を発表していかねばならない、と言います。
 当時の日本は経済大国で、そんなことを言える余裕があったのですね。
 確かに当時、今後は企業も社会貢献せなあかん、メセナの時代だとか言われていました。
 しかし結局はあだ花的風潮に終わり、日本の現状は見ての通りです。
 今では学問にお金をかけるどころか、奨学金すら出し惜しんで高利貸と変わらんような状況です。
 梅原さんがもし健在なら、今の学問の状況についてどう発言されるでしょうか。
    
第二章 アイヌの文化と日本
 梅原さんも竹内さんも日本人の起源ということに関心を持ち、その点でアイヌ民族と日本人の共通点を重視されています。
 日本民俗の成り立ちについて一部に相違点はあるようですが、大方の部分において共通した仮説をお持ちのようです。
 金田一京助さんはアイヌ語と日本語は全く別のものだという学説を唱え、それが今でも主流派のようです。
 梅原さんはアイヌ語について学び、アイヌ語と古代日本語の共通点について色々と例を挙げ、金田一説を否定していきます。
 この問題について、後に別の対談集で深く論じておられるようです。
   
 アイヌは原日本人か (小学館ライブラリー) アイヌは原日本人か (小学館ライブラリー)  
  
  wikipedia:日本語の起源
  
 また、アイヌの倫理の基本は「うそをつかないこと」で、これはアイヌの宗教観からきているようです。
  
「ところが『古事記』の大和朝廷の日本征服の話は、全部うそをついてだました話です。」
「全部だまし討ちです。だまし討ちの思想が『古事記』の思想です。」
  
……と、日本すごい!の歴史改ざん主義者どもが聞いたら怒り出すような指摘も。
  
「政治力の一つの要素はだますことです。」
   
 確かに、今の日本の政治は嘘で塗り固めたような悪政を平気で行って国民もそれに麻痺して、嘘が当然のようになっています。
 その意味では確かに安倍政権は「日本の伝統」に忠実なのかと。 
  
第三章 原日本人のイメージ
 第二章の続きのような感じで、アイヌと沖縄人は日本人の人種的基底だという仮説を展開。
 日本語とアイヌ語はもともとは一つだったという仮説はウェゲナーの大陸移動説を思わせる仮説だと竹内は言う。
 アイヌ語を勉強している梅原さんがアイヌ語と日本の古語の共通点を色々と紹介。
 これはやはりアイヌ語を勉強してこそ分かる学説ですね。
 梅原さんの提案に対して、その後の研究はどう進展したのでしょうか。
 ところで、清水義範さんが
「英語の語源は日本語」
というテーマでパスティーシュ小説を書かれています。
(『蕎麦ときしめん』収録『序文』)
 その元ネタはこちらに当たるのでしょうか。
 清水さんは『隠された十字架』のパスティーシュも書かれていますね。
  
第四章 古代の視座
 今までの日本人の起源に関する話題から時代は少し下がって、『古事記』成立の謎に迫る。
 藤原不比等柿本人麻呂らが登場。生臭い勢力争いが絡んでいるという。
 柿本人麻呂が編纂した「原古事記」を藤原不比等が改竄したのが「現古事記」だという仮説。
 もちろん、聖徳太子蘇我氏の謎も。
 飛鳥・奈良時代はよく分かっていない時代なんですが、こういう仮説を知った上で見てみると面白くなりそう。
   
 wikipedia:柿本人麻呂
 wikipedia:藤原不比等
  
第五章 地球科学の発想
 竹内均さんによると、大天才の科学者の系譜は、
ニュートン
マックスウェル
アインシュタイン
だという。
 この章では主に地球科学について論じています。
 梅原さんが柿本人麻呂の遺跡を調べるために行った海中探査について多く論じられています。
 もう一度探査したい、竹内さんも一緒にやりませんかと非常に盛り上がっていましたが、その後どうなったのでしょうか。
  
竹内「(地球上の大陸は)どうも離合集散をやっていたらしいんです。集まってただ一つの大陸だった前には、いつごろ前か知らんけれども、バラバラだった時期がどうもあるらしい。プレ・ヒストリーから、プレ・プレ・プレといくような感じになってきた。」
  
 闘論 (1) 古代史への挑戦 (徳間文庫) 闘論 (2) 科学への挑戦 (徳間文庫)
  
 wikipedia:水底の歌
 wikipedia:梅原猛
  
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 梅原猛竹内均の対談
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