OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

南洋一郎編著の『十五少年漂流記』(ポプラ社)

 南洋一郎が翻訳した『十五少年漂流記』がありました。


池田宣政編著 古賀亜十夫 (イラスト)
(世界名作童話全集37 ポプラ社
1964年03月20日 第1刷
1988年11月30日 第64刷
   35字×12行×150頁

 なお、池田宣政南洋一郎の別名義の筆名です。
 南洋一郎ポプラ社のルパン全集で有名です。
 同じポプラ社の名作童話全集にジュール・ベルヌ十五少年漂流記』が収録されていました。
 ルパン全集では原作をかなり改変されていたようですが、本書では原作にほとんど忠実な縮約でした。
 対象年齢が小学校低中学年向きのシリーズということで、単語ごとに分かち書きした表記になっています。

例:「おそろしい 大あらしです。 山のような 大なみが、 あとから あとから、ごうごうと おしよせて きます。」


  人名の表記は
「ドノバン」「モコウ」「ワルストン」となっています。
「ウォルストン」でなく「ワルストン」だと、本当に悪そうで面白い。
 初版が1964年でありながら1988年まで出版され続けただけあって、今読んでもあまり違和感ない文体です。
 しかし、少しは古さを感じる表現があります。
 
「なんだい、 こいつは おもちゃかね。」
「どれどれ、 みせたまえ。」
 
「いえ、 にいさん、 ぼくを のらして ください。ぼくは、どんな きけんでもやります。 つみほろぼしの ために やります。」

「少年たちは、 いさましく たたかう けっしんを しました。銃と ピストルと たんけんを、 てんでに もって、 いまか いまかと まって いました。」
「水夫が きたら、 まっさきに おどりだそうと、 ゆうきりんりんと ドアの そばに かくれて いました。」

「わたしは わるい ともだちと つきあった ために、 わるい 人間に なった。 こうかいして、 ぜんにんに なろうと したが、 おそかった。」
 
……と、今読むとかえって新鮮な感じがする文体です。
 比べるのも変ですが、原律子さんのマンガのセリフを思い起こします。

 最後のワルストン一味との死闘では、原作ではジャックがピストルでワルストンを銃撃します。
 しかしさすがにそれはまずいと思われたのか、本書ではモコウが銃を連射し、逃げた海賊達が落とし穴に落ちて死ぬことになっています。
 
 しかし本作品ではドノバン一味を始め、少年たちは鉄砲を撃っています。
 日本ではこの年齢の少年達が銃を撃つことはほとんどありません。というか、大人ですら銃の実物を見たことある人は少数派ではないでしょうか。お国による違いなのでしょう。

 池田宣政先生は巻末「ご両親や先生方へ」を3ページ書かれています。

 フランスの原文と英語翻訳版の両方を参照して本書を訳したと書かれています。
 仏文学者だからオリジナル版を読まれるのは分かるのですが、英語版も読まれていたとは。戦前の文人はすごいですね。

「国籍や皮膚の色がちがっても、たがいに親しみあいたすけあうことのだいじなこと、それが、これからの人類の平和と共存と繁栄の源であり因子であることなどを、子どもさんが感得し世界平和の崇高な理想にむかって、自分をたかめすすめていくことになれば、本書の目的はたっせられることになると思います。」


 いいこと書かれていますねえ。
 しかし本書が出版されてから60年近くたった現在、その理想は達成できていません。
 むしろ分断は広まっているような。
 人類は一体どこで間違ってしまったのでしょうか。

(なお、本書の挿絵を描かれている古賀亜十夫さんも挿絵界のレジェンドとでも言うべき方です。
 大御所二人がタッグを組んだ格調高い名作文庫ですね。)

  [wikipedia:十五少年漂流記]

  [wikipedia:南洋一郎]

ブクログ  https://booklog.jp/item/1/4591002942
読書メーター  https://bookmeter.com/books/2185157
 
OLDIES 三丁目のブログ
 十五少年漂流記
  https://diletanto.hateblo.jp/entry/20080831/p1
 イラスト図解 十五少年漂流記 (絵でみる世界の名作)
  https://diletanto.hateblo.jp/entry/20080915/p1
 
さぶりんブログ
【読書録】まんがで読破 十五少年漂流記
  https://blog.goo.ne.jp/y-saburin99/e/ee12dc03b8f9f1acbe9d44de4097ef29
 
小人行
 十五少年漂流記感想
  http://xijingzi.blog.fc2.com/blog-entry-72.html
 
オヒ!の殿堂3
【児童文学】十五少年漂流記と動画化した瞳の中の少年 2013-04-23
  http://www.nanzo.net/ohi3/post_1d87.html
【児童文学】続・瞳の中の少年~十五少年漂流記 2013-05-09
  https://www.nanzo.net/ohi3/post_603b.html
【児童文学】続々瞳の中の少年~十五少年漂流記:学んで楽しい学習まんが編 2013-05-21
  https://www.nanzo.net/ohi3/post_49b5.html

【アンケート実施中です!ご協力お願いします!】
地球の温暖化を実感しますか?(2022年7月~9月調査)
  https://blog.with2.net/vote/v/?id=233749
黒い色以外のパソコンを使いたいと思いますか?
  https://blog.with2.net/vote/v/?id=233333
あなたは速読ができますか?
  https://blog.with2.net/vote/v/?id=231449

        
         ↑人気blogランキングにご協力お願いします。m(_ _)m
         
↓また、ご意見ご感想・ブックマークなど頂けましたら励みになります。
 コメントやはてなスターもお待ちしております。m(_ _)m