●シェークスピア物語 ラム姉弟/作
永井鱗太郎/文 谷俊彦・中村英夫/絵
100ページほどの分量で7作品が紹介されています(オリジナルの『シェークスピア物語』は20編あるそうです)。
シェークスピア作品は西洋文化の基礎的素養となっています。
膨大なシェークスピア作品を100ページほどで読めるとは、子ども達にとってもいい機会であるし、忙しくてなかなか読書時間が取れないサラリーマンにとってもいい機会であります。
実際に読んでみると、ダイジェスト感がすごくて少々物足りない感があるのですが、読書対象として想定されている子ども達にとっては良い読み物となっているのではないでしょうか。
ラム姉弟のシェークスピア物語が原作とどれくらい違うのか、はたまた本書の訳し方がラム姉弟の原書とどれくらい違うのか、読み比べてみるのも通の楽しみと言えるでしょう。
【ハムレット】
一番長い分量でたっぷりと描写されています。
登場人物も多いしドラマチックな展開で読み応えあります。
しかし、冒頭に重すぎるのでは?
最初に軽い喜劇でトリに重い悲劇の並びの方が読みやすい気がします。
【ベニスの商人】
最後の判決は一休さんのとんち話風で痛快なのですが、よく考えると屁理屈の気もします。
アメリカは訴訟社会で電気製品の取扱説明書に細々と注意事項を書かないと訴訟されるということを聞いたことあります。外国ではこんな風に法律の裏側のかきあいをするという風潮があるのでしょうか。
しかし、衣食足りて平和な時代に読むと、シャイロックに対する判決はあまりにも過酷過ぎるような気がします。
100%勝つと相手に恨まれるので少しは相手に花を持たせるのが良い交渉だということも聞いたことあります。
読書ノートで上松行雄先生が
「シャイロックの立場になるとどうでしょうか。ちょっとかわいそうですね。」
と書かれています。
昔の少年少女向け翻訳では原作の改変がよく行われていたようです。
シャイロックの全財産没収ではなくてほどほどの判決にしてアントニオ達と和解するといった改変をしたバージョンなんかあったのでしょうか。
また、最近はユダヤ人蔑視の風潮はなく、というより、ユダヤ人が力を持っている時代です。
これからの時代こそ、シャイロックと和解する改変が登場するかもしれません。
【リア王】
色々な人物が登場して色々な事件が発生します。
最後にコーデリア姫率いるフランス軍はブリテン軍に敗北しコーデリアもリア王もケント伯も死に、悪人達も仲間割れしてほとんど死んでしまいました。歴史の目・長い目で見れば勝者も敗者も善人も悪人もいずれ死ぬということを表しているのでしょうか。
シェイクスピアはドラマ作りが上手いですね。基礎的教養として読んでおくべき作品だと思います。……と言いながら私も今回これが初読です。ダイジェストながら死ぬ前に一度は読めて良かった。
読書ノートで上松行雄先生が
「「リア王」をシェークスピア劇の最高峰だ、という人がいます。深くたくみに、人間の心のすがたを描き出しています」
と書かれています。
確か私が小学6年生の頃、芸術鑑賞の授業として学校の体育館に人形劇団が来て鑑賞したことあります。その時の上映作品は『リア王』でした。最後にリア王とコーデリア姫が和解してめでたしめでたしで終わりました。後で『リア王』のあらすじを調べると、まるっきり正反対のアンチハッピーエンドだったと知って驚いたものです。まあ子ども向けに文学作品を改変するのもいいことででないでしょうか。その違いを比べて楽しむという余裕が必要です。
【マクベス】
反乱軍を鎮圧して引き上げる途中、マクベスは三人の魔女に会い不気味な予言をされ、その後の人生を翻弄され転落していきます。
魔女に会ったことがケチのつき始めだったわけです。しかしなぜ魔女に会ったのでしょうか。
これがおとぎ話だったら、何か悪いことをしたためにこうなった、という因果応報の理由付けがされることが多い。
しかし本作では特に原因はありません。いきなり不条理に巻き込まれるという不条理な展開です。
(なお私はラム姉弟のオリジナル版やシェイクスピアのオリジナル版は未読です。それらの版では理由付けがされているかもしれません)
我々はマクベスの失敗に学び、今後の人生の教訓とすることができるでしょう。
特に私は占いとか予言とかに弱いので余程注意しないといけません。
【あらし】
これはまた悲劇の作品とは違ってほのぼのまったりとした楽しい作品です。
ミラノの領主プロスパローは弟に裏切られて島流しになりましたが最後には和解します。最後まで戦って屍累々となる『リア王』や『ハムレット』や『マクベス』とは違った世界観です。
プロスパローの孤島での生活でも、魔法の本に囲まれて魔法の研究をして妖精を使いこなすというファンタジックな生活です。私は対人恐怖症なので山の中のポツンと一軒家という生活にあこがれているのですが、プロスパローは孤島の一軒家生活です。そっちの方が楽で楽しそう。
【真夏の夜の夢】
三谷幸喜さんの喜劇みたい。
悲劇も描くし本作のような喜劇も描くシェークスピアはすごい。
で、シェークスピアの正体については謎が多く、別人説だとか作家集団説もあるそうです。
【冬物語】
本作も『リア王』のような悲劇で終わりそうな感じでしたが、最後に和解してハッピーエンドに終わりました。
シェークスピアの作品もワンパターンではなく、色々なバリエーションがあるのです。
西洋文化でシェイクスピアとは大きな地位を占めています。今回その一端に触れることができました。
シェイクスピア作品はまだ他にも沢山あります。
シェイクスピアの四大悲劇は『ハムレット』『オセロー』『マクベス』『リア王』といいます。
四大喜劇というのもあるようです。
私は『オセロー』はまだ未読です。
原典で読めないのならラム姉弟版で読むのも一方です。
[wikipedia:チャールズ・ラム]
[wikipedia:メアリー・ラム]
[wikipedia:ウィリアム・シェイクスピア]
[wikipedia:シェイクスピア別人説]
[wikipedia:永井鱗太郎]
[wikipedia:福原麟太郎]
[wikipedia:谷俊彦]
さらり徒然草紙
入門編にはちょうどいい? ラム姉弟の『シェイクスピア物語』
http://sara-text.cocolog-nifty.com/turedureblog/2021/01/post-56b36f.html
劇場通いの芝居のはなし
次に四大喜劇です。
http://plaza.rakuten.co.jp/kamizawak/diary/201712070000/?scid=we_blg_tw01
かえるさんメモ
『はじめてのシェイクスピア 四大悲劇・喜劇・史劇を楽しもう!』
https://ameblo.jp/silverground/entry-12219890217.html
完訳も読んでみたい『ハムレット』
https://diletanto.hateblo.jp/entry/20150427/p1
パズル的展開と演劇的構成が面白い『未来世紀シェイクスピア』
https://diletanto.hateblo.jp/entry/20090201/p1
●ブクログ https://booklog.jp/item/1/B000JBQ356
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