OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

大ロマンの復活【地球盗難】海野十三


【あらすじ】
 山中の寒村・矢追村に夏の休暇をとっていた大隅理学士は河村武夫少年の失踪事件に遭遇する。
 捜査を始めた大隅理学士はやがて村外れに厳重なる秘密研究所を建設して謎の研究を続けている辻川博士の陰謀を知る!秘密研究所に潜入を試みる大隅であるが味方の佐々砲弾と共に囚われの身となるのであった!!
 ロケットに乗せられ宇宙に追放される佐々!謎の生物ウラゴーゴルの正体は何か!?果たして無事結末を迎えることができるのであろうか!?


【感想:風呂敷広げ過ぎ!しかしこれくらいの元気があれば良し】
 
 何だか話が広がり過ぎて伏線回収も不十分な気がしますがこれくらいの元気があれば面白いものです。
 しかしあまりに急に終わり過ぎてちゃんとした説明がほしいところです。
 
 タイトルの【地球盗難】は、悪のウラゴーゴル星人が地球ごと人類を引き寄せていたという意味なんです!なかなか面白い発想なんですが、余りにも無茶ではないでしょうか。
 地球を軌道ごと引き寄せると、太陽との距離も変わってしまって地球環境は激変するのではないでしょうか。月はそのまま引っ張っていくのでしょうか。
 その地球ごと盗難を企んでいるウラゴーゴル星人は何で地球上の特定地域の生物を巨大化するのでしょうか。この意味のない行為の意図が分かりません。地球人を奴隷にするつもりならどうせなら巨大化させるより小さくする方が理にかなっていると思うのですが。
 ウラゴーゴル星人と辻川博士の関係もよく分かりません。辻川博士はウラゴーゴル星に研究所ごと移住しますが、どうもウラゴーゴル星人を怒らせたようです。その後どうなったのでしょうか。佐々砲弾が無事地球に送り返された理由も分かりません。
 本当は佐々が地球に戻って来て説明してほしいところですが、なぜかその前で終わっています。
 後は読者が考えよとのことでしょうか。
 
 最後、大隅理学士が辻川博士研究所跡地を訪ねると、何と河村武夫少年とお美代が同居していました。お前らまだ子供で親と同居してたはずやないか!何で所帯持っとるんや!!

 一年前に辻川博士はドクトル・シュワルツコッフの船と荷物の交換をしました。その荷物が何だったか結局よく分かりませんでした。

「この邸から船へ搬んだ品物というのが、たいへんな品物なんだ」
「そいつは袋の中に入っていた。グニャリとした品物さ。その中身を知っているものは俺ばかりだろう。俺はソッと開けてみて愕いたものだ」
「それはネ……それはこうなんだ。辻川博士の……」
とここまで言って河村武夫の父は辻川博士に殺されます。この時大隅理学士も殺されていれば話はそこで終わりでした。思えば辻川博士は大隅理学士を殺害する機会はいくらでもありましたが、それを言っちゃおしまいです。
 それにしても、河村さんが運んだ物体は何だったのでしょうか。
 私は
「辻川博士の妻の死体」
ではないかと思うのですが、皆さんはどう思われますか?


 
 それにしても辻川博士は悪人ですが、大科学者には違いありません。ソ連ガガーリンアメリカの月着陸の前の時代に個人的にロケットも製造しています。腕力も強くて、大隅理学士にも佐々砲弾にも河村父にも肉弾戦で三連勝しています。
 そして誰か(シュワルツコッフ博士?)と定期的に交信しています。

>と云った言葉は、意外にも日本語ではなくそれは世界語の称あるエスペラント語だった/

……と、大隅理学士もエスペラントが分かるようです。当時の知識人はエスペラントを使うというイメージがあったのでしょうか。

 そんなこんなこと色々あって、シュワルツコッフ博士まで訪ねてきます。お前、ドイツにいたんやなかったんか!近くに住んでたんかいな!!

 ウラゴーゴル星人は地球盗難をあきらめたようで、結局ウラゴーゴル星は再び地球から離れていき、謎の生物巨大化現象は収まりました。しかし人類は再びの侵略に備え、世界各地における戦争も無期休戦に入りました。

>「われわれ地球に棲息する人類は、骨肉相食あいはむ闘争を即時中止し、全人類一致団結して、やがて侵入して来ようとするウラゴーゴルに対する戦闘準備を考究しなければならぬ。さもなければ、この次こそ、わが地球は八十億年の名誉を傷けられ、かのウラゴーゴルの奴隷とならねばならないであろう」
 ――と欧州の盟主ヒットリーニ氏は、国際放送をもって、世界の全人類に呼びかけたほどである。/
 
 欧州の盟主ヒットリーニとはまたすごい名前です。ヒットラームッソリーニを合わせたような名前です。当時の日本はこの二国と友好関係にあったのです。
 

図書カード:No.1258 地球盗難
  https://www.aozora.gr.jp/cards/000160/card1258.html

ブクログ
  https://booklog.jp/item/7/001258
  https://booklog.jp/item/1/B009IY0XHE
  https://booklog.jp/item/1/4257760729
読書メーター
  https://bookmeter.com/books/5747415
  https://bookmeter.com/books/12328795
  https://bookmeter.com/books/139797


[wikipedia:海野十三]

「海野十三」の検索結果 復刊リクエスト一覧



 以上、桃源社の単行本【地球盗難】(1976年)に収録されていた三作品を読みました。
 この本、複数の表紙絵のバージョンがあるようですね(検索してみて下さい)。
 ちなみに私が古本屋で購入した版は、ギャンのような巨大ロボットとUFOが描かれている版(1976年)でした。こんなシーンなかったで!

ブクログ
  https://booklog.jp/item/1/B000JAMCJ8
読書メーター
  https://bookmeter.com/books/2435191


探偵小説三昧
 海野十三『地球盗難』(ソノラマ文庫
  http://chapcolo.blog97.fc2.com/blog-entry-715.html
 海野十三『地球盗難』(桃源社
  http://chapcolo.blog97.fc2.com/blog-entry-457.html


OLDIES 三丁目のブログ
 海底大陸 海野十三
  https://diletanto.hateblo.jp/entry/2024/06/16/195551
 水空両用・潜水飛行艦の活躍!【怪鳥艇】海野十三
  https://diletanto.hateblo.jp/entry/2024/07/08/203618

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