町田忍・串間努・初見健一という方々はサブカル系レトロなテーマの著書が多いようなイメージがあります。
レトロな児童書についてHPやブログで読書感想文を書いている私としては目標とするべき方々ではないかと思います。
ということで、初見健一さんの児童書回想本を読んでみました。
本書には色々な本が回想されています。健一少年はご母堂様が読書家だったようで、その影響で色々な本に巡り合う機会が多かったようです。
それと比べると私はほとんど読んでいないですね。私は子ども時代はよく読んでいたと思っていたのですが、それほどではなかったんだと実感します。私に本書のような本を書くのは無理でしょう。
それに読んだとしても忘れています。
本書では『船乗りクプクプの冒険』を始め北杜夫さんの著書が何冊か紹介されています。
『船乗りクプクプの冒険』については確か進研ゼミで例文として一部が引用されていて、面白そうだと思っていたところ、古本屋で見つけたので購入した覚えがあります。何度か読み返した記憶があるのですが、内容については今ではすっかり忘れています。
『船乗りクプクプの冒険』を始め北杜夫さんの著書を読みたくなりました。
また、初見さんは読書に関する人生の思い出話に恵まれています。
幼稚園の面接試験の時に読んだ本だとか、小倉さん&小栗さんコンビがリーダーをしていたボーイスカウトだとか、友達の教育ママに絵本を読み聞かせてもらった話など、いい読書環境に恵まれています。
私など交流関係が少なく一人で寂しく本を読んでいた思い出しかありません。
松谷みよ子さんの「直樹とゆう子の物語」シリーズについては初めて知りました。
『ふたりのイーダ』『死の国からのバトン』『私のアンネ・フランク』『屋根裏部屋の秘密』『あの世からの火』の5冊。それぞれ原爆、公害、ホロコースト、七三一部隊、引き揚げ体験などをテーマにしていて「反戦文学」「反権力文学」「告発童話」と分類されるらしい。
そんなシリーズがあるのなら読んでみたかった。私も全く不勉強でした。
(もし私がこの先オイルショックドクトリンを生き延びて憲法が改悪されずに言論の自由が保証されていてブログを続けることができた暁には読んで感想文を公開させて頂くつもりです)
本書の各所で初見さんは戦後民主主義文学教育について批判されています。
例えば小松左京『宇宙人のしゅくだい』の項目ではこう書かれています。
「こういうタッチのSF作品は、当時のマンガや各種特撮映画、とりわけその傾向が強かった『ウルトラセブン』などで育ったぼくら世代には、ごくありがちな「ベタ」なものなのだが、若い人が読めば「左派偏向教育の産物!」といった印象を受けるのかもしれない」
「七〇年代の子どもたちが読んできた児童書をまとめて読み返して思うのは、当時の児童文学がひとつの大きな「使命」として取り組んできた「戦後民主主義」教育や「反戦」教育は、やはり多くが「失敗」してたのかもなぁ……という、なんともトホホな徒労感なのだ」
「当時のいわゆる「反戦文学」を読み返してみると、「これで子どもたちの心を動かせると本気で思ってたのかな?」と不思議な気持ちになってしまう。つまり、あんまり言いたくないけど、圧倒的に「つまらない!」ものが多いのだ」
とする一方、サブカルチャーには好意的です。
「その点、当時のマンガやアニメ、SF小説、特撮映画などに類する作品、つまり、かつては文学と教育の側から蔑まれてきたサブカルチャーに属する作品は、よっぽど「失敗」を逃れている」
……と、初見さんの見解では『宇宙人のしゅくだい』も成功したサブカルチャー作品の一つだそうです。
高木敏子『ガラスのうさぎ』の項目ではこう書かれています。
「正直、作品全体の印象としては「またこういう話か……」だった。
ひどい感想だが、当時の僕らは、あまりにも「こういう話」をあてがわれすぎていた。もう「こういう話」に慣れきってしまっていたのだ」
「「気分」だけで平和が実現できるのであれば、「祈り」だけで戦争が回避できるのであれば、戦争とは天罰のようなものか、人知の及ばぬ理屈で人類に災いをもたらす大古の邪神のようなものだろう。いわば『ゴジラ』だ。
子どもとしては、『ゴジラ』がどこから来るのか、なぜ来るのか、どうすれば倒せるのかを教えてほしいのである。そこはなぜか曖昧になっているのが、当時はどうにも納得できなかった」
……ということなどつらつらと書かれているのですが、私にはよく分かりません。
初見さんが斎藤隆介『ベロ出しチョンマ』が表紙を見るだけで今でもゲンナリするほど大・大・大嫌いだった理由について
「僕らが子ども時代に学校や先生たち、また各種「教育的」メディアといったものに対して、ずーっと感じていた「抑圧感」に対するルサンチマンなのだろう」
と書かれています。
私は世代的には初見さんより少し若い世代になるはずですが、初見さんとはまるっきり逆で、当時の反戦教育を積極的に受け入れるようなタイプでした。
だから初見さんがうんざりしていたような反戦小説や反戦映画を受け入れて「悲惨だ」「残酷だ」「やっぱり戦争はあかん」「絶対に軍国主義はあかん」……と、意図された通りの感想を持ちました。中沢啓治『はだしのゲン』*1 も受け入れて読んでたし。
いわば「純粋真っ直ぐリベラルくん」・戦後民主主義反戦教育の優等生です。
というか率直過ぎるのか、文脈に沿って期待通りの反応をしてしまうタイプだったのでしょう。
だから日曜早朝にラジオで放送される宗教番組の寸劇に
「ええ話やなー」
と率直に感動したりしました。
民主主義擁護・軍国主義反対という譲れない原則を外して見た場合、多分道徳の教科書に載ってるような教訓的な訓話にも率直に感激するタイプだと思います。
しかしそういう単純で率直過ぎる優等生的性格は、文筆家として弱点になっているのかもしれません。私が長年ブログやHPを書いていても一向に芽が出ないのは、そういう優等生的性格が鼻に着くためなのではないでしょうか。
文筆家として大成するには初見さんのように反戦教育に対して反発するようなセンス・いわば悪ガキ的センス・不良的センスが必要で、そういうセンスが面白みを出して売れる文章を生み出せるのかもしれません。
しかし思うに、第一次安倍政権で教育基本法が改悪され、それ以降は道徳が教科化され、軍国主義的な教育方針が広まっています。大っぴらには認めていませんが、教育勅語や大日本帝国憲法への回帰の方向性があるはずです。
その成果か、若い世代にはお上を批判することが悪いという風潮が広まっているようです。
2026年2月の高市自民党が圧勝した衆院選では、政権を批判する野党が議席を減らし、批判しない野党が議席を増やすというような独裁的な結果となりました。戦後民主主義教育は民主主義の継承に失敗したのです。
このようなお上への批判を許さない独裁的な教育体制下においても、かつて初見さんが見せたような反発心を持つ子供が存在しているのでしょうか?「道徳なんて馬鹿らしい」と反発するような子どもが将来の文筆家として育っているのでしょうか?
いやそもそも現在は動画サイトではヘイト的・排他的な動画が人気ですから。
いつの時代でも優等生的な言説は人気がなく、攻撃的な言説が力を持つものです。
……と、つい日頃の問題意識が出てしまいました。
初見さんのエックスを見ると、むしろリベラルな問題意識を持たれている方のようです。
ということで今後も言論の自由が続く限り、つまらない優等生的センスを持つ私も初見さん目指して文章修行に励んでいきます。
●ブクログ https://booklog.jp/item/1/4903175723
●読書メーター https://bookmeter.com/books/12145504
[wikipedia:初見健一]
“懐かしがり屋”ライター・初見健一のweb site
東京レトロスペクティブ
http://tokyoretro.web.fc2.com/index.html
公式エックス https://x.com/ken1hatsumi
マンデラ効果か勘違いか?
「ファンタゴールデンアップル」の謎
/初見健一・昭和こどもオカルト回顧録
https://web-mu.jp/column/7949/
↑
ファンタゴールデングレープは放置された古い自動販売機で見たことあります
森永チョコベー(シール付き)
https://youtu.be/8IrKWewza9M
↑
『ちいちゃんのかげおくり』の項目で言及されていたチョコベーのCM
[wikipedia:松谷みよ子]
[wikipedia:ガラスのうさぎ]
[wikipedia:斎藤隆介]
[wikipedia:町田忍]
串間努 https://coconala.com/users/4384573
“チンチン電車紀行 阪堺電車”
https://diletanto.hateblo.jp/entry/20071117/p1
“姫路モノレール 未来の残骸”
https://diletanto.hateblo.jp/entry/20110523/p1
“町田忍の昭和レトロ紀行 大阪市平野区に登場”
https://diletanto.hateblo.jp/entry/20110529/p1
“小松左京の子ども向きほのぼのSF童話【宇宙人のしゅくだい】”
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2024/05/03/202516
↑
私が書くとこうなります。やっぱりこれじゃダメだなあ
ポルノ小説風純文学【伊豆の踊子】 イラつく川端作品
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2026/04/08/060744
↑
あの川端康成の名作を「まるでポルノ小説だ」と批判するセンスは持っています
超世界への旅 日本のSF短編集
https://sfklubo.net/vojagoallatremondo/
↑
日曜朝にラジオ放送されていた宗教番組の思い出に触れています
学研物語日本史9 ◆ききんと一揆 水戸黄門より大塩平八郎を知ろう!
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2025/12/06/064616
↑
高校生の頃は、現代社会の先生がドラマ『水戸黄門』を批判する意味が分からない単純まっすぐ君でした。
日本の戦後民主主義は作り笑顔の嘘つき仮病女に騙される程度だったのであろうか
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2026/02/03/203707
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*1:本書には掲載されていませんが、初見さんは『はだしのゲン』についてどう思っているのか知りたく思います







