青空に白いパラシュートが、ぱつ、ぱつと、花ひらいて、ふうわりういています。と、ふいに、頭の上を、さあっと白い光が走って……そのあとの記憶が、はっきりしません。ふしぎなこと。あとから考えると、爆心地から二キロの駅ちかくで、あんなもの見ることがあったろうか……。わたしは、大きな虹を見ました。
早船ちよ・作 太田大八・絵
原爆児童文学全集8 1985年4月 汐文社
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【あらすじ】
1985年8月6日午前8時。山中のサマースクールでは原爆犠牲者追悼のための朝礼が開かれた。シンドウ先生がユージを始めとする子ども達に原爆の怖さを説明する。
その日昼過ぎ、ユージの父・武志がサマースクールに紙芝居を持ってやって来た。40年前に経験した学童疎開中の出来事を紙芝居にしたのである。
国民学校三年生の武志少年は学童疎開のため、家族から離れて山の中の寺で暮らすことになりました。約30人の子ども達を率いるのは、若い中谷強先生と、絵のうまい優しい清水幸枝先生。
当初は空襲のない日常を送っていましたが、やがて戦火が激しくなり、原爆が落とされた後は悲惨な被爆者が運び込まれてくるのでした。
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北原尚彦さんの【実はSF含有率が高かった「原爆児童文学集」】を読んで、私のHPでは北原さんが紹介された「原爆児童文学集」のSF作品の全巻読破に取り組んでいます。
20世紀少年少女SFクラブ
魔法のぶた (原爆児童文学集 12) 司修
https://sfklubo.net/magia_porko/
紀元55年のユ-トピア (原爆児童文学集 14) 梅原賢二
https://sfklubo.net/utopio/
十三人いた!核爆発後のクローズドサークルサバイバル!!【地下別荘の十日間】
https://sfklubo.net/subtera_nuklea_sirmejo/
SF以外の作品も読んでみようと思いました。
早船ちよさんといえば、『キューポラのある街』が有名です。
初見健一さんもしっかり読んでいました。
『昭和こども図書館』を読んで思う
「優等生的センス」と「悪ガキ的センス」
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2026/04/10/210223
『キューポラのある街』は1970年代の読書好き・映画好きな子どもなら知っておくべきだった基礎教養的作品でしょう。
しかし残念ながら私には文学と映画の基礎教養が欠如しているのです。その罪滅ぼしのために、本巻を借りてきました。
本作品は直接に原爆体験を描くのではなく、40年後に紙芝居を通して間接的に描く構成がうまいと思います。
紙芝居が演じられるサマースクールの人々の関係もユーモラスに描かれ、読者対象とされる子ども達も本書の物語にスッと入っていきやすいと思います。
紙芝居はユージの父・武志の少年時代の視点で描かれます。
学童疎開で山の中の寺で共同生活をします。
寺の和尚が筧を作ってくれて大勢が一度に顔を洗えるようになったり、畑を開墾したり崖に穴を掘って防空壕を作ったりする日々。
一度逃走して家に帰ろうとした六助がまた脱走していなくなった。
清水幸枝先生が連れ戻しに行って、そこで原爆に被爆。
赤ん坊や両親と死別した少女も連れて何とか寺に戻ります。
見知らぬ子供を助けるシーンは、『魔法のぶた 』でもありました。こちらは主人公が助けられる子どもの立場です。
極限状態の助け合いを描くモチーフです。現実にもよくあったのでしょうか。
しかし赤ん坊は死んでいて、少女(みこ)も数日後に原爆症を発症し、顔中の穴から血を吹き出し血を吐いて死にました。
清水先生もしばらく絵を描きながら療養していましたが、やがてみこと同じ状態となって死亡しました。

紙芝居が終わってから、子ども達は聞きます。
「なぜ、戦争をしたの、なぜ?」
事情を知らない人なら誰でも思う疑問でしょう。
私が子どもだった頃も、子ども達が戦争の話を聞いた後にはそう考えていた子がほとんどだったと思います、いや思いたい。
日本の社会も、戦争を体験した世代が中心だった頃は、戦争はいけない、再びしてはいけない、という考えが主流だったと思います、いや思いたい。
しかし世代が交代して戦争を知らない世代が中心となった現在、好戦的な意見が主流となっているように思います。日本初の女性首相となったあの方もかなり好戦的な立場です。
G7サミットでも一人だけ空気を読まずに「中国包囲網」を主張して大騒ぎしていたようです。
G7サミットで一人“中国包囲網”に狂奔した高市首相の“独り相撲”。
それを報じぬ記者クラブ大マスコミの堕落
https://www.mag2.com/p/news/678906
再び戦争をしてはいけないと誓ったはずの日本で再びこのようなカルト軍国主義の首相が出現。
日本はもはや「軍国主義」の状態ではないでしょうか。
そしてマスゴミもそのような「軍国主義」に忖度しています。
我々良識ある国民は、
「なぜ、戦争をしたの、なぜ?」
という疑問を思い出すべきではないでしょうか。
そうでないと再び同じ戦争を繰り返すことになるでしょう。
冒頭に引用した原爆爆発直後に現れた虹は、山の中で子ども達も見ていました。

道路の左がわ、ま南の空に、入道雲がむくむくとわきあがる。――と、みるみる、雲はピンク色にそまり、ホワイトがかったオレンジにかがやき、やがてホワイト、くすんだ黄色にかわる。
――やあ、きれいな虹。でっかい虹じゃ!
――絵のようじゃ! ヒロシマの空は。
子どもたちは、あっけにとられてながめている。――空いっぱいの虹。
この虹については、どういう物理現象なのでしょうか。チェレンコフ光のような原子物理にかかわる現象なのでしょうか。
集団疎開を指導していたもう一人の先生・中谷先生は敗戦後も教師を続けましたが白血症になり、長い間苦しんだ後で奇跡的に回復。教師を辞め被ばく者のための仕事をしながら戦争体験を話すボランティア活動をしています。
今回も紙芝居を聞きにやって来ました。
中谷先生の目には、虹が、はっきりと見えます。
虹は、あやしい美しさで、とつぜんあらわれ、たちまちゆがんで、こわれました。
――知らんということ=無知ほど、こわいもんはない。真実をきわめよう。なぜ? ときけ。なぜ、なぜ? と問いつめようね。

さて本作品のタイトルは『虹』。抽象的なタイトルです。
被爆体験の物語のタイトルが何で『虹』なのでしょうか。
本作品中での「虹」の表れ方を見ると、否定的な深い意味が込められているように思えます。
早船ちよさんのあまり知られていない作品『虹』ですが、もっと知られるべき作品だと思います。(20260622)
●ブクログ https://booklog.jp/item/1/4811370074
●読書メーター https://bookmeter.com/books/2519006
早船ちよ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A9%E8%88%B9%E3%81%A1%E3%82%88
太田大八
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E7%94%B0%E5%A4%A7%E5%85%AB
↑
挿絵の太田さんは間一髪で原爆から助かり、被爆直後の惨状も目撃されたようです。
そのため本書の挿絵はシンプルながらリアルです。
(26年7月4日追記)
「虹」というと、かつて虹を見て地震予知をされた方がいたそうです。
結局その虹は他の人には見えないのでインチキだとされたそうです。
しかし一般人には見えない波長の虹で、その方が特殊体質でその虹を見ることが可能だったということはあり得ないでしょうか?
この件についてもいつか調べようと思っています。
地震予知86%。実は地震予知は80年前に出来ていた、、、のに歴史から消された偉人。
https://tashikamero.hatenablog.com/entry/2016/12/24/231343_1
椋平広吉
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A4%8B%E5%B9%B3%E5%BA%83%E5%90%89

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