OLDIES 三丁目のブログ

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エドガー・アラン・ポー『黒猫』ラストの謎(ネタばらし注意)

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の使用テキストの感想文です。

 無料で速読トレーニングを随分長い間サボってきた。
 夏の暑い間ずっと休んできたことになる。
 性格にムラがあるようだ。
 また再開してコツコツとやっていこうと思う。
 
 今回テキストに選択したのは『黒猫』。
 いわずと知れたポーの代表作である。
 
 私は小中学生の頃、ドイルより早く推理小説を書いた作家ということで、ポーという作家を尊敬していた。
 シャーロック・ホームズオーギュスト・デュパンについて作品中で批評している。
 ワトソンが好意的に取り上げたのを否定するという、否定的な文脈だったように思う。
 
 そしてこの『黒猫』だが、今読むと、動物虐待ホラー小説である。
 最初、幸せに暮らしていた夫婦と飼い猫の黒猫だったが、男が酒乱になったために悲劇の結末を迎えるのである。
 酒とはこんなに簡単に人を変えてしまうのか、或いはこの語り手の男が精神的に弱かったのか。
 幸せな家庭がこんなに簡単に崩壊してしまうのが驚きである。
 
 それにも増して異様なのは、この物語の結末である。
 男が妻の死体を隠すために地下室の壁に塗りこめる。
 警察が家宅捜査を行い、地下室を調査。
 調査は終わり、ほっとした男は何でもいいからしゃべりたくなり、
「この壁は丈夫なんですよ」
と言って壁を叩くと、壁の中から声がする。
 声の主は黒猫。男は猫を妻と一緒に壁に塗り込めていたのである。

  黒猫 (集英社文庫) ポー怪奇・探偵小説集(1) (偕成社文庫3122)
 
 この結末、小学生か中学生の頃に最初に読んだ時、どうしても納得できなかった。
 猫がいきなり壁に塗り込められていたという設定が唐突過ぎたのだ。
 
 妻を壁に隠した後、男は猫を探すがいなくなっており、ほっとしたという記述がある。
 だから男は壁に猫を塗りこめたことに気付いていないはずである。
 しかし、いくら妻を殺害した直後の男が気が動転していたといっても、猫を一緒に塗りこめたのに気付かないわけがない。
 この時点で私は、猫が壁に塗られた、という可能性を否定してしまったのである。
 そんなトリックがあるはずない、というわけである。
 
 しかも、警官が家宅捜査に来たのは妻殺害後の4日後である。
 猫は壁に塗りこめられてから4日間生きていたことになる。
 こんなことはありうるのだろうか。
 そもそも、壁に塗り込められてから4日間も生きていられたということは、男に
壁に塗られそうになった時、逃げることができるはずである。
 
 確かに、トリックの謎あかしとしてはありうるかもしれない。
 しかし、理論的に考えてあまりにも常識を逸脱しているため、ここら辺の展開に、矛盾が感じられて納得できないのである。
  
 だから私はこれを読んだ頃、
「死んだ猫が生き返ってテレポーテーションして壁の中に入った」
SFではないか、と思っていたのである。
 今読んでもこの結末は納得いかない。
 同じように納得できない方はおられるだろうか。
 
 モルグ街の殺人事件 (岩波少年文庫 (556)) ポー怪奇・探偵小説集(2) (偕成社文庫3123)
 

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