森鴎外『最後の一句』とは孝行な娘が死罪となった父親の命乞いをする物語です。
この作品は中学校の国語の教科書に載っていてその時に学習しました。
今回読み直してみて、当時の読み方に誤解があったのではないかと思いました。
私は当時、桂屋太郎兵衛が助命された代わりに命乞いをした子供たちが死罪になったのだと思っていたのです。
その根拠は、子供たちを取り調べしている佐々又四郎が
「身がわりをお聞きとどけになると、おまえたちはすぐに殺されるぞよ。父の顔を見ることはできぬが、それでもいいか」
と言っていたこと。
そして最後に
「桂屋の家族は、ふたたび西奉行所に呼びだされて、父にわかれをつげることができた」
と書かれていること。
私は父に別れを告げた後に死罪になったのだと思っていたのです。
しかし今回再読してみて、子供たちは本当に死罪になったのかと疑問に思ったのです。
検索してみると果たして、子供たちは死罪にならず助けられたというのが正しい解釈だと知りました。
一体何でこんな誤読をしていたのでしょうか。
当時の私にとって森鴎外の文章は理解しにくかったのでしょう。
森鴎外の文章は簡潔で素っ気なく無味乾燥で、筆者の考えを極力入れず客観的に淡々と描かれています。
小説というより公文書を読んでいるようなイメージです。
私の場合、何かを書くときは思い入れが強く過剰になる傾向があります。これでもかこれでもかと何度も同じようなことを表現を変えて書き連ねます。
だから読む文章も大事なことはそのように過剰に繰り返してくれないとスルーして読解できないのだと思いました。
森鴎外の文章は必要最小限のことを的確に簡潔に記します。
よって行間を味わうつもりでじっくりと読まないと肝心なところを読み落としてしまうのではないでしょうか。
『最後の一句』でも、最後に大嘗会についてくどくどと書かれていますが、ここは中学生の私にはまどろっこしくて読み飛ばした部分でした。
これこそ「速読」ではなく「熟読」が必要な文章なのです。
また、私は「権力者悪玉史観」というものを持っています。権力者は一般庶民のことを考えずに権力の維持を第一に考える、というようなものです。
例えば、農民からは重い年貢を取り立て、悪徳商人からは賄賂を受け取って
「おぬしも悪よのう」
と言っているようなイメージです。
いちの言い回しを使って言うと
「お上の事には信用できませんから」
ですよ。
よって当時も取り調べをする佐々又四郎を最初から偏見を持って批判的に見ていたのでした。
佐々に関してはいちの最後の一句に対して
「驚愕の色が見えた」「けわしくなった目」「憎悪をおびた驚異の目」
という描写が見えます。また、
「生い先の恐ろしいものでござりますな」
という発言も見られます。
権力者悪玉史観に立って見ると、佐々はいちの態度に反抗的なものを感じ、将来お上に対して反乱や革命を起こしかねない、と危惧したのだと考えました。
そういう反乱分子になりかねない危険人物は今のうちに抹殺しておかねばならない、と思ったと私は思ったのです。だから生意気な革命家の卵・いちは処刑されたのだ、と。江戸時代の白バラ運動弾圧事件です。
今回再読して中学以来の誤読にようやく気付いて良かった。
それにしても中学の国語の授業では、最後に子どもたちが本当に殺されたのか助かったのか言わなかったように思います。
それは自明のことなので国語の先生としては言う必要を感じていなかったのか、それともあえて言わなかったのか。
ということで反省をこめて最後に言わせて頂きます。
「鴎外先生の文章には過不足はございますまいから」
●ブクログ https://booklog.jp/item/1/B009B0SMVO
●読書メーター https://bookmeter.com/books/5696722
最後の一句
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%80%E5%BE%8C%E3%81%AE%E4%B8%80%E5%8F%A5
森鴎外の最後の一句で、いちは亡くなったんですか?
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12204056267
最後の一句についてです。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14287616614
のみやすい読書
痛切な皮肉が光る『最後の一句』あらすじ解説。いちの生死は?
https://nomidoku.com/the-last-word/
ゆみねこの教科書
森鴎外「最後の一句」をわかりやすく解説!あらすじ・いちの言葉・主題
https://kyoukasyo.com/junior-high-school/saigo-no-ikku-mori-ogai/
もう一度教科書を…
森鷗外「最後の一句」④
https://honzukinoaraiguma.com/moriougai4
誰一人取り残さない山口を 藤本かずのり
森鴎外「最後の一句」
https://ikki.wajcp.net/2020/09/22/053831
白いバラ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E3%81%84%E3%83%90%E3%83%A9
大塩平八郎の乱
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2026/04/13/204622
三閉伊一揆
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2026/05/09/195220
蛮社の獄
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2026/06/28/204903
郡上一揆
https://yorodzu.seesaa.net/article/521401477.html
↑
典型的な江戸時代の支配層のイメージ

↑人気blogランキングにご協力お願いします。m(_ _)m
お読み頂きありがとうございます。
ご意見ご感想・ブックマークなど頂けましたら励みになります。
コメントやはてなスターもお待ちしております。m(_ _)m
(なお、当ブログはアフィリエイトを利用しています)






![日経PC21(ピーシーニジュウイチ) 2024年8月号 [雑誌] 日経PC21(ピーシーニジュウイチ) 2024年8月号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/619JoSgRa1L._SL500_.jpg)