OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

名作文学ブログ6 終戦60年特別ドラマ 二十四の瞳

◆◇◆◇◆◇ 少年少女世界の名作文学ブログ・速読み版 ◇◆◇◆◇◆
     HP: http://www.nazegaku.com
    メルマガ: http://nazede.gozaru.jp/mmm.html
  ウェブログ: http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20040404
   第6回配本  終戦60年特別ドラマ 二十四の瞳
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
 
 なぜ学です。お久しぶりです。
 このメルマガも前回『宇宙戦争』を発行して3か月以上たちました。
 その間、命運をかけて資格試験に挑んでいたのですが、どうやらこれは
失敗に終わりそうです。
 そのいきさつについては、別のメルマガ
『ヒトはなぜ学問するのか』第24号 傷心の再出発 学問継続宣言
   http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20050911
で報告しました。
 その後うだうだと脱力していたのですが、ようやく気を取り直して、また1
月に1度の割合をめどにこのメルマガも再開したいと思います。
 
 名作文学といえば、この秋、すごい映画が公開されています。
 
 『ルパン』公式サイト  http://www.arsene-lupin.jp/
 
 書店でもこれに関連した本が色々並んでいます。
 どうやら、原作の色々なエピソードやシーンを組み合わせたストーリーのよ
うです。
 これはぜひとも取り上げなければならない。
 
 しかしその前に、取り上げておきたい作品がもう一つありました。
 2005年8月2日に“終戦60年特別ドラマ”と銘打って放送された『二十四の瞳
です。
 資格試験でごちゃごちゃしていたため、今頃ようやく書けるようになりまし
た。そこで今月は、『二十四の瞳』をお送りします。

                                                                                                                                            1. +

『少年少女世界の名作文学ブログ・速読み版』の3つの新編集方式
 
1)メルマガでは簡略版を配信 ブログには完全版を収録
   (コメント・トラックバックお待ちしております)
2)スタンドごとに配信日をずらして配信。 受信に都合がいい曜日を選べます。
    日曜日……まぐまぐ
    火曜日……E−マガジン、まぐびー
    水曜日……メルマガ天国
    金曜日……めろんぱん
    土曜日……マガジンライフ
3)毎回テーマを決めてトラックバックコーナーを設け、ブログによる交流を
推進。
 
 ◆◇メルマガ版は、各配信スタンドのバックナンバーで御覧下さい。◇◆
     http://nazede.gozaru.jp/mmm.html
 

                                                                                                                                            1. +

二十四の瞳』は確か私が小学3か4年の頃、父親が買ってきてくれたポプラ
社文庫版で読んだのが最初です。
 子どもなりに、最後のシーンは感動して泣けてきました。
 二十四の瞳 (ポプラ社文庫―日本の名作文庫) 二十四の瞳 (ポプラ社文庫―日本の名作文庫)
 この本だ。今でも発売中です。表紙もそのままです。懐かしい。
 
 ここまで書いて思い出したのですが、黒木版『二十四の瞳』は、丁度戦後の
再会シーンの部分を見るのを忘れていました。
 大石先生の家を訪ねて行く場面と戦後の再開シーンが二大名場面なのに、そ
のラストの名場面を見ていなかった。
 長い時間を取ることができないので、長い番組は2、3回に分けて見るので
す。見かけの録画を見るのを忘れていたとは、まだ勘が鈍って取り戻せていない
のです。
 
二十四の瞳』は私が小学生だった頃は、小学生の間ではごく普通に読まれて
いる本でした。
 私の住んでいた地区では毎年、付近の小学校と共同して読書感想文の文集を
出していました。
 そこで取り上げられている作品は壺井栄の作品が多かったですね。
二十四の瞳』が一番多かったのですが、他にも『柿の木のある家』『母のな
い子と子のない母と』なども結構ありました。
 中には『壺井栄の作品を読んで』という、複数の作品を取り上げた人もあり、
これには驚きました。
 これほどまでに当時の小学生にとって壺井栄はメジャーな存在でしたが、今
の小学生も読んでいるのでしょうか。
 
 あと、『二十四の瞳』で特筆すべき思い出は、私が子どもの頃放送されたス
ペシャル番組です。
 何と、戦後の部分は実写で、戦前・戦中の部分はアニメという構成でした。
 冒頭、大石先生が息子の大吉が漕ぐ舟に乗っている実写のシーンから始まり
ます。
 成長した教え子達は実写で人物が演じていました。
 岡田磯吉が黒いサングラスをかけていたのが印象に残っています。
二十四の瞳 アニメ」で検索すると、「TVA 日生ファミリースペシャル 二十
四の瞳」(1980年)だと分かりました。
 一般人の好事家の記録のおかげでこんなことまで分かるのです。便利な世の
中になったものです。
 
 原作は好きだったため何度か読み返しており、登場する12人の少年少女の姓
名を全て覚えているほどでした。
 大学受験に落ちて浪人していた時、公立図書館で大活字版の『二十四の瞳
があったので懐かしくて再読したのですが、その時、あれだけ覚えていた12人
の姓名やエピソードの大半を忘れていたことに気付いたのです。
 しかし復習の力というのはすごいもので、この時読み返した分はしっかりと
記憶に残りました。
 数年前にも再読しているので、原作の方はかなり確実に覚えています。
 そこで今回は原作は読まず、黒木瞳が主演したドラマの感想を書きます。
(原作を読む時間がなかったという事情もある)
 
 ここまで書いてようやく黒木瞳版の感想に入れます。
 冒頭、ラッパと軍歌に送られる出征シーン。教え子達がついに召集されるの
です。
 それから、原作では描かれていない岡田磯吉の軍隊生活が描かれ、ようやく
岬の分教場の話が出てきます。
 
 相澤仁太は原作ではあだ名はありませんでしたが、ここでは憎たらしいの
「ニクタ」というあだ名をもらっています。
 なかなか作品の雰囲気にマッチしたニックネームです。
 その他、原作ではあだ名が出てこない子ども達も含め、全員呼び名をもらっ
ていました。
 
 キッチンが大食いだというエピソードは原作にあったかなあ?
 仁太は小さいなりに皆のリーダー格となって活躍していた。
 12人の子ども達は皆いい演技をしていた。
 小1時代、大石先生の結婚式を見に行く小学高学年時代、そして戦争中・戦後の
最大3人で演じていたのでしょうか。
 
 色々ウェブサイトを検索しましたが、どの役をどの役者さんが演じているの
か、詳しく配役が記されたサイトを見つけることができませんでした。
 私はTVをほとんど見ないので、役者については疎いのです。
 
 黒木瞳の大石先生はイメージ通りで、よかったのではないでしょうか。
 
 大石先生の母親は、八千草薫でしょうか。
 あの芯が強そうだったお母さんは、原作では空襲警報で逃げる際、転んで骨
折したのがもとで急死するのです。
 
 大石先生と結婚する船乗りは渡部篤郎NHKのドラマでは蘇我入鹿を演じたり、
北条時宗の兄・時輔を演じたり、『琉球の風』や『毛利元就』でも不運な兄弟
を演じたりしているので、私としては薄幸なキャラを演じる役者さんというイ
メージがある。
 やはり今回も戦死してしまいました。
 
 大石先生の父親の友人だという校長先生は意地悪そうな顔をしている割には
大石先生に優しく、色々便宜を図ってくれる。
 校長先生のそばにくっついているちょびヒゲの教頭先生?が意地悪そうだっ
た。
 
 バス停の前で座っていた無表情の人がやけにクローズアップされると思って
ると、次のシーンでは大石先生が校長先生に注意されています。
 あの無表情の人が何か言ったということでしょうか。
 
 嵐の翌朝、よろずやのおかみにイヤミを言われるシーンは、いつ見てもいや
なシーンです。
 骨折して船に乗せられた大石先生を見て穴を掘った子があやまったりよろず
屋のおかみが反省するシーンは原作ではなかった。
 
 原作では名前の記述がない男先生も、名前(姓)を与えられていた。
 なかなか味わいある演技でした。
 
 八津ちゃんが青い柿を食べて死ぬエピソードはかわいそうです。
 いつも腹をすかせて、腹一杯食べることなく死んでいったとは。
 ドラマでは大石先生が包丁をまな板に突き刺すシーンがあります。
 原作ではこの後、
「八津にいいものを作ってやる」
と言って、かぼちゃで人形を作るのでした。
 
 みんな貧しく、我慢して窮乏した生活を送っています。
 家庭の事情により進路も制限されてきます。
 学校を辞めて働くことになった子や、よくできるのに進学をあきらめ、結核
にかかって死んだ子や、家が没落して行方不明になった子らがいます。
 一方、目的通り進学して教師になった子や資産家と結婚して安泰の生活を送
っている子もいます。
 男子生徒は5人中3人が戦死、一人は失明してしまいます。
 一緒に小学生になった子達も、その後の運命は色々と分かれました。
 
 小学1年生の頃のクラスメートや担任の先生との結びつきがその後も続いてい
るというのが、この作品の特長です。
 今の世で考えると、そんなことはなかなかないのではないでしょうか。
 子どもや先生の数も限られた田舎ということもあって、結びつきは強かった
のでしょう。
 子ども達にとっては最初の担任の先生であるし、大石先生にとっては、教師
になって最初に会った子ども達です。
 歩いて先生の見舞いに行ったという思い出のあるクラスです。
 だからお互いが特別印象に残る存在だというのは分かります。
 
 一方、大石先生にしては、他の子ども達との交流はどうだったのかという疑
問が出てきます。
 大石先生ほどの先生なら、他の学年の子ども達との交流もあってしかるべき
だと思います。
 しかしそこまで書き込めば散漫になってしまいます。
 原作は、長い時代の一瞬・一瞬を切り取った断片の連作という感じで描かれ
ています。
 だからこの作品の世界は、大石先生とその一期生の交流に限定した描き方と
なっています。
 無駄のない完璧な世界観であります。
 
 私が初めてこの物語を読んだ頃、こんな貧しい世の中も、戦争で言論統制
されている世の中も、遠い昔の戦争中のことだ、こんな時代はもう来ないだろ
う、と他人事のように思っていました。
 
 ところが21世紀となった現在、不況という事実を実感しています。しかも、
物騒で血なまぐさい世の中になっています。
 この『二十四の瞳』で描かれているような悲惨な軍国主事体制を経験し、ようやく得た平和。大石先生や生き残った生徒達が集まって実感した戦後民主主義。この戦後民主主義を“戦後レジーム”と否定して、あろうことか“戦前レジーム”に戻そうとする恐ろしい風潮があります。
 何だか社会の状況が『二十四の瞳』の時代と似てきています。とても“美しい国”などと楽観できる状況ではありません。
 校長先生が大石先生に言ったように
 
「時には本音と建て前を使い分けることも必要」
 
な時代が再び来るのでしょうか。
  
 二十四の瞳 (偕成社文庫 (4007)) 二十四の瞳 (偕成社文庫 (4007)) 
 二十四の瞳 (新潮文庫) 二十四の瞳 (新潮文庫)
  
(追記)
 録画を最後まで見ました。
 最後の同窓会の部分はやはりいいシーンでした。
 しかし、松江の表情や態度が異常に硬いように思った。
 原作では大石先生にもらったユリの花の絵がある弁当箱を持ってきていて、大石先生との再会を喜んで大石先生を独り占めしそうなほどの勢いではしゃいでいたのに。
 また、岡田磯吉の
「これからみんな、ええことばっかりや」
というセリフ、これは仁太の口癖だったようですが、原作にはないセリフでしたが、このドラマにマッチした名セリフだと思います。
 ただ、戦争が終わって民主政治が始まろうとしている当時なら確かにそうですが、それから60年を経た現在、そうも言えない時代になってきました。
 環境問題やエネルギー問題を始め、国際情勢も国内の政治状況もこれから悪くはなれど良くなるとは思えない状況です。
 そんな泣き言ばかり言っていても始まらないのですが。 
 
 コメント・トラックバック歓迎します。
 
 
 ◆◇メルマガ版は、各配信スタンドのバックナンバーで御覧下さい。◇◆
     http://nazede.gozaru.jp/mmm.html
  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ◇◇◇なぜ学 読書調査◇◇◇
  日本人の読書体験を徹底調査!!……とは大袈裟な。
  私が小学生の頃はメジャーだったこの作品。
  この作品の読書体験を問う!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

壺井栄の『二十誌の瞳』を読んだことありますか。
(何と、漢字変換を間違えていました。もちろん『二十四の瞳』が正しいのです。)
 
 読んだことある             (24票) 47%
 読んだことない(映画やTVでなら見たことある) (9票) 18%
 読んだことない(映画やTVでも見たことない) (15票) 29%
 その他(コメントお願いします)      (3票) 6%
 
開始:2005年10月02日/締切:2005年10月10日18時
投票数:51票/コメント数:5件
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【コメントありがとうございます】
2005年10月03日06時20分57秒 お名前:waka
 二十四の瞳は知っているが、二十誌の瞳は知らない。
 
2005年10月03日08時01分54秒 お名前:なぜ学
 しまった。漢字変換を間違えた。
 この誤字がどのような影響をもたらすか。
 以後気をつけます。
 
2005年10月03日08時50分17秒 お名前:nacky
「二十四」の瞳ですよね?それなら読みました。
 
2005年10月03日21時01分40秒 お名前:るりあ
 小学生の頃、「にじゅうし」派と「にじゅうよん」派がいた!
 
2005年10月04日23時42分31秒 お名前:ひろき(H.O.)コメント:
 ありそうでないかなと思います。

 るりあさんの言う「にじゅうし」派と「にじゅうよん」派でいうと、私は小学生の頃は
「にじゅうよん」と読んでいました。
 しかし、漢字変換間違いで分かるように、現在は「にじゅうし」と読んでいます。
 一体、どんな違いがあるのでしょうか。
「日本」を前後の文脈から「にほん」と読んだり「にっぽん」と読んだりするのと同じようなもんではないでしょうか。
 しかし、はてなダイアリーキーワードでは
「「にじゅうよん」とは読まないで。」
と書かれています。
  http://d.hatena.ne.jp/keyword/%c6%f3%bd%bd%bb%cd%a4%ce%c6%b7
 ううむ。ここは結論は出せません。
 
 漢字変換を間違えてしまいました。
 文字通り「二十誌の瞳」というのは知らない、ととらえた、
 ああこれは『二十四の瞳』の打ち間違いだな、ととらえた方では回答基準に違いが出てしまいます。
 だからこのアンケート結果は参考程度としておいて下さい。
 こういったハンディがありながら、半数近くの方が「読んだことある」と答えられ、映画やTVで観た方も含めると、半数以上がストーリーを知っているということになります。
 国民的文学作品、ということでしょうか。
 名作は世代を超えて継承していきたいものです。 
 
 「二十四の瞳」からのメッセージ 「二十四の瞳」からのメッセージ 
  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【今月のトラックバックコーナー】
 
 ブログを持たれている方とのトラックバック推進のために、特にコーナーを
設けます。
 トラックバック、遠慮なくどんどんやって下さい。お待ちしております。
 
テーマ1)今回のメルマガに対する感想
テーマ2)『二十四の瞳』に関する話題
      原作や映画に限らず何でも。
テーマ3)小学生時代に読んだ本の話題・懐かしい思い出、
     名作文学の思い出なども。。
テーマ4)その他何でも http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20051002
      にTB、コメントお寄せ下さい。お待ちしています。
 
ティールーム (掲示板)について】
 
 残念ながら、突然前触れ泣く閉鎖してしまいました。
 その辺、こちらで書いています。
 ■レンタルしていた掲示板が突然の閉鎖
(スターティングウェブ・コム startingweb.com)
    http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20050810
 今まで書き込んで頂いたログも失ってしまいました。
 申し訳ありません。
   
 あなたは
     まぐまぐより 96名(−2)
     まぐびーより 24名(+22)
  E−マガジンより  14名(+6)
   メルマガ天国より 31名(−1) 
    めろんぱんより 11名(−1) 
 マガジンライフより 329名(+31)
 
 の名作文学について考える少年少女の感性を忘れないヒトのうちの一人です。