弟11話 さすらいの勇者 脚本 宮川一郎 監督 西河克己
宋江や梁山泊とのつながりが疑われる花栄が行方不明となり、都に住む花栄の妹・玉蘭(松木路子)の周囲も警戒が厳しくなる。玉蘭の兄・黄信(峰岸降之介)も都に呼び寄せられ、花栄の探索を命じられる。
玉蘭に密かに花栄の手紙が届き、玉蘭は会いに行く。しかしそれは、高求の部下・唐亮(武藤昌生)に感づかれる。
梁山泊に頭を痛めている高求。そこに賄賂を持ってきて便宜を求めるのは張文遠(神田隆)。
さすがのわしでもこれ以上の便宜は無理だ、これだけ儲けてまだ儲けようとするのか、とあきれる高求。
博打と喧嘩ばかりのお前のパトロンになってここまで育ててやったんや、まだまだ儲けるで、と切り返す張。
国広しといえど、わしを脅迫することのできる者はお前だけだ、何とかしよう、と言う高求。
最近嫌なことばかりだ、と嘆く高求に、気晴らしに水芸でも見に行きましょう、と誘う張。
都では最近やって来た旅芸人一座の水芸が話題になっていた。一座の座長は白秀英(安田道代)が美人だということも話題で、張文遠の狙いもこれであった。
桟敷席で水芸を見る二人。しかし、白秀英の狙いも張文遠であった。彼女は扇子に「今晩是々の所へ来るように」と書き、張文遠に投げる。
今から10年前、都に白ぎょくさい(漢字不明)という立派な商人がいた。張文遠は彼を酔っ払わせた上に川に落として殺害し、彼の商家を乗っ取ったのである。番頭の周(本郷秀雄)は遺児の白秀英を引き取り、旅先で覚えた水芸で生計を立てながら復讐の機会を狙っており、今回都に入ったのである。
この旅の一座に花栄(原田大二郎)も同行し、弓の芸を披露しながら一緒に都入りした。
花栄は周から事情を聞き、白秀英のあだ討ちを手伝う決心をする。
白秀英は一室で張文遠を待つが、やって来たのは高求。高求は張文遠を襲うが、花栄が救出。
「彼女のヒモにしてはすごい殺気だ。待て、お前は花栄!」
花栄が都にいることを高求に知られる。
高求は黄信を呼び、花栄に通じていないことを証明させるため、玉蘭から兄の居場所を聞き出すことを命じる。玉蘭を鞭で打って拷問にかける黄信。高求は中断させ、必ず花栄を逮捕するように命じる。
家で玉蘭に詫びる黄信。花栄は今後の世の中に必要な人だ、捕まえることができない、と言う。
玉蘭は毒薬を飲んで自殺、死ぬ前に、私に構わず兄を逮捕して、と言う。
梁山泊では、林冲に登竜(林道紀)が伝言を告げに来る。旅芸人の一座が都に入り、その中に弓の名人がいる、ということである。早速都に向かう林冲。
高求は唐亮に白秀英について調べさせ、張文遠の過去の悪事を知る。このことを利用して花栄を逮捕する計画を立て、白秀英の一座に特別公演の見学を申し出る。
高求は白秋英一座の特別公演を黄信と張文遠を伴なって見学。
白秋英は「親の仇討ち」と宣言して張文遠を刺そうとし、張文遠
「今のはデタラメです、高求様、お助け下さい」
「これは芝居じゃ。皆の者、手出しせずに見学せい」
「さては始めからこのつもりで。それなら……」
腕力に勝る張文遠は逆襲するが、花栄の放った矢に絶命。
「この矢は花栄の矢じゃ。皆の者、捕らえよ」
そこに林冲が現れ、雑魚どもを相手にしている間に花栄と黄信の一騎打ち。
「兄上、どうしてあのまますぐに梁山泊に行かなかった」
二人は同時に相手に切りつけるが、黄信の刀は刃がこぼしてあった。
悪徳商人・張文遠の喋りは、時々大阪弁が混じる。大阪弁は商人の言葉というイメージなのだろうか。ついでに屋号が“越後屋”だったりして。
このドラマ『水滸伝』では、原作に出てくる登場人物が別の役割で出てくることがあります。
今回登場した白秀英は、原作では雷横と因縁ある旅芸人です。そのことについて、以前メルマガで書いたことがあります。
■[名作文学]水滸伝 梁山泊に集う108人の英雄の物語
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20060920
それにしても、なぜ花栄は旅芸人と同行して芸を行いながらというまどろっこしいことをしながら都に入ったのだろうか。馬でさっさと都入りしてさっさと妹を連れて梁山泊入りをすればよかったのに。しかもあだ討ちの手伝いまでして、一体彼は妹に会ってどうするつもりだったのか。
夫に妻を拷問させる冷酷な高求。黄信も玉蘭もなぜいつまでも高求の命令に従おうとするのか。このような高求を見限り、一緒に花栄の所に行き、一緒に梁山泊に行くべきだったのだ。
しかし組織を離れる、というのは大きな壁なのである。組織を離れれば自由になれるのだが、なかなかそこまで発想の転換をするのは難しいものなのである。
しかし玉蘭が毒薬を飲んだのは黄信が離れた一瞬の間だった。この時を予感して身近に置いてあったのだろうか。
林冲に伝言を伝えた登竜(林道紀)。梁山泊のその他的なメンバーの中で、いつも林冲の近くにいて一番画面に映っており、時々一言程度の短いセリフがあった人物である。今回ようやく名前を呼ばれ、少し長いセリフを喋った。
花栄に向かい、
「あなたと黄信どのが気になる昨今。
まるで同じ星の下に生まれたような」
と言う林冲。その通りです。何でその通りにならなかったのか。
「兄上、どうしてあのまますぐに梁山泊に行かなかった」
との黄信の言葉、まさにその通りです。妹を呼びに都に来ない方がかえって良かったのかも。
しかし何で黄信が死んでしまうのでしょうか。正真正銘の108星の一人で原作では一緒に梁山泊入りするはずなのに。この脚色は納得がいかない。
舟に乗って都を去る白秀英と周。他に沢山いた劇団員はどうなったのだろう。
それにしても、高求の目前で高求おかかえの商人を殺しておきながら、よく助かったものだ。
いやもしかしたら、これは高求には珍しくあだ討ちの手助けをしてやり、罪を問わずに見逃してやったのだろうか。
いくら花栄を捕まえるためとはいえ、自分の恩人でもあり賄賂をくれる豪商を犠牲にするのは釣り合わないのではないか。そこまで花栄が憎かったのだろうか。
虫の息の黄信を馬に乗せ、せめて梁山泊に葬ってやろうとした花栄であったが途中で黄信は落馬して絶命。
林冲と花栄は黄信を葬り、梁山泊に向かう。
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弟12話 二竜山の対決 脚本 宮川一郎 監督 西河克己
冒頭、林冲と公孫勝の勝負。公孫勝が術を使って林冲を苦しめるが、林冲が術を破る。
「さすが、林冲どの」
公孫勝は林冲が心の中で楊志(佐藤允)と魯智深(長門勇)のことを考えていることを見破る。
その頃楊志は放浪の末、再び都に戻り、高求に謁見していた。
楊志は一兵卒からでもやり直したい、と頼むが、高求は「一度失敗した者を二度と使う気はない」と席を立つ。
高求の副官が
「わしに金を持ってくれば将校として取り立ててやる」
と言う。
市場で刀を売って金を作ろうとした楊志であるが、ならず者・牛二(松崎眞)にからまれ、かっとして斬り殺したため再び放浪の身に。
一方魯智深は、ものもらいをしていたが、実入りは少ない。この近辺は二竜山の山賊達に荒らされたので誰もが余裕を失っているのである。
魯智深は病気で苦しんでいる歌い子・鳳春(岡田由紀子)を見つけ、病院に連れて行ってやる。手遅れになれば助からなかったということで、回復した鳳春と魯智深は仲良くなる。しかし鳳春の父親は、この二人の仲を気に入らなかった。
二竜山は都・開封と梁山泊の中間に位置する天然の要害で、ここに山賊が住み着き、猛威をふるっていた。
二竜山の山賊の頭領・錦毛虎(近藤宏)が鳳春を見受けに来るということで、鳳春は魯智深に助けを求めに来る。魯智深は錦毛虎を追い払う。しかし鳳春の父親は羽振りのいい錦毛虎とつながりを持つことが希望であった。
魯智深は荒れた村の家の中で鍋を煮ている楊志を発見。村を荒らしたのは楊志だと思い、楊志に襲い掛かる。
しかし死んだように倒れていた村人から、村を荒らしたのは二竜山の山賊だと聞かされ、仲直りする。
二竜山への敵意を募らせる二人。
錦毛虎は賄賂を持って高求に謁見し、二竜山の山賊達を近衛軍として編入してくれと要求。
いずれ梁山泊との全面対決の際、必ずや役に立って見せる、という必死の説得に高求も心動かされ、錦毛虎を二竜山守備隊長に任命する。
近衛軍所属となり、そのしるしである黄色いマフラーを巻いた錦毛虎は、再び鳳春を訪ね、嫌がる彼女を気絶させて二竜山に連れて行く。
山の中で野宿した翌朝、魯智深は鳳春に会うために山を下りる。
鳳春は錦毛虎に嫁にやった、という鳳春の父親に怒った魯智深が頭を殴ると、死んでしまう。
「またやってしまった」
と反省する魯智深。
二竜山の山賊の要塞の門前で楊志と合流した魯智深。
楊志が寝ている間に懐の中に公孫勝が作戦を記した手紙を入れてあった。その作戦の実行を始める二人。
錦毛虎は官軍に編入されたことを祝って宴会を始めるが、副頭領ら喜ばない一派がいた。
「わしらはこのままの方がいいんですがね」
「頭の悪い野郎ばかりだ。命を張って村を渡り歩いているより、座って税金のおこぼれにあずかっている方がいいに決まっている」
鳳春には相手にされないし、折角高求とつながりを持った錦毛虎であるが、その後が良くない。
そこに副頭領が、村人達が魯智深を捕まえてきた、と知らせに来る。
「村人達に捕まるようなやつではないが」
といぶかしがる錦毛虎に、
「女にふられて酒を飲んで酔いつぶれていたということです。その代わり村人達は、しらばく村を荒らさないでくれということです」
ということで、門を開ける盗賊達。
楊志が魯智深を縛って入ってくるが、縄を振りほどき、二人が暴れ始める。
応戦する錦毛虎派。しかしさらに梁山泊から林冲・扈三娘らの援軍が到着、二竜山軍に襲いかかる。
刀を売る楊志にからむ牛二。かなり怖そうな感じの人である。エンディングの配役を見ると、「松崎眞」となっている。これはもしや、笑点で座布団を運んでいたあの方ではなかろうか。私の記憶ではかなり恰幅が良く、それにいつもニコニコと「手を挙げて横断歩道を渡りましょう」と言っていたイメージがある。しかしドラマでは恐ろしい感じでしかもスリムなのでこの二人が結びつかない。はてなダイアリーキーワードでは「松崎真」となっています。松崎さん、俳優だったのですね。
前回登場時には晁蓋を助けて颯爽と活躍していた魯智深が、なぜか物乞いをしています。放浪の身は浮き沈みが激しいものなのか。
物乞いをして食べる物もない魯智深が急病の鳳春を医者に連れて行く。診察代はどうなったのだろうか。
今回、二竜山の山賊の頭領として、錦毛虎という人物が登場します。
原作では宋江が花栄を訪ねて行った時に出会い、後に捕われた宋江を助けて梁山泊入りした山賊の頭領の名が燕順あだ名を錦毛虎となっています。
このドラマ版では第8話 青州の妖精 がその辺りのエピソードです。
この回でも山賊は出てきて、天本英世演じた頭領の名はエンディングの配役表では「白面郎」となっており、さらに、「燕順 上西弘次」という表記もありました。
今回登場した錦毛虎、山賊として悪事を働きながらかなりの上昇志向を持っていて、高求に近衛軍編入を持ちかけるとは、大胆な発想力を持っているようです。とはいえこれは、原作で梁山泊が招安されたことがヒントになっているんだろうな。
魯智深と楊志の争いを止めたのは、死んだように倒れていた村人であった。
「このお方がわしらを殺したのではない。
わしらを殺したのは二竜山の山賊どもたちだ」
しかし、まだ死んでいない人が「わしらを殺した」というのはおかしい。
「村を荒らした」くらいが適当な言い方ではないか。
いやもしかしたらこの人は本当に死んでいて、幽霊が話しているのだろうか。
山の中で焚火をする魯智深と楊志。そこに病気になった母親の見舞いに行く途中の公孫勝が現れる。
林冲ですら敬語で話しかける公孫勝だが、魯智深はタメ語で話しかけているぞ。
一方、公孫勝は魯智深に敬語で話している。
ここら辺、魯智深のキャラクターの面白い所である。
連れてきた鷹の足に手紙を巻いて梁山泊に魯智深と楊志の二竜山退治のことを知らせる公孫勝。
「ここから梁山泊まで100里。1日で着くだろう」
と言ってる割には、林冲達の援軍が到着するのは早過ぎないか。
錦毛虎と一部の部下の間には方向性の違いがあるようだ。山賊をしていながら官軍編入を望む錦毛虎は、インテリ志向があるのだろうか。バリバリの現場派というより、ホワイトカラー管理職的な人物像である。
魯智深が村人達に捕らえられた、と聞いてすかさず
「村人達に捕まるようなやつではないが」
と疑問に思うなど、頭も悪くはないようである。
扈三娘が敵に囲まれてピンチになっているのを楊志が発見。
「扈三娘!」
と叫んで救援に向かうが、敵が大勢寄ってきたために応戦。そんなことをしている間に林冲が扈三娘を救出。これを見た楊志が「くそー」と。
色々なサイトを拝見しますと、楊志は運が悪い、という記述が目立ちます。このドラマでもこんな所に運が悪いエピソードです。
魯智深が錦毛虎を成敗し、鳳春を救出。父親を撲殺したことを詫びる。
鳳春は、魯智深に連れて逃げるようにお願いする。
二竜山の副頭領以下生き残りの連中が楊志に、二竜山の頭領になるようお願いする。
「林冲、梁山泊の出城が一つくらいあってもいいだろう。
俺はお前さんと張り合うことは望まない。特に女にかけてはお前さんにはかなわない」
と言って二竜山の頭領になることを選択した楊志。
そして魯智深は梁山泊に入ることを決意。
しかし魯智深は鳳春に、別の場所で待つように言っていたのだった。
「鳳春、待っているだろうな。仕方がない。俺みたいな男。女に惚れられる柄じゃねえや。これでいいんだよ。これでな。ハハハ……」
いやしかし、これでは残された鳳春の身の上が心配です。山の中に一人待ちぼうけで、この先どうなるんでしょうか。また悪い連中に捕まらないでしょうか。金のために娘を売り渡す悪い親だったとはいえ、父親を殺したのですから、今後の身の上にも責任を持たないと。
しかし今まで散々「女と酒が好きだから」という理由で朱武達の少華山から出て行き、梁山泊入りも拒んできたのに突然「女に惚れられる柄じゃねえや」とは、性格が変わっていませんか?
梁山泊に連れて行くとか、二竜山に置いてもらうよう話をつけるとかできなかったか。ともかく騙すのはいけない。正直に話し合うべきではなかったでしょうか。
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