OLDIES 三丁目のブログ

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第30回「永倉新八、反乱」(8/1)〜土方の尻に敷かれだした近藤

 新選組池田屋事件及び禁門の変での活躍に対し、恩賞金が与えられた。
 その夜、近藤、土方、沖田、井上源三郎小林隆)、の4人が酒席を設ける。
「山南さんも参加したいようでした」
という井上に、土方は、
「やめてくれ。今夜は試衛館生え抜きの者で飲もう」

 山南も、そして永倉新八山口智充)や原田左之助山本太郎)、藤堂平助中村勘太郎)も、試衛館生え抜きと言っていいくらい古くからの同士だと思っていたのだが。土方の頭の中には、厳然とした区別があるようだ。分け隔てなく誰とでも付き合うというより、差別化が好きなタイプのキャラクターなんだろう。

 この度頂いた恩賞金は、土方が誰の相談もなしに独断で決める。池田屋事件時の働きに応じて分配するという。

 池田屋事件で、屯所を守っていた隊士には報奨金は出ない!
 とはまたひどいことである。
 あの時点では過激尊攘派が屯所を襲ってくる、という事態も考えられ、それを考慮しての守備隊ではなかったか。
 実際、その前に、桝屋に尊攘派が押し寄せ、守備隊が敗北している。
 だからこそ、土方自身が守りを固めるため、山南に屯所を守ることを頼んだのではないか。
 それを今頃になって守備隊には恩賞を取らせない、とは、明らかに山南に対する当てつけではないか。

新選組を全国組織に変えてみせる」
と意気込む土方は、そのための新体制を発表。
 権力を近藤と土方に集中させ、山南を組織系統から外す。

永倉新八山口智充)は、
「私は近藤局長の同士のつもりでやってきた。家来ではない」
と反発。
 こぢんまりとした同士的つながりの小さな会社が全国展開する時に直面するような問題である。
 もちろん、組織論的には土方の考えが正しいのだろう。
 永倉の考えているような同士的運営は組織が大きくなっていくと難しいだろう。

 しかし、土方の青写真は、私欲も混じっているように思うのだが、どうだろうか。
 土方と並んで近藤をサポートしてきた山南を明らかに干している。
 新選組全体のことを考えれば、山南のような実力者を活用するべきだろう。それを外しているのだから、明らかに左遷人事である。
 こういった人事抗争、古今東西を問わず組織の中でよくあることではないだろうか。

 議論が白熱する中、
「土方さんは欲得づくで動く人じゃないよ」
と言う沖田。
 しかし、あの山南への左遷人事を見れば、自分の欲得が混じっていることは明白。沖田の目は節穴か。幼くて単純すぎる。

 芹沢暗殺も新選組内部で起こしたもの、と知った永倉は席を立つ。
 除隊する、と言う永倉に、山南は会津候に建白書を提出して改革しよう、と持ちかける。
 派閥抗争の勧めである。
 結果的には、近藤は腑抜けのようになってしまって土方の尻に敷かれており、もはや新選組は土方の組織となってしまった。
 永倉にしろ山南にしろ、近藤を見限ってさっさと除隊するべきだったのである。

 永倉派の島田魁(照英)は、斎藤一オダギリジョー)を仲間に誘う。しかし、なぜか斎藤は永倉の反乱を近藤に報告。
 江戸から京都に逃がしてくれた芹沢に恩を感じ、芹沢暗殺に向かう4人の前に立ちふかがった斎藤のこの行為、意外に感じる。これはなぜだろうか。

 芹沢暗殺の真相を今回初めて知らされた永倉や島田に対して、当初から知っていた斎藤はこの問題に決着をつけていたのだろうか。
 また、芹沢以上に近藤に恩義を感じている斎藤にとって、永倉の行為は、近藤への反乱のように映ったのだろうか。
 それとも、同士と思っている永倉と、家来だと思っている斎藤の違いなのだろうか。

 永倉の下に集まったのは6人。しかしそのうち斎藤は土方と内通。原田もおちゃらけていて頼りにならない。後の2人は成り行きで加わっただけという状況。
 新選組の隊士の大部分は、部下として集められたもので、永倉らのように最初期に同志的に集まっていた連中がすでに少数派となっていたのだろう。

『秀吉』にも、似たような場面があった。秀吉を初期から支えていた蜂須賀小六大仁田厚)が冷遇されるのである。

 今回、藤堂平助中村勘太郎)の登場がなかった。額の傷が悪化して治療中だったのだろうか。藤堂がいれば、どんな行動をとったのだろうか。

 建白書は提出され、会津候の前で永倉らと近藤は対面。近藤が今回の非をわび、一件落着。

 今回、初めて近藤が存在感を示した。
 しかし、土方の独走を止めないと、今後もこのようなことは続くであろう。
 今回、近藤は、全くもって主体性がなく、土方の意のままに操られる操り人形というような印象を持った。
 
 鬼になって芹沢や内山を斬ってこれから変身か、と思っていたら、逆に土方の尻に敷かれている。
 いやむしろ、土方の冷酷な粛清人事を影でバックアップする、という意味での“鬼への変身”であろうか。
 物語前半の必死になっていた頃の近藤の方が良かった。
 今の近藤は、流れに流されているだけのような気がする。
 もはや新選組は、近藤の組織ではない。
 近藤をお飾りとして祭った、土方の組織になってしまったという印象を持った。

 この近藤と新選組の変質、今回唐突に現れた気がする。

 芹沢暗殺までは丁寧に描かれていてじっくりと楽しめたが、そこからの展開があまりにも急で、池田屋事件禁門の変を急いで通り過ぎたら、いきなり派閥争いが始まった。

 折角芹沢との葛藤を丁寧に描いたのだから、この近藤と組織の変質もまた、じっくりと描いてほしかった。
 芹沢打倒のためにあれだけ一丸となっていた土方・山南らを始めとするメンバーがなぜここまでバラバラとなったのか。

 楽しく見られた今までと違って、今後辛い展開が続きそうだ。