土方と対立し、気晴らしに本を買いに出た山南敬助(堺雅人)は、その帰り、おりょう(麻生久美子)と戯れている坂本龍馬(江口洋介)と出会う。共に小さな料理屋に入り、ここでようやく山南と坂本の会談が実現する。
そもそも山南は、坂本の紹介で近藤に会いに来て、そのまま居着いてしまったという設定になっていた。ところがその後、山南と坂本との接点がないのは不自然だと、過去2回突っ込んできた。
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20040511
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20040612
歴史上、坂本と近藤に親交があった、という新解釈は、この三谷版新選組の特長である。その2人の接点となる共通の知り合いが山南なのだから、この辺よく分かるように描いてほしい。
藩にとらわれず有能な人材を一同に集めて日本を変える、という坂本の考えこそが、その後の日本の進むべき道だったのではないだろうか。坂本が生きていれば明治新政府も大きく違ったものになっていただろう。それとも、下野して大学でも建てただろうか。
新選組の実権は土方にある、とこぼす山南。
坂本は山南に、お前も俺と一緒にやらんか、新選組にいても何もできないだろう、と持ちかける。
まさに、山南は坂本と一緒に行動するべきだったのでは?
坂本に紹介されて近藤に付いて行った山南。
当初は見るべきところのある人物であった。
しかし、最近は土方の尻に敷かれてぱっとしない。
燈台元暗し。真の仲間は間近にいたのである。
いくら貢献しても仲間として認めてもらえず他所者として扱われる新選組に行くより、同門の坂本と行動を共にするべきだった。
進むべき道を間違えた者の悲劇である。
近藤は会津候の命により、将軍上洛を訴えるために江戸に向かう。
先週登場しなかった藤堂平助(中村勘太郎)は、江戸で新選組隊士を募集していたということである。
そして土方は、近藤不在をいいことに、前回反乱に加わった者を罰する決心をする。
反対する山南を無視するわけにはいかず、思案の結果、建白書を書いた葛山武八郎(平畠啓史)のみを見せしめに切腹させることに決定。
新見錦(相島一之)の時もそうだったが、
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20040627
これは局長・近藤不在時の独断専行ではないか。
近藤の部下である土方に、近藤の承認なしに隊士を切腹させる権限はない。
二言目には
「近藤局長のため」
「新選組のため」
と言っている土方であるが、これこそ近藤をないがしろにする、近藤に対して失礼な行為、近藤の顔に泥を塗る行為ではなかろうか。いや、反乱と言っていい行為では?
そもそも近藤自身がこの件を無難に治めようとして、全員謹慎という軽い処分にしたのである。そして、謹慎中である事件の首謀者である永倉新八(山口智充)をわざわざ江戸へのお供として連れて行ったのである。
土方の行為は、近藤の意に添わないものであるのは明らか。独断専行の越権行為である。
成り行きで参加した葛山武八郎一人を建白書の下書きを書いたという名目で切腹させるというのも姑息である。
それにしてもこの葛山、元は坊主ということで文章を書くのがうまく、読書が好きというキャラクター。小山南、という感じで、さすが山南が推薦したというだけあるが、いかんせん弁が立たない。話す言葉にまるで重みがなく、土方にあきれられる。
学があるのだったら、理でもって土方の独断専行を論破してもらいたかった。
「土方副長。局長のため、新選組のためと言っておられますが、あなたの行為こそ近藤局長の顔に泥を塗るものですよ。
もしどうしても、というのなら、局長の帰りを待ちましょう。局長に判断してもらいましょう。私は副長であるあなたではなく、近藤局長の命令に従います。」
とでも言ってほしかった。
実際の葛山がどんな人物だったかは知らないが。
それにしても三谷さんのキャラクターの描き方は面白い。
学があっても実際の現場では生かせない人物という設定で描いているのだろう。
謹慎中ながら、介錯役として登場した斎藤一(オダギリジョー)。さすがの葛山もからくりに気付く。他の謹慎中のメンバーはこの間、どうしていたのだろう。
単純な沖田はともかくとして、井上源三郎(小林隆)が近藤や新選組全体にマイナスになる土方の独断専行に理解あるのは不思議だ。源さんは近藤より土方に近いのだろうか。
そして江戸では、平助が以前いた道場の道場主の伊東甲子太郎(谷原章介)が新選組入りを表明。思えば平助の試衛館入りにはこの人との間で色々あった。何だか腹に一物ありそうだが、どんなもんだろうか。