OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

【バイオ教授の殺人ゼミナール 藤本大三郎】サイエンス・ミステリー

  バイオ教授の殺人ゼミナール
   帯付き画像


 舞台はある小さな大学の生化学の教室。教授の名前は藤木倍男。「ますお」と読むのだが「バイオ」と呼ばれている。
 それでこの教室のお茶の時間に殺人事件の話題が出て推理合戦する話。
 わずか12〜13ページの短い話ながら、事件にまつわるバイオ用語の解説があったり、バイオ教授によるバイオ技術を使ったトリックの推理があったり、美人秘書の吉中サユリさんによるもっと単純なトリックの推理があったり、よくこれだけのページに詰め込んだなと。
 原作は今は亡き科学雑誌「科学朝日」に連載されたものだとか。よくも毎月ネタが尽きずに書き続けられたもんだなと。
 まあこれだけ短いのだから、そんなに複雑で入り組んだ事件でもトリックでもありません。
 発行年代が古い(1990年。何と30年近く前だ!)ので、今では古臭く感じるのかと思いましたが、バイオテクノロジーの基礎事項として今後も知っておかなくてはならない必須事項ばかりです。
 本書に収録された短編をタネにして推理ゲームをしても楽しいのではないでしょうか。
  
第5話 死の遺伝子占い
は密度が高いというか詰め込み過ぎというか、よくここまで考えたなあという傑作。
 ある女性研究者が死亡した。自殺か他殺か?ベッドのそばの机の上にトランプが並べてあった。スートと数字を順に並べると……。
「これは遺伝暗号だ!」
と学生たちがGCAUに直す。さらに3つづつ区切ってアミノ酸に直す。
「これをさらにアミノ酸の一文字記号に直すのさ」

WAGGERY
ーこっけい、おどけ、冗談、わるふざけ、ひょうきん

「彼女は詩人であり、哲学者だったんだ!」
「たんなるふざけじゃないの?」
 
 ここで、バイオ教授が登場。
「このペプチドそのものに、意味があるんじゃないかと思うんだ」
「さっきのペプチドの構造だけれども、睡眠ペプチドに似ているからね」
「彼女は睡眠薬自殺ではなくて、このペプチドを投与されたのであり、気づいた彼女は、そのことを知らせるために、トランプを使って……」
  
 最後に真打ち・サユリさんが登場!
「ちょっと考えすぎじゃないの?」
  
 トランプの並びで睡眠ペプチドを作るとはすごい。しかも思わせぶりな英単語とダブルミーニングになっているとは。遺伝子の暗号!作者は色々と試行錯誤して決定したのでしょうか。
 バイオテクノロジーや占いに関心ある私にとって非常に満足した回でした。

 本書のあとがきで藤本先生は書かれています。

「科学の進歩が、ひょっとしてミステリーの世界にも新しいトリックを生みだす可能性を与えてくれるのではないだろうか。クリスティーやクイーンでさえまったく想像もできなかったトリックが、いまなら可能になってきたのではないか。」
「SFとは一線を画したサイエンス・ミステリーが可能ではないだろうか。」
  
 サイエンス・ミステリー!いいですね。(しかしイニシャルにするとSMになってしまう)
 その後東野圭吾ガリレオシリーズがブレイクしたので、ガリレオシリーズがこのジャンルの代表でしょう。
 もっと色々出てきてもいいと思います。
  
 さて、本書の著者は藤本大三郎という方です。実は奥本大三郎というよく似た名前の高名なフランス文学者がおられます。

 wikipedia:奥本大三郎 

 藤本大三郎師もすごい方です。

「東大在学中、最初の一般公募江戸川乱歩賞に応募、仁木悦子、西村京太郎らとともに予選通過作品に選ばれる」
「現在は東京農工大学教授」
  
 師は一般向けの科学の啓蒙書やミステリー作品を沢山出されています。
 どれを読んでも科学の知識が得られますから、一度読んでみてはどうでしょうか。

 バイオ教授の殺人ゼミナール
 バイオ探偵の事件簿
 二重らせん殺人事件


 グリオン・クライシス 図解雑学 老化のしくみと寿命 (図解雑学シリーズ) 長寿学―老化を防ぐ科学知識 (ちくま新書 (240)) バイオサイエンス入門―生命現象の不思議を探る (講談社現代新書)


出版社ページ  http://www.din.or.jp/~jcd03305/busyousya/


あいあんらっと
 バイオ探偵の事件簿/藤本大三郎
  http://jubee.blog48.fc2.com/blog-entry-180.html
 二重らせん殺人事件/藤本大三郎
  http://jubee.blog48.fc2.com/blog-entry-179.html
鴨がネギしょってやってきた
 藤本大三郎 バイオ探偵の事件簿
  http://blog.livedoor.jp/negisikamo/archives/50864232.html


藤本大三郎「バイオ探偵の事件簿」読了
  http://favolog.org/mysteryEQ/date-121210/asc
バイオ教授最後の事件簿|藤本大三郎|創土社電子書籍|shinanobook.com|
  http://www.shinanobook.com/genre/book/879


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■[日々の冒険]探偵ガリレオ「戦いなんです。誰にも甘えてはいけない」
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20160617/p1
■[日々の冒険]海野十三『赤外線男』 帆村荘六は“戦前版探偵ガリレオ”か
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20160813/p1
■[速読読書]トリックを実験したい 銀座幽霊 大阪圭吉
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少年少女・ネタバレ談話室(ネタばらし注意!)
『予知夢』第一章・夢想る ネタバレ感想 色々な人がいるもんだなあ
  http://sfclub.sblo.jp/article/175742205.html
容疑者Xの献身』ネタバレ突っ込み漫談
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