極東国際軍事裁判
小沢武二・著 依光隆・絵
国土社 ノンフィクション全集10
1977年3月初版
国土社ノンフィクション全集の中の一冊です。
対象年齢は「小学校高学年~中学生向」ということです。
この世代を対象としたノンフィクションシリーズで太平洋戦争を扱った本は多いのですが、「極東軍事裁判」をテーマにするというのは異色に感じました。
「極東軍事裁判」だとか「東京裁判」という歴史用語を使う場合、大東亜戦争肯定論者が否定する意味で使う場合が多いというイメージがあります。
当時の子ども向けに珍しく右翼的史観に立った大東亜戦争肯定論の本かなと思って怖いもの見たさに借りてみました。
著者の小沢武二さんは共同通信社の記者。戦時中は従軍記者としてアジア戦線に従軍されていたという。
戦後に記者として東京裁判の担当に任じられ、東京裁判の始まりから終わりまで密着取材されました。
本書では1946年5月3日の東京裁判開始から1948年12月23日の死刑執行までを同時進行のドキュメントタッチで記されています。
東京裁判では戦争の進行フェーズに従って裁判が進み、それに応じて戦争の歴史的記述が加えられています。
著者は裁判の進行に否定的な見解を持っているようで、所々で東京裁判の不当な部分を批判するような記述が出てきます。
ウェッブ裁判長を否定的に描く一方で、日本の戦犯のために奮闘したスミス弁護人をヒーロー的に描いています。
また、日本の戦犯に不利な証言をした田中隆吉や元満州国皇帝・溥儀を否定的に描いています。
中国戦線の審理で明らかになったのが「南京大虐殺」です。
「それまで日本国民のしらないことであった。東京裁判で白日のもとにさらけだされたわけで、人びとのおどろきはたいへんなものだった」
検察側から多くの証人が証言に立ち、
対して弁護側も否定する証言者や松井磐根被告の証言で対抗しました。
「じつは南京大虐殺についてはいまだに真相はナゾにつつまれている。殺された人の数にしても何万であったか何十万であったか、それすらよくわかっていないのだ。ただ、日本軍が多くの中国民衆を殺したことは事実として断定していいようだ」
「いずれにしても、多くの事実をくみあわせて“南京大虐殺”はあったといえる。そしていかなる理由であろうと、戦闘する力のない民衆を殺すということは許されないことで、「南京大虐殺は日本史の汚点」という検察がわのみかたは正しいというべきだろう」
と記されています。
ともかく2年以上続いた裁判も判決が決まり刑の執行を待つことになった。
刑の執行がいつ行われるか分からないので著者らは巣鴨プリズン前で張り込みを行い、遺体を運ぶトラックをスクープ撮影することに成功します。
本書の最期に描写されるこのくだりが著者の記者魂を表していて印象的です。
著者はその後も歴史的事件を取材し、著書も残されています。
著者小沢武二氏は部分的には東京裁判に否定的なところもありますが、大まかに見て
「正しかった」「おこなわれてしかるべきことだった」
と書かれています。
現在、東京裁判否定論に立った「大東亜戦争肯定史観」とでもいうような歴史修正主義が優勢になっています。
そのような時に本書を取り上げたことで歴史修正主義に加担するようになればまずいので、本書あとがきを全文、ブログに引用しておきます。
この全文引用から小沢武二さんの考えを読み取って頂けたらと思います。
(注:返却期限が来たので返却しました。後日再度借りて転載するつもりです)
ともかく本書は、バランスの取れた記述であり、東京裁判を知るうえで基本的な事実を知るには良いと思います。
現在「東京裁判」「極東軍事裁判」で本を検索すると、学術的に話にならないウヨク的陰謀論のようなクズ本が掃いて捨てるほど出てきますが、そういったクズ本は1977年に出た子どもを対象とした本書の足元にも及ばないでしょう。
私自身の感想としては、東京裁判の正当性云々ではなく、軍国主義による言論弾圧の責任は誰が取るのかということです。
戦争中に軍国主義による言論弾圧は当然のように行われていました。
それは『二十四の瞳』『次郎物語』といった文学作品にも描かれていることです。
以前、一日一冊本を読むことを自慢にしている人が
「戦争中の思想の取り締まりは共産主義に限ったことであり、一般の人には関係ないことだった」
とかいった笑止千万なことをブログで書いていました。
一日一冊本を読んでいてもこの程度のリテラシー能力では、とあきれました。
これが苫米地英人博士の言う「スコトーマ」なのでしょう。
とはいえ私はこんな人に読書量も読者数もブログランキングでもかないません(悲しいけどこれ、現実なのよね)。
それはともかく、小林多喜二にしろ鶴彬にしろ新興俳句弾圧事件にしろ生活図画事件にしろ、文学に親しむ人々が思想犯として弾圧された事実はあります。
この言論弾圧は裁かれたのでしょうか?
私は子どもの頃、このような軍国主義による言論弾圧は昔の戦争中にあったことであって、今後はこのようなことはないと思っていました。
しかし、最近はそうも言っていられないような雰囲気があります。
「新しい戦前」という言葉も言われるようになってきました。
今後右傾化が進行して言論弾圧が厳しくなると、リベラルな立場から政府を批判することもある私のブログも弾圧の対象となっていくでしょう。
私が自由にブログを書いていられるのはいつまでなのでしょうか?
●ブクログ
https://booklog.jp/item/1/B000J8TXXS
https://booklog.jp/item/1/4337189106
●読書メーター
https://bookmeter.com/books/5233552
依光隆・絵
★このシリーズは他にこんな本もあります☆彡
09 北方領土物語 戸部新十郎
13 革命児チャンドラ・ボース 棟田博
マッカーサーと戦後日本 花村奨
【編集後記】
私が自由にブログを書いていられるのはいつまでなのでしょうか?
今度行われる衆議院選挙で決まるのではないでしょうか?
もしこれで極右勢力が圧勝して憲法が改悪されれば、言論の自由もなくなるでしょう。
今まで言論の自由を享受できていたことに感謝します。
無名に終わりましたが私は最後の瞬間までネットの片隅で戦後民主主義者の一人として、
言論において軍国主義勢力を批判し民主主義擁護の論陣を張っていくつもりであります。
[wikipedia:プライド・運命の瞬間]
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レンタルして見たが全く忘れてしまった
OLDIES 三丁目のブログ
戦犯の末裔よりも戦争に反対して弾圧された者の末裔を特集してほしい
https://diletanto.hateblo.jp/entry/20150804/p1
極右政党躍進前日に三木清の記事を読んでつぶやいた
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2025/07/19/090024
鶴彬を言論弾圧した当時の川柳界
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2024/11/09/162332
川柳で軍国主義を風刺した人々
現在の日本の平和主義・民主主義は復活した軍国主義に対抗できるか
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2025/08/24/081941
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