人間の脳は退化しているのか
アエラ2007年3月26日号
40年の実験で分かった新事実
子どもの脳退化
「主犯」を探せ
脳内の発達度を調べる「GO/NO-GO課題」なる実験があるという。
データは学者から学者へと引き継がれ、約40年分蓄積されている。
その実験結果がこのほど、信州大学の寺沢宏次助教授によって発表された。
「79年以降の変化は、脳の発達が未熟なまま小学校高学年になった子どもが増えていることを意味する。」
「抑制がきかない証拠。キレやすい子どもの特徴だ」
“科学的”立場を重視する人からは、この実験結果の“科学性”についての検討が必要だ、という疑問も出るかとは思われます。
しかしアエラは科学専門誌ではなく、一般向けの週刊誌なので、そこは詳しい検討はせず、この仮説が正しいという前提に立ち、その後の話を展開しています。
この実験結果を報告した寺沢助教授は、子どもの脳に変化が起こった原因を探っています。
<ゲームやテレビの時間が長くなったから>
この仮説に対する検討は、韓国で行われた実験では、微妙だが否定はできないというレベルだという。
かつて問題になった“ゲーム脳”仮説は、実験方法や立証の仕方が間違っているのではあるが、ゲーム脳そのものの真偽は明らかになっていないそうである。
米国の一部地域では、
「(テレビは)1日90分以内にとどめないと成績下降につながることがわかっています」
という通知書が配られているという。
しかし寺沢助教授は、テレビやゲームの影響は「主犯」格ではない、と思っています。
<「ボタン社会」主犯説>
子ども達の生活の変化は、「テレビ・ラジオ・ステレオの時間」が増えた代わりに、
「お手伝いの時間」が減ったことが大きい。
例えば料理において、料理する過程を知らず、完成した料理しか見なくなるように、料理を作るプロセスにおいてかけられる創意工夫を知る機会がなくなってしまう。
「生活がボタン一つで済むようになって、物事のプロセスで『なぜだろう』と考えたり、親や友人と話したりする場面が失われた。」
そのため、次元の高い行動を支配する脳の部分が活発に働くことができなくなる。(ゲームでは働かないという。)
「脳を働かせている時間が昔より激減しているのは間違いない。これが脳退化の主犯だろう」
身の回りを見ると、「ボタン社会」になって、調べものもインターネットで1クリックで答えが出るようになった。図書館で仲間と相談して、手分けして調べものをするなんて、ごく少数だろう。食事だって、ボタン一つできれいになる。車で知らない場所に行くにも、地図なんていらない。カーナビが案内してくれる。
このインターネットを例にした説明は実感できる。
確かに、インターネットの普及により、調べものをするのは非常に楽になった。
以前二十四節気などの暦関係のことに興味を持ち、調べたことがあった。インターネットの手段がなかったので、図書館で百科事典やら色々な本を引っ張り出して調べたものである。
ところが今では検索するだけで、ウィキペディアやら個人サイトなど、色々な説明を読むことができる。便利になったものである。
例えば、時々、懐かしいプロレスラーの名前など突然思い出して気になることがある。そんな時も検索してみると何らかの記述に辿り着くことができる。
検索履歴を見てみると、本当に色々な物事を調べている。
また、最近「電子辞書」なるものが普及しているという。私の高校や大学時代にはそんなものはなく、英語の授業の予習復習には辞書で単語を調べるのに膨大な時間がかかったものである。
そのようなことを思い出すと、確かに今は非常に便利になった。しかしその便利さが何かを奪っているという可能性もあるという。
しかし、労力が省かれて使えるようになった新たな時間をどう使うかが問題ではなかろうか。
便利になって生み出された時間的・精神的余裕をもっと高度で創造的なことに費やすという選択もあるのである。
便利になった生活をどう使って人生をどのように向上させていくか、自分で考えて行動していかねばならない。
この記事ではその後、昨年末に科学誌ネイチャーに掲載された、脳皮質の厚さを測定した実験についても触れられている。(脳皮質が厚いと、脳内の伝達回路がスムーズになるという)
知能平均群は7歳ごろがピーク
知能上群は9歳ごろがピーク
知能優秀群は13歳ごろまで厚さが増加していく
7歳にしろ13歳にしろ、脳皮質はこんな小さい頃がピークなのか。
この記事では、脳の働きを活発化させるために各地で模索されている方法を幾つか紹介している。
「今後は、5歳ごろまでに、いかにIQを121以上に上げるかが教育や保育の目標になる。IQを高める方法を研究すべき時代に突入した」(久保田競・日本福祉大教授)
「○○かもしれない、ということにみんなが飛びついている状態」
「脳の研究者として気になるのは、都合のいい解釈で、科学の名を借りて商品の宣伝に使われていること。」(以上、坂井克之・東大助教授)
アエラの同じ号には、
暴走する携帯
学校裏サイト
という記事が掲載されている。
学校が開設する公式サイトではなく、在学生有志が開設した非公式サイトが広がっている。
有意義な情報が得られ、息抜きになる一方で、いじめや退学にまで発展する悲劇もあるという。
私が高校生だった頃は、携帯電話すら存在しなかった。
今の高校生は、普通に携帯電話を持っているのだろうか。
私の高校時代、携帯電話や電子辞書の便利な恩恵に浴することはできなかったが、学校非公式掲示板に書き込まれる色々な雑音に気をとられることもなかったのである。
便利になったツールは、負の側面も持っている。
ツールが強力な分だけ、正の面も負の面も大きい。
負の側面の誘惑や陥穽に陥らず、有効に活用するリテラシーが必要となっているのである。
一方で、こんな記事も。
公立で勝つ 北国の公立高相次ぎ復活
東大合格公立勝ち組の授業
東大合格躍進はマニフェストにあり
受験一筋ではなく文武両道に力を入れる公立高が健闘しているという話。
この記事を読んでいて違和感を感じた語句が。
「進学指導重点校」
「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業の指定校」
つまり、単なる普通の“公立高”ではないのである。
進学のために特別扱いされている“重点校”“指定校”なのである。
聞くところによると最近は学区制というのがなくなっているとか。
となると進学に意欲のある生徒はこういった“重点校”“指定校”に集まりやすいだろう。
となるとやはり身近にある普通の“公立高”はかえって進学に不利になるのではないだろうか。
以上、3つの記事を読んだ感想を言うと、今後格差は大きくなっていくのではないかと。
生活が素晴らしく便利になっていくと、それにかまけて流されてしまったり負の側面・落とし穴にはまってしまう人と、自らを律して生活の向上を実現していく人との差は大きくなる。
学校間の格差も、“重点校”“指定校”といった形で広がっていく。
これらの格差が蓄積していけば、将来の差は圧倒的な形で現れるのではないだろうか。
と思えば、こんな記事も。
それでもCAになりたいっ!
空飛ぶ重労働に、新世代が大量進出
CAとはキャビン・アテンダントのこと。今ではスチュワーデスとは言わないのか。
スチュワーデスもといCAという職業は、私は今まで究極の勝ち組職業と思っていた。
ところが1994年に国内の航空業界では「契約制」が導入され、大手2社では入社後3年間は「契約社員」で「試用期間」扱いだという。
この待遇に切り替わった時、対象者は「年収が半減した」そうである。
正社員と契約では休日手当から宿泊先での食事手当まで差がつき、休みの申請も恐ろしくてできないという。
「契約期間は実家の仕送りがないと生活できないです。そのせいか、若い人ほどお嬢様比率が高まっている気がする」
こんな新入社員一律契約扱いという制度、世界的に見てどうだろうか。
先進民主国家として問題ないのだろうか。
勝ち組職業と思われているCAですらこのような実態である。
このような状況が進んでいけば、もはや一握りのわずかなエリート層以外はワーキングプアばかりという、プチ奴隷制のような暗黒時代が到来するかもしれない。
かと思えば、こんな記事も。
「脱プア」は議会を目指せ
統一地方選で「就活」
以前当選して話題になった某議員は歯科医の息子で政治家にコネもあり外資系の大企業でアルバイトしていたという資産家層であったが、この記事で紹介されている立候補者達はフリーターに近い立場である。
こういった風潮が格差制に向かう流れを変えていけるか???
ともかく人任せにしてはいられない、自分でよく考えて行動しなければ大変なことになる傾向がますます増えて行く時代ではなかろうか。
※もう一つ別のブログでは、もっと柔らかいテーマで書いておる。
よろしければそっちの方も見て下され。
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