OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

加納一朗「開化殺人帖」で比較する明治・平成言論弾圧帖

 開化殺人帖―懲役人源治の復讐 (BIG BOOKS) 
 
(あらすじ)
 明治14年、北海道開拓使官有物払下げ事件が発生。
 政府側の責任者の黒田清隆と政商側の五代友厚とのパイプ役を務めた五代の番頭4人衆の一人・肥塚茂吉が自宅で斬殺された。
 自由民権運動の壮士・北村源治が犯人とされ、懲役7年の刑を受けた。
 その刑期も終わりに近付いた頃。
 源治の元恋人・お駒が賊に襲われ、「文明新聞」を発行する前沢天風に助けられる。
 お駒の話により、源治逮捕に疑惑を感じた天風は調査に乗り出す。
 腐れ縁の中条小警部や梶原刑事の協力もあり、やがて背後の大きな陰謀が明らかに……。
 
(感想)
 巻頭に明治20年の東京市街図が掲載されていることから分かるように、明治20年当時の地理や社会状況が細かく描かれています。
 樋口一葉やフランス人画家ビゴーもゲスト出演しています。
   
 明治22年を舞台としたこの明治ミステリーを読んで、平成26年の社会状況も非常に相似形を成している、むしろ全く同じで変わっていないのではないか、と思いました。
   
 このミステリーでは、薩長閥の政治・経済支配が描かれています。
 対して平成26年では、安倍(山口閥)・麻生(九州閥)の政治・経済支配が行われています。
 明治時代には、薩長閥打破を叫んで、自由民権運動が起こるわけです。
 それに対して薩長閥は色々と弾圧を開始します。
 本書で記述がある事項を拾うだけでも、これだけのことがされています。
 
明治14年 北海道開拓使官有物払下げ事件
 
明治8年 讒謗律 wikipedia:讒謗律
 名誉毀損に対する処罰を定めた。
 新聞、風刺画等により官吏等当時の為政者を批判することを防ぐ為に公布された。
明治13年 集会条例 wikipedia:集会条例
 集会・結社の自由を規制した法律
明治20年  新聞紙条例 wikipedia:新聞紙条例
 新聞・雑誌による反政府的言論活動を封ずるため制定。
明治20年 1887年12月25日 保安条例 wikipedia:保安条例
 集会・結社を禁じ、自由民権運動の主要人物を東京から追放した。
 
平成25年 2013年12月6日 特定秘密保護法  wikipedia:特定秘密の保護に関する法律

   
 保安条例について、ウィキペディアなどでは「12月25日に制定、発布され、即日施行された」と書かれています。
 本書「開花殺人帖」でも少々詳しい記述があり、ちょっと引用してみます。
 

 危機を感じた政府は明治二十年に保安条例を発動し、東京市内の壮士五百七十名に対し、十二月三十一日午後三時までに、皇居外三里以上に退去するように命じた。条例は二十八日に公布され、即日発行であったからわずか三日の余裕しかなかった。 
 この措置によって民権運動は急激に力を失い、それまで運動の有力な母体であった政談演説会などが開催できなくなってしまった。

 細かな日付に違いがありますが、ともかく急で慌ただしい法律だったということが分かります。
 偶然なのかどうか、発布と試行が12月ということで、特定秘密保護法との類似を思わざるを得ません。
 どのような影響があるのか戦々恐々です。
 施行は2014年12月10日。
 
「この措置によって言論の自由は急激に力を失い」
「この措置によって戦後民主主義は急激に力を失い」
 
……とならなければいいのですが。
    
「今の日本で軍国主義なんかになるはずがない。杞憂だ。オオカミ少年だ」
とか言う能天気な人がいます。
 しかし、特定秘密保護法集団的自衛権解釈改憲など、一歩一歩着実に軍国主義に向かって行っています。
 明治時代の言論弾圧も、上に挙げたように一歩一歩着実に完成していったのです。
 国民は、歴史から学ぶことが必要です。
 ところが実際に歴史から学んでいるのは、弾圧される側の国民ではなく、弾圧する側で、「ナチスの手口から学ぶ」と言ったように、弾圧の手口を歴史から学んでいるのです。
 
 例えば、北海道開拓使官有物払下げ事件の際、藩閥支配が批判されたのですが、なぜか藩閥政治に批判的な大隈重信が辞任させられて幕引きとなりました。
 現在の日本政治も、ヘイトスピーチの対策が求められているのに、なぜか合法的な反政府デモを取り締まる方向に話が進むなど、批判されたことに対してまるっきり反対の都合のいい統制の方に持って行く詐欺的方法が共通しています。
    
 さて、本書『開化殺人帖』では、探偵役の前沢天風が、調査の結果明らかになった真実について
「公器で天下に訴える」
と言っています。
 ジャーナリズム精神、健在なり。
 ところが現在の日本では、首相が個人的に嫌いなメディアは誤報をきっかけに散々弾圧され、御用マスゴミも政権の尻馬に乗って叩きまくるわけです。言論の自殺行為としか思えません。
 
 本書を読むにつれ、現在の日本の言論状況は、大東亜戦争に向かって行った時代に逆戻りしつつあるのではないかと危機感を覚えたわけです。
 こんなこと書いている私も、特定秘密保護法に引っかかって逮捕されるかもしれません。
 ブログの更新が止まった時は、逮捕されたのだと思って下さい。
 というか、ブログ自体が削除されてしまうのだろうか。
 
 開化殺人帖―懲役人源治の復讐 (BIG BOOKS) 
 
日本の歴史をわかりやすく解説
 自由民権運動の衰えたのはいつ頃? 保安条例とは
  http://1950rekisi.blog.so-net.ne.jp/2014-07-15-4
デンマークを見る・読む・聞く・語る
 デンマーク番外編 ―「日本を取り戻す」って?「古い日本?」
  http://blogs.yahoo.co.jp/kopen349/9582588.html


 wikipedia:開拓使官有物払下げ事件
 wikipedia:五代友厚
 wikipedia:ジョルジュ・ビゴー


北海道開拓使官有物払い下げ事件の内容を詳しく教えていただけないでしょうか?
  http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1336515513
社会です 1881年『開拓使官有物払下げ事件』について教えてください 今日社...
  http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1449054074


圏外の日乘
 開化殺人帖シリーズ
  http://ameblo.jp/oldstudent/entry-11447656117.html


ブクログ http://booklog.jp/item/1/4791304438
ブックアサヒコム なし
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