香具師口上集 (続)
帯付き画像はこちら 表 裏
第一章 香具師口上集
第二章 香具師歴史譚
第三章 香具師人物伝
現代の香具師、司会者
山春親分
女寅さん物語
第一章の最後に、
啖呵売番外編 湊川神社、新ネタ打ちおろしの巻
というエピソードが紹介されています。
湊川神社のお祭りの日、演歌師渡辺忠正の粉浜の家に若い衆がゴロゴロしていた。
著者室町氏は
「このかきいれ時に何遊んでるのか、湊川神社に商売に行かなあかん」
と言って懐炉灰を買ってこさせ、それを下痢止めの薬に仕立てて啖呵を創作し、売りさばいて儲けたとか。
その後警察に取り調べを受けたが無事釈放されたという。
昔は灰を下痢止めに使っていたらしい。
それでこの粉浜という地名、南海電車の粉浜らしい。
私は以前この粉浜の近くに住んでいました。知ってる土地が出ると身近に感じます。
wikipedia:粉浜 wikipedia:粉浜駅
一寸法師 あんりゅーくん
http://sakai.areablog.jp/blog/1000026345/p10403057c.html
↑ここから少し北に行くと粉浜です。
しかしあの粉浜から湊川とは、相当遠くありませんか?
さて、このように啖呵を創作して実際に香具師としても活動し、このような香具師の口上を集めて本にした室町京之介という方は、どのような方か?
本の記述から判断するに、その筋では大物の山田春雄親分の側近というか、身近にいた方のようです。
wikipedia:山田春雄
【現代芸能】吉本興業04--「ヨシモト」と闇勢力 2010_05_21_[FRI]
http://172305071.blogspot.jp/2010/05/04-20100521fri.html
第三章の女寅さん物語では、室町師匠が山田親分の代理で家賃を集めに行く記述が出てきます。
さてその女寅さん物語、露天商から一旗挙げた小泉一兵衛・咲夫婦を主人公に、二代目広沢虎造やら山春親分やら著者自身まで登場するオールスターキャストでございます。
小泉咲が金歯の親方に相談に行くと、親方は森永の喫茶店で“川端先生”なる方と面談中。
何と川端先生とは川端康成のことで、小説の取材に来ていたとのこと。
その小説は『浅草紅団』として世に出たとか。
さらに、作家の武田鱗太郎は作者室町京之介師匠の酒と遊びの弟分だったとか。
wikipedia:浅草紅団
wikipedia:武田麟太郎
wikipedia:広沢虎造
第一章 香具師口上集 に、人間ポンプ有光敏雄の口上もあります。
人間ポンプの驚異の芸を見た著者室町氏はご本人に思ったことをズバリ指摘したという。
「もしかしたら、悲しい事だけど、生理的現象なんかじゃなくて、出生の秘密というか、生まれつきの欠陥、しかも現在の人間社会では極めて稀れな肉体の構成―それ以外は絶対に無いと思うんだ」
「いいとこ見てますねえ。図星ですよ」
と有光氏は種を明かしてくれたそう。
有光氏は外からは分からない三つ口(兎口)で、
「上唇の中から鼻の裏側まで裂けて続いてその終わりの上顎にポッカリ穴が開いているんだ」
この上顎の穴に舌で金魚を押し込み、しゃっくりをして取り出しているという。
胃の中で針に糸を通す芸については、先に糸の通った針を飲んでこの穴に入れておくのだそう。
普通の人体構造ではあり得ない芸は、やはり普通と違う人体構造だからこそできていたのだった。
有光氏については納得したのですが、園部志郎師匠や安田里美師匠も同じような仕組みだったのでしょうか。
■[学問]【超常現象】人間ポンプ・安田里美 タネも仕掛けも……?【物理現象を超越】
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20161021/p1
本書の終わりで室町師はこう書かれています。
「こう書き続けてきたけれど、私と坂野以外は凡てこの世の人ではない。でも、二人は生きて香具師のいろいろを追究している。しかし、香具師の現実は、千五百年伝え伝えた香具師文化の灯は、歴史と共に消えようとしている。」
ここで触れられている“坂野”とは、坂野比呂志師匠のこと。
坂野比呂志
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BA%E4%CC%EE%C8%E6%CF%A4%BB%D6
浅草雑芸団(坂野比呂志大道芸塾)
http://zatugeidan.web.fc2.com/
https://www.facebook.com/zatugeidan/
本書の折り込み図書案内には、カセットテープ版香具師口上集の広告が掲載されています。
このテープの吹き込みを行ったのが坂野師匠です。
室町師匠が書かれた本書(続編)と本編の2冊を再編集した新版では、このテープがCD付録としてついてきます。
これはお得だ、売り切れる前に買わなきゃ損だよ!
さて、本書の出版元は創拓社さん。
折り込み図書案内を見ると、なかなか内容のしっかりした学術・教養系の啓蒙書を出版していたようです。
「バクの本」「バク・サイエンス」というレーベルもあったようです。
現在も存続しているようですが、事業の中心は小中学生の学習や家庭教師に移ったようで、出版物もそれに関するものが中心のようです。
学習書中心の出版社から香具師の口上集が出ているのも面白いのですが、日本語学習のくくりで出ているようです。
ほんと、香具師の口上なんて最近は寅さんの映画くらいでしか聞くことありませんが、声に出して覚えて継承していきたいものですね。
株式会社創拓社出版 http://www.soutakusha.jp/
株式会社創拓社出版 出版部
http://www.soutakusha.co.jp/
http://www.soutakusha.co.jp/uretemasu.htm
wikipedia:室町京之介
書店員に聞く 読書でわっしょい
http://book.asahi.com/reviews/column/2012091400012.html
■[ありゃま紀行]見世物大博覧会@国立民族学博物館
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20160922/p1
■[学問]日本見世物世紀末 目森一喜
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20161011/p1
■[学問]【超常現象】人間ポンプ・安田里美 タネも仕掛けも……?【物理現象を超越】
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20161021/p1
■[学問]見世物小屋の文化誌
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20161105/p1
ブクログ http://booklog.jp/item/1/4871380416
読書ログ http://www.dokusho-log.com/b/4871380416/
本が好き! http://www.honzuki.jp/user/homepage/no11083/index.html
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