OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

わが青春・思索者の日記 三木清

 わが青春 わが青春  
  
 三木清の大学時代の回想記。短い文章ですが、色々な人名が登場します。一流の人間は学生時代から一流の交友関係を持っているのですね。

「大学時代、私は一年ほどかなり熱心に詩を作ったことがある。できるといつも谷川徹三に見せて批評してもらった」
 
 谷川徹三と詩を論じるとはすごい。三木清には詩の心得もあったのです。確かに、『私の果樹園』は見事な詩ですね。

 wikipedia:谷川徹三

 
 他、一燈園や大本といった歴史的用語も登場します。
 
 wikipedia:西田幾多郎
 wikipedia:西田天香
 wikipedia:一燈園
 wikipedia:大本


「変り者といえば、私の高等学校の同級生で、遅れて京都に来た小田秀人などその随一で、大学時代には熱心に詩を作っていたけれども、しばらく会わないうちに心霊術に凝こり、やがて大本教になったりしたが、なかなか秀才であった」
  
 小田秀人さんは詩人であり霊現象の研究者でもあり、著書も出されています。やはり一流の人は一流の交流関係があるのですね。

  超心霊学―三次元から四次元へ、四次元から五次元へ (1983年)


「大学時代、私は書物からよりも人間から多く影響を受けた。もしくは受けることができた。そしてそれを私ははなはだ幸福なことに思っている」
  
「当時の京都の文科大学は、日本文化史上における一つの壮観であるといっても過言ではないであろう。哲学の西田幾多郎哲学史の朝永三十郎、美学の深田康算、西洋史の坂口昴、支那学の内藤湖南、日本史の内田銀蔵、等々、全国から集まった錚々たる学者たちがその活動の最盛期にあった。それに私が京都へ行った年に波多野精一先生が東京から、またその翌年には田辺元先生が東北から、京都へ来られた。この時代に私は学生であったことを、誇りと感謝なしに回想することができない」

↑このような記述を読むと私は本当にうらやましく思う。私もこのような学生生活を送りたかった。
 しかし現実には、中学3年から精神を病んで高校大学と、交友関係を結べないことは当然のこと、一人で完結できるはずの読書や学問や創作活動も何もかもできなくなってしまった。ただ生ける恥さらしとして他人に迷惑をかけながら生き、時間だけ空しく過ぎて人生から脱落していったのである。
 私には青春なんてものはなかった。ただ精神的に病んでいただけだった。

青空文庫 図書カード:No.46222 わが青春 三木清 
 http://www.aozora.gr.jp/cards/000218/card46222.html
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ブクログ
 http://booklog.jp/item/7/046222
 http://booklog.jp/item/1/B009B1FWQ6
読書メーター https://bookmeter.com/books/5628672



 思索者の日記 思索者の日記

 1939(昭和14)年1月5日の三木清の一日。1945年に獄死する6年前の正月です。

「私の咳はかなり有名で、近所の子供はコンコンのおじさんと呼んでいる」
「私が外出先から帰って来るときには、家に入らない前に咳でわかる、と亡妻はいっていたし、私が在宅か否かは咳が聞えるかどうかで判断することができる、と隣の人たちはいっている」
↑ちょっと近所迷惑的。当時は結核になる人も多かったはずですが、結核の心配はしなかったのでしょうか。

「正月は田舎がなつかしい。東京には「正月」がない」
↑現在も季節感が薄れる傾向ありますが、この当時にもこんなこと書かれています。
 これは、戦争で正月らしさがないということを暗に示唆しているのでしょうか。

「帰ってみると、机の上に子供が私の誕生日のために祝いの手紙と贈物のバットとを載せている。今日は私の誕生日」
↑野球のバットかと思いきや、煙草の銘柄のようです。当時は子どもも煙草を買えたのでしょうか。というより、禁煙した方がいいですよ。
 
 wikipedia:ゴールデンバット


「自然の死、極めて日常的に死ぬることが日本人の願望なのである」
↑しかし三木清は日常的な死を迎えることはできず、悲劇的死を迎えたのだった。

「私はかつて日本人には悲劇的精神がないからナチス流の政治は日本には適しないと書いたことがある。今日支那事変について「東洋の悲劇」などということを述べている日本主義者もあるが、日本主義者が悲劇的精神を説くのは日本主義の変質ではなかろうか」
↑当時も日本主義の変質について論じられている。今また論じることが必要な時流ではないのか。

青空文庫 図書カード:No.46215 思索者の日記 三木清 
 http://www.aozora.gr.jp/cards/000218/card46215.html
  http://www.aozora.gr.jp/cards/000218/files/46215_25709.html


ブクログ
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読書メーター https://bookmeter.com/books/5628671


■[速読読書]私の果樹園・軽蔑された翻訳 三木清
   http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20170619/p1
■[速読読書]如何に読書すべきか 三木清
   http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20170506/p1
■[速読読書]書物の倫理 三木清
   http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20170202/p1

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