OLDIES 三丁目のブログ

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宮沢賢治『風の又三郎』

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の感想文。
 
宮沢賢治風の又三郎』(5月7日〜5月16日)
 
 定番の名作が登場。
 冒頭と最後の章に挿入されている
「どっどど どどうど……」
の詩、風の又三郎のテーマソングとでもいうべきものですが、これが効果的です。
 いつか、百貨店か博物館で開かれた宮沢賢治展に行った時、この詩が曲になって流れていました。
 これは、賢治自ら作曲したのだろうか、それとも映画用に曲をつけたものだろうか。
 宮沢賢治は幾つか曲も残していて、『星めぐりの歌』はいい曲だと思います。
 田舎の小学校に突然転校してきた高田三郎
 小学生達は、彼を“風の又三郎”だと思い込みます。
 この“風の又三郎”というのは、その地方に言い伝えられている伝説上の人物なんだろうか。
 小学生達は三郎を別格視しながらも、次第に仲間に入れていきます。
 
 同質的な村の子ども達の集団に一人入ってきた都会の少年・高田三郎
 この、出会いと融和の過程が興味深い。
 いじめ、仲間外れといった陰湿なものはなく、子ども達は違和感を感じながらも徐々に受け入れていき、三郎も徐々になじんでいく。
 しかし完全に仲間入りしたのではなく、子ども達の間には少しばかり、三郎を別格視する雰囲気が残っている。
 この微妙な関係が面白い。
 いつだったか、ぶどうを取りに行った時、子ども達の一人と三郎が言い合いのようになる時の描写が面白い。
「それから、それから」
と三郎が相手を問い詰め、降参させるという、言葉遊び的要素がある。
 こんな風にケンカや争いが収まれば、世の中はもっと住みよくなるだろう。
 
 私も幼い頃は田舎のような所に住んでいたので、この子ども達の描写にはある種懐かしさを感じる。
 日本人の小学生時代の一般的な描写だろう。
 今の子ども達が成長後この物語を読んだ時にも、同じような懐かしさを感じるのだろうか。
 
 驚くほど田舎の子ども達になじんでいた三郎だったが、突然またいなくなる。
 この突然の登場と退場が、三郎を現実の人間でないような、幻の存在かのような効果をあげている。
 三郎が何かするごとに風が吹く、という演出もうまい。
 
 しかし、この『風の又三郎』は、宮沢賢治の描いた作品の中では、最も具体的に描かれている作品ではないだろうか。
銀河鉄道の夜』は宇宙の物語であるし、登場人物もカタカナ名となっている。
グスコーブドリの伝記』も、登場人物の名前は、より一層無国籍的である。
 この作品は先駆形では、バケモノの世界の物語という設定だった。
(『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』。キーワードがあるんですね。)
 他の作品も、幻想的な世界を舞台にしたものが多いです。
 そんな中、『風の又三郎』は、どこにでもあるような日本の田舎の小学校を舞台とし、
登場人物も一昔前まで多かった一般的な日本人名となっています。
 日常生活のすぐそばに不思議なことがあるかもしれないという、誰にでもある子ども時代を舞台にした名作だと思います。
 
 転校というのは、子ども時代には一大事件です。
 しかし、大人になっても、転任や転職といったことはよくあります。
 大人のビジネス社会に現れた『風の又三郎』という、大人版『風の又三郎』というテーマがあっても面白いと思います。

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