OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

SFの古典・宇宙戦争

 The War of the Worlds (Tor Classics) The War of the Worlds (Tor Classics)

映画『宇宙戦争』公式サイト http://www.uchu-sensou.jp/
  6月29日(水)全世界同時超拡大ロードショー

◆◇◆◇◆◇少年少女世界の名作文学ブログ・完全(ブログ)版◇◆◇◆◇◆
     HP: http://www.nazegaku.com
    メルマガ: http://nazede.gozaru.jp/mmm.html
  ウェブログ: http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20040404
   第5回配本  SFの古典・宇宙戦争
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
(今回、長くならなかったので完全版とメルマガ版は同じとなっています)
  
 さて今回は、『宇宙戦争』です。
 TVのCMで『宇宙戦争』今夏公開、というのを初めて見た時、まさかそれが
H.G.ウェルズの『宇宙戦争』だとは思いもしませんでした。
 こんな古典的SFを再び映画化、とはまた嬉しいことです。
 この映画、一度1953年に映画化されています。
 宇宙戦争 [DVD] 宇宙戦争 [DVD]
 TVで見たことありますが、確か火星人は3本足のロボットではなく、三角形のU
FOに乗っていたように思います。
 果たして今回はどんな戦闘機に乗って現れるのやら?
 原作も映画もSFの古典とされるこの作品、21世紀にどんな形で描かれるのでし
ょうか。楽しみです。
 ◇◆◇  ◆◇◆  書誌的事項 ◇◆◇  ◆◇◆
 少年少女世界の名作文学(名作文学50巻版)
     (掲載なし)
 少年少女世界の名作(名作55巻版)7 イギリス編5(1972年)
   『宇宙戦争』 ハーバード・ジョージ・ウェルズ原作
              及川甚喜(文) 中西立太(絵)
 ◆◇◆  ◇◆◇  ◆◇◆  ◇◆◇  ◆◇◆  ◇◆◇
 さてこの作品、小学館の名作55巻版に収録されていました。
 名作文学50巻版にはその代わりに『透明人間』が収録されています。
 名作全集に『宇宙戦争』とはまたすごい組み合わせですが、この『宇宙戦争』、
私が子どもの頃には各出版社の少年少女向け名作全集にはよく入っていました。
 複数の少年少女向け『宇宙戦争』が出ていたように思うのですが、現在はどう
なっているのでしょうか。
  
 どうやら講談社青い鳥文庫が孤軍奮闘しているようです。
 宇宙戦争 (講談社青い鳥文庫) 宇宙戦争 (講談社青い鳥文庫)
 
 完訳版の方は、創元SF文庫から出ていました。私はまだ創元SF文庫が創元推
理文庫から独立していない頃のバージョンで読みました。
 今夏の映画化に合わせて創元SF文庫からも新訳が出、さらに角川、ハヤカワか
らも出ています。
 宇宙戦争 (創元SF文庫) 宇宙戦争 (創元SF文庫)
  ↑初版本のさし絵が掲載されています。
 宇宙戦争 (角川文庫) 宇宙戦争 (角川文庫)
  ↑私が見た書店では一番売れていて、1冊しか残っていませんでした。
 宇宙戦争 (ハヤカワ文庫SF) 宇宙戦争 (ハヤカワ文庫SF)
  ↑アーサー・C・クラークの序文付き。文字が大きくて読みやすい。解説が詳しい。
 
 さてストーリーですが、火星から地球に向けて侵略軍が来襲、地球の人々が逃げ
回るというものです。
 ガンダムのように敵と味方が派出にバトルを繰り広げる、というものではありま
せん。
 宇宙を越えてやって来た火星人と、まだ人工衛星すら実現していなかった1897年
当時の地球との科学力の差を考えれば、それも仕方のないことかもしれません。
 
 主人公の「ぼく」の住むロンドン近郊の町のはずれに、火星人の入った円筒が落
下するところから物語は始まります。
 火星人は落下してすぐに活動を開始するわけではなく、しばらく息をひそめてい
ます。
 そこで周囲に物見高い人々が集まり、色々な出来事が起こるわけです。
 
 この段階での主人公は、物語の語り手の友人である天文学者のオグルビーです。
 彼は円筒の発見を第一に発見した人物であり、その後も穴の底に下りて円筒の掘
削作業をリードします。
 
 オグルビーとは変わった名前で、印象に残ったものです。
 その後、プロ野球にオグリビーという選手が来日して活躍し、連日新聞に出てい
ましたが、そんな時も『宇宙戦争』のオグルビーを思い出していたという、野球よ
りもSF好き・読書好きな私です。
「オグルビー」で検索すれば、広告業界に著名人がいるらしいですが、やはり私に
とってはオグルビーといえば『宇宙戦争』です。
 
 円筒の周りに集まった人々は、折角地球に来訪した火星人が中で焼け死んではか
わいそうだ、何とか助けてやらなければならない、と色々心配して穴を掘ったりし
ます。
 火星人の目的も知らないで健気な行動です。
 こういった行き違い、現代でもよくあることです。
 作品執筆から100年以上経過した21世紀の現代でも、こういった悲劇はなくなるど
ころか、ますますひどくなっているようです。
 
 やがて火星人は正体を現し、熱線で人々を焼き払い、各都市の破壊を開始します。
 そしてオグルビーも、そんな状況の中、火星人の熱線によって焼き殺されてしまいます。
 原作では、白旗を掲げてコンタクトを図った使節団が焼き殺される場面がありました。
(今回読んだ少年少女向け翻訳では、このショッキングなシーンはカットされていました。)
 これを読んだ当時は普通に読み流していたシーンですが、実に悲しいシーンであります。
 人類は21世紀を迎えましたが、誠意を持って対応しても相手に通じない状況は、
小は身近な対人関係から大は国際関係まで、依然としてごく当然のように残っています。
一体いつになれば、暴力には暴力で対抗する連鎖は止めることができるのでしょうか。
 
 火星からは第2、第3の援軍も続々と登場、町はどんどん破壊されていき、人々
は逃げ惑います。
 火星人の戦闘機は、三本足で動くロボットです。
 圧倒的な武力の差で、人々は逃げるしかないという無力感。
 主人公の「ぼく」も、妻と離れ離れとなり、火星人に見つかりそうになりながら
逃げ回ります。
 
 圧倒的に劣勢な地球人側でも戦果を上げたことがあります。
 一回目は、大砲で火星人のロボットを破壊しました。
 そしてもう一つは、軍艦「雷号」(サンダーチャイルド号)の活躍により、三
体の火星ロボットが破壊されたことです。
 そのような戦果もありましたが、でもやっぱり、大部分は地球人が圧倒的にやら
れています。
 
 意思の疎通が図れず、憎しみだけで徹底的な戦闘が行われるというこの展開、先
にも述べましたが、憎しみの連鎖が止まらず戦争が絶えない現在に改めて読んでみ
ると、実に悲しい物語だと思います。
 
 現在も地球上で続いている争いは、火星人が相手のように、意思が全く通じない
ものでしょうか?
 言葉も姿形も違う宇宙人ならともかく、一応は同じ地球人なのだから、何とか悲劇の連
鎖を止められないのでしょうか?
 このような時代、古典的SFである『宇宙戦争』を読み返してみるのも意義ある
ことかもしれません。
 
宇宙戦争』 (トム・クルーズ主演) (DVD予約受付中)
 宇宙戦争 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD] 宇宙戦争 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
映画『宇宙戦争』公式サイト http://www.uchu-sensou.jp/
  6月29日(水)全世界同時超拡大ロードショー
 
 火星人の攻撃隊は、地球上の細菌に感染して死んでしまいました。
 しかし、これでめでたしめでたしで終わっていいのでしょうか。
 優れた科学によって細菌対策を行った第2陣が攻めて来ないのでしょうか。
 
 そういった観点から書かれた作品も存在するようです。
 第二次宇宙戦争―マルス1938 (ワニ・ノベルス) 第二次宇宙戦争―マルス1938 (ワニ・ノベルス)
 第2次宇宙戦争 (SFノベルス) 第2次宇宙戦争 (SFノベルス)
  ↑『第2次宇宙戦争』ジョージ・H・スミス/原作 杉山啓二郎訳 久保書店 (1978)
 
 火星人類の逆襲 (新潮文庫) 火星人類の逆襲 (新潮文庫)
 
 オーソン・ウェルズがラジオ番組で放送した『宇宙戦争』は、本当のことだと思
い込んだ人々により、全米にパニックが起こされました。
 その時の歴史的なラジオ番組がテキスト・全訳付きCDとなっています。
 H.G.ウェルズの「宇宙戦争」 ミステリー劇場 3 (全米ラジオドラマ傑作選 ミステリー劇場 3) H.G.ウェルズの「宇宙戦争」 ミステリー劇場 3 (全米ラジオドラマ傑作選 ミステリー劇場 3)
 
 シャーロック・ホームズの宇宙戦争 (創元SF文庫) シャーロック・ホームズの宇宙戦争 (創元SF文庫)
  ↑シャーロック・ホームズとチャレンジャー教授が陰の功労者だった!?
  映画化すれば面白いのでは?この名作が絶版だったとは。
  ぜひ図書館で探して読んで下さい。
 凹村戦争(おうそんせんそう) (Jコレクション) 凹村戦争(おうそんせんそう) (Jコレクション)
  ↑二人のウェルズ氏に捧げられた作品。ほろ苦青春味。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ◇◇◇なぜ学 読書調査◇◇◇
  日本人の読書体験を徹底調査!!……とは大袈裟な。

  私が子どもの頃は、子ども向け翻訳が複数出ていた定番作品だったもんです。
  この作品の読書体験を問う!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   【 結 果 発 表 】
(問い)H・G・ウェルズの『宇宙戦争』を読んだことありますか。
 
原文で読んだことある    (1票) 2%
完訳版で読んだことある   (11票) 21%
抄訳版で読んだことある   (3票) 6%
絵本で読んだことある    (2票) 4%
マンガで読んだことある   (1票) 2%
ない            (33票) 63%
その他(コメントお願いします) (1票) 2%
 
開始:2005年06月12日/締切:2005年06月20日18時
投票数:52票/コメント数:4件

   【コメント】
2005年06月12日21時56分15秒 お名前:なぜ学
コメント:
 メルマガ最新号では、映画公開にちなみ、ウェルズの『宇宙戦争』を取り上げてみました。
   http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20050612
 私が子どもの頃は、少年少女向けの翻訳が数種類出ているほどのメジャーな作品でした。
 完訳版は、古くから創元SF文庫(創元推理文庫)から入手しやすい版でした。
 今回の映画化を機に、創元、角川、早川の各文庫から新訳が出ています。
 映画館へは滅多に行かない私でも、原作の魅力で今回ばかりは映画館に見に行くかもしれません。
●完訳版で読んだことある
 
2005年06月13日22時45分58秒 お名前:Mylene
コメント:
 文学全集に入っているのを読んだ事が有るが、完訳か抄訳かは分からない、
 尚、「宇宙戦争」の後日談が、「エイリアンウォーズ」という邦題で、TVシリーズ化されて、それも見ていた。

 
2005年06月15日10時05分22秒 お名前:たかい
コメント:
 そんなに〜版ってあったんですか?。

 
2005年06月17日22時48分11秒 お名前:ひろき(H.O.)
コメント:
 どんなストーリーかも知りません。

(アンケート結果を見て)
 読んだことない方が結構多いですね。
 SFの古典は遠くなりにけりというところでしょうか。
ハリー・ポッター』や『ズッコケ探偵団』なら、もっと読んだ人は多くなるでしょう。
 ということは、子ども時代に読む本が変わっていっているということでしょうか。
 Myleneさんが触れていた続編のTVシリーズとは、面白そうです。
 検索してみると、結構新しい作品ではないですか。
 何とこの番組、スーパーチャンネルで放送されるようです。
   http://www.super-ch.com/line/alienwars/
 しかしスーパーチャンネルとは何なのか?
 衛星放送やケーブルTVとは縁なく地上波放送しか知らない私には未知の世界です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【今月のトラックバックコーナー】
 
 ブログを持たれている方とのトラックバック推進のために、特にコーナーを設け
ます。トラックバック、遠慮なくどんどんやって下さい。お待ちしております。
 
テーマ1)今回のメルマガに対する感想
テーマ2)『宇宙戦争』に関する話題
      原作や映画に限らず何でも。
テーマ3)小学生時代に読んだ本の話題・懐かしい思い出、
     SF小説の思い出なども。
テーマ4)特に、6月29日に公開される映画『宇宙戦争』について。
テーマ5)その他何でも
    http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20050612
  にTB、コメントお寄せ下さい。お待ちしています。

6月16日、yumicの部屋 http://orange.ap.teacup.com/yumic/
 のyumicさんからTB&コメントを頂きました。
 
宇宙戦争 H・Gウエルズ」 http://orange.ap.teacup.com/yumic/154.html
……ありがとうございます。コメント入れさせて頂きました。
  その後、映画も観に行かれ、レポートを書かれています。
   http://orange.ap.teacup.com/yumic/164.html

(おすすめサイト)
  ☆宇宙人がせめてきた――パニックものがたり
    http://sfclub.web.infoseek.co.jp/uchuujinga.htm
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 あなたは
     まぐまぐより 98人(+3)
    E−マガジンより 8名(+1)
    まぐびーより  2名(+2)
  メルマガ天国より  32名
    めろんぱんより 12名
 マガジンライフより 298人(+11)

 の名作文学について考える少年少女の感性を忘れないヒトのうちの一人です。
 
 ※少年少女世界の名作文学ブログ(index)
    http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20040404