OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

アニメ版『三丁目の夕日』を応援しよう会(5)

 アニメ版『三丁目の夕日』、サンテレビにて毎朝7時半より再放送中!
 意外と埋もれた名作なので、記録を取るのも有意義かと思い、視聴レポートを行います。
 
弟14回
●所得倍増  脚本 並木敏 演出 原田益次
 三丁目の魚屋に、阿古木奈男なる人物が、土地を売ってくれとやって来る。値上がり確実だからということで、当時の相場の何倍もの値段で購入するという。魚屋の主人は反対したが、息子はそれに反対、ついに殴り合いの喧嘩になる。ついに奥さんまでも息子を応援する始末。居酒屋「やまふじ」で「こつこつ働くのは時代遅れなんだろうか」「こんな時代になったんだよ」と話していると、ラジオで土地売買の詐欺師が逮捕されたニュースが流れる。
 今まで奥さんに苦労ばかりさせてきたと反省した魚屋の主人は、「レンジャー部隊ブームだからな」と一家で旅行に行くことにする。
 
 やっぱり、うまいもうけ話には罠があるもんですねえ。
 このアニメの舞台となる昭和30年代から時代は大きく変わりました。それでも、こつこつと働く者が働いた分だけ報われる時代であってほしいものです。
 
 名前と風体からして一見して悪人と分かった阿古木奈男は白いスーツを着ていた。そういえば第3回『風車』でヨウちゃんを誘拐した催眠術を使う男も白いスーツを着ていました。映画『アンタッチャブル』で、アル・カポネの第一の子分ニティも白いスーツだったし、伊丹十三の『たんぽぽ』でも、暴力団風の男は白いスーツを着ていた。白いスーツは悪役が着るもんだろうか。カーネル・サンダースは善い人だが、プロレスの悪役マネージャーのカーネル・パーカーは“悪のカーネル・サンダース”と呼ばれていた。
 
 夕焼けの詩 41 おばあちゃん子 (ビッグコミックス) 夕焼けの詩 42 迷子 (ビッグコミックス) 夕焼けの詩 43 写真館の美女 (ビッグコミックス) 夕焼けの詩 44 ハロウィン (ビッグコミックス)
 
●転校生  演出 原田益次 (脚本のクレジットはなし)
 三丁目に突然現れた不思議な転校生。木登りやブランコ飛びがうまく、“鬼太郎”というあだなを付けられて子ども達の人気者になる。“鬼太郎”の正体は、新しく赴任してきた校長先生の娘であった。
 
 鬼太郎の提案でかまくらをつくると、そこに校長先生が鬼の面をつけて現れます。なかなか立派な校長先生ではありませんか。
 面白いキャラの鬼太郎ですが、その後レギュラーメンバー化せず。
  




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第15回
●いつでも夢を  演出 原田益次 (脚本のクレジットはなし)
 八百屋の八尾銀商店のおかみさんは嫁いでからご主人の八百屋の仕事を手伝い続けて何十年。ある日、自分がいつの間にか老けていることに気付く。そんな時、TVの「奥様変身コーナー」から当選したという知らせが来る。家族の誰も応募した覚えはないのだが、とにかく出演してみることに。プロのメークや衣装により、おかみさんは見違えるほどになる。その日以来、おかみさんは化粧や衣装や髪型を気にして仕事が手につかなくなる。家事も滞り、家族は困るが、ご主人は
「今まで苦労させてきたんだ。しばらく我慢しよう」と大目に見る。
 突然、おかみさんの顔がただれる。病院では、慣れない化粧をしたことによる皮膚炎と診断された。その日以来、おかみさんはまた以前のように仕事に精を出すようになる。
 しかし一体誰が「奥様変身コーナー」に応募したのか、謎のままであった。
 
 夕焼けの詩 45 居酒屋やまふじ (ビッグコミックス) 夕焼けの詩 46 ガスタンクの秘密 (ビッグコミックス) 夕焼けの詩―三丁目の夕日 (47) (ビッグコミックス) 夕焼けの詩―三丁目の夕日 (48) (ビッグコミックス)
    
●スカスカ人生  脚本 並木敏  演出 棚澤隆
 芥川賞に挑戦し続けている茶川先生、また落選してしまいました。
 自分の人生は何だったんだろうと気落ちする茶川先生。
 おいのヒロミが、ラブレターの代筆を頼みに来たので書いてやっていると、いじめっ子の少年がクジを引きに来てスカを引く。「あいつ、いつもスカを引いていくわい」
 町で、そのいじめっ子の少年の日光カメラにボールが当たり、少年がボールの持ち主の子を殴ると、その母親から叱られるのを目撃する。いつも運が悪く誤解されて嫌われるのが昔の自分のようだと茶川先生は同情する。
 落ちていた雑誌の文通欄で文通相手を見つけ、文通を始める茶川先生。
 いじめっ子の少年がクジを引きに来た時、わざと1等賞を当てさせてやり、特製カメラを進呈する。少年は格好つけて女の子を撮ってやろうとしたが、そのカメラはビックリカメラであったためネズミが飛び出し、女の子を怒らせてしまう。
 文通相手に写真を求められ、送ったところ、文通を断られる茶川先生。
 いじめっ子も何だか怒っているようで、「何じゃい。折角一等を引かしてやったのに」。
 茶川先生はヒロミはうまくいってるだろうかと思いをはせる。
 ヒロミは結局うまくいかなかったようで、交際は断られ、ラブレターも全部送り返されてくる。返されてきたラブレターを川に捨てると、「スカ」という文字が浮き出てくる。
 
 駄菓子屋をしながら作家を目指す茶川先生。実は私が一番好きなキャラクターです。
 後の方の作品では、子供向け雑誌で連載を持って人気を得て、雑誌社の取材が来るというエピソードもありましたが、このエピソードではまだ無名時代のようです。
 ハッピーエンドで終わることの多い『三丁目の夕日』ですが、茶川先生が主人公のエピソードの場合、あまりいいことなく「えっ、これで終わってしまうの?」というエピソードが多いように思うのですが、どうでしょうか。
 茶川先生、子供たちにはぶっきらぼうで無愛想で、一平達も「感じ悪いな」「あの店、スカばっかりだ」と言っています。
 そういえば私が子どもの頃、近所に幾つかあった駄菓子屋のおじいさんも、あんな感じの人が多かったですね。
 
 ところで、このエピソードに出てくるクジの仕組みがよく分かりません。水に濡らすと文字が出てくるようです。茶川先生が文字を書いているような場面が出てくるのですが、当時も店主が書いていたのでしょうか。また、わざと1等賞を当てさせてやることなんかできたのでしょうか。
 それに1等賞で特製カメラをもらったいじめっ子、びっくりカメラと本物のカメラの区別がつかなかったのでしょうか。まさか駄菓子の景品で本物のカメラがもらえるわけないでしょうに。本物のカメラであっても、試し撮りせずにいきなり人を撮ろうとするなんて。
 また、ラブレターを送り返されたヒロミ。本人も言ってましたが、何でラブレターまで送り返してくるんでしょうか。実は茶川先生がストレス解消のために水出し文字で「スカ」と書いていて、川に流すと浮き上がってくるのですが、まさかこれが相手に読まれたわけでもあるまいに。
……とまあ、出てくる人が少しずつ悲しい思いをするエピソードでした。茶川先生中心になると、こんな話が多いような気がします。
  




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第16回
●アイドルの条件  脚本 並木敏  演出 前園文夫
 朝、日本人がミス・ユニバースに選ばれたというニュースを新聞を読んでいた父親から聞かされる一平君。早速、学校でサブちゃん・ヨウちゃん・ケンちゃんと良からぬ相談をする一平。
「そこで我がクラスでもミスコンテストをやってみようと思う」
と4人で勝手に選定委員会を結成し、ノミネート作業に入る。
 4人が一次選考に選出したのは、加藤ヒロコ、北川ミカ、松本セイコ、倉田マリコの4人。知恵の回る一平は、泡沫候補も加えようと言って、前田さんと榎本さんも加える。
 このことはたちまちクラスに広まり、埒外に置かれた女生徒達が文句を言いに来る。しかし、最もうるさ型の前田・榎本もノミネートされていたということで、抗議は尻すぼみとなり、クラス公認のイベントとなる。
 早速、選考委員の4人には候補者からの賄賂工作が始まり、4人はいい思いをする。
 そして最終選考が、一平君ペースで行われる。家が貧しいという倉田マリコは何の工作もしなかったということで落選扱いとし、後は任せてくれと言う一平。
 そして選考結果の日。一平は、「最優秀スター賞」「最優秀チャーミング賞」「最優秀努力賞」など各部門を倉田マリコ以外の5人について発表。
「最優秀賞は協議の結果、該当者なしということになりました」
 一同、肩すかしされた格好で唖然とする。ただ一人賞が与えられなかった倉田マリコは泣き出す。
「もうかったなあ。今度は出場料10円をもらって開催するか」
と4人が話していると、女生徒達が「聞いたわよ」と言って入ってくる。
 女生徒達による一平達4人の投票が行われ、一平はダントツの1位となる。
「投票により、一平君がクラスの最低男に選ばれました」
 
 おおっと、資本主義経済の虚構性を風刺するかのような内容です。“資本主義”というのが大げさならば、“情報起業”としてもいいですね。
 最初にビジネスを見つけて始めると、そこに需要が生まれ、ビジネスとなっていくのです。一平君達4人はミスコンテストというイベントを創出し、それによって利益を得たのであります。しかし、根本的にこれは彼らが何かを生み出したというより、他の人を利用しているという、“虚業”に分類されるものです。
 
 反対派の急先鋒となるであろううるさ型の2人を泡沫候補としてノミネートするなんて、さすが一平君はやり手です。将来、有能なビジネスマンになれるでしょう。(一平君のモデルは少年時代の西岸良平だという説があり、その説に沿えば彼は“有能なマンガ家”になりました。)
 最優秀賞を“該当者なし”とし、部門賞を選定したというのも頭のいい方法です。
 ただ、賄賂工作のなかった倉田マリコを入選させなかったというのは大失敗です。最後の詰めを誤りましたな。倉田マリコにも部門賞を与えていれば、角が立たずに全員満足して終わることができたのに。ここら辺、人生経験の浅い一平君は目先の欲にこだわりすぎて落とし穴にはまってしまったわけです。
 
 しかし考えてみれば、消耗戦やラット・レースに例えられる現代の経済戦争の解決のヒントも、この辺りにあるのかもしれません。
 つまり、倉田マリコのような存在を切り捨てて、他の5人のような存在をどんどん優遇していっているのが現代の経済状況ではないでしょうか。それがかえって社会にギスギス感を与え、ゆとりを奪い、住みにくくしているという。
 倉田マリコのような存在にも部門賞を与えて角を立てずに丸く治めるのが、結局は住みやすい社会を生む知恵なのではないでしょうか。
    
●縁側の人  脚本 萩田寛子  演出 棚澤隆
 山田さんのおばあちゃんは嫁には負けたくないと、たらいでの手洗い洗濯やお釜でのご飯炊きに精を出す。しかし、電化製品の進出に形勢は不利。無理がたたってぎっくり腰で1月寝込んでしまう。回復後は縁側で針仕事に精を出すのだった。
 
 タバコ屋のキンばあさんは意外にも、最先端の電化製品の取り入れに積極的だった。
「縁側で座ってるだけの老人にはなりたくないね」
と山田さんのおばあちゃんに電化製品をすすめます。
 新しい技術に反発する気持ち、分かります。私も携帯電話の導入は遅く、インターネットの導入はさらに遅かった。(しかし今ではインターネットなしの生活は考えられませんが)
 技術は進みすぎても味気ないものになってしまいます。どの辺で「もっと、もっと」をやめて落ち着くかが問題でしょう。
   




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【アニメ版『三丁目の夕日』を応援しよう会 バックナンバー】
  
■[日々の冒険]『三丁目の夕日』再放送開始!(サンテレビ
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20060406
■[日々の冒険]アニメ版『三丁目の夕日』を応援しよう会(1)
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20060409
■[日々の冒険]アニメ版『三丁目の夕日』を応援しよう会(2)
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20060412
■[日々の冒険]アニメ版『三丁目の夕日』を応援しよう会(3)
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20060420
■[日々の冒険]アニメ版『三丁目の夕日』を応援しよう会(4)
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20060428
■[日々の冒険]アニメ版『三丁目の夕日』を応援しよう会(5)
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20060503
■[学問]のび太くんはいつ成長するのか
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20041003/p2

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 過去、こんな作品について書きました。
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