OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

本を保存する生き方、本を持たない生き方

 モノに執着せずにどんどん捨てていくことで肩の荷を下ろして身軽になろう、という観点の人生論。
 出家とか禅とか世捨て人とかの思想にも通じる考え方です。
 スローライフだとかロハスだという考え方にも通じる考えでもあり、今の世にこういった人生論が受け入れられる流れがあるのでしょう。
 
 一方、私は学生時代にはこれとは全く逆の考え方にかぶれていました。
 渡部昇一の『知的生活の方法』は発行当時ベストセラーになったようですが、それから数十年後、かなり遅れて私もこの本を読み、影響されたものです。 
「本は身銭を切って買うこと。
 一度買った本は保存しておくこと。」
 
 元来本好きで、本のコレクター的性向を持っていた私にとってこの考えには影響を受けました。
 そのココロは

 自分で購入するから元を取るために必死で読み、血肉にすることができる
 自分の本だから、書き込むこともできる。
 いつでも参照できるように保存しておく。 

 これらのことは、著書や論文を書く学問に関する職業の人、特に文系の人にとってはある程度成り立つことかもしれません。
 学問を職業にし、広い書庫を備えた持ち家を持つならばできることでしょう。
 
 しかし、職業上取り立てて著書や論文を書く必要も無く、書庫付きの家を持てない者にとっては、いくら望んでも不可能な夢物語でしょう。
 
 私は学生時代、偶然安くて広い部屋を借りることができたため、本の置き場に困ることはありませんでした。
 しかし、阪神淡路大震災が起こった時、このような状況は危ない、と思いました。
 家の中の物が部屋中に投げ出されて足の踏み場も無くなる状況、また、それに潰されて犠牲になるかもしれない状況。
 もしあのような地震が起こった時、狭いワンルームマンションに詰め込まれた本は凶器となります。
(本が凶器になるかもしれない、と不吉な想像をする時点で愛書家失格・著作家競争の負け組決定か?
 生き延びることは考えずに本と共に死んでもいい、という覚悟が必要)
  
 著書や論文を書くような職を得て書庫付きの家を持ち、著書や論文で参照するために本を保管するという生き方というのは、私にとっては理想の人生です。勝ち組といえます。
 そういう意味では、『知的生活の方法』は、「勝ち組知的生活者になるための方法」「勝ち組知的生活の方法」と言えるでしょう。
(この“勝ち組”は、あくまで私にとって理想の生活、という意味です。“勝ち組”の定義は人によって違うだろうし、この言い方自体好かない人も多いでしょう。)
 ついでに言えば、アマゾンカスタマーレビューには
「渡部氏の時事的な発言を好かない人でも、
 その半生やらエピソードを楽しめると思います。」
という記述があります。私はそのクチです。
  
“知的生活”を送ることを目指しながら、心理面での不調により満足な学業を続けることができず、残念ながら現実は厳しいものとなった。
 著書や論文を書く仕事に就けず、賃貸ワンルームマンションに住む現実は、理想とはかけ離れています。
 悪夢のような現実に直面し、それとどう折り合いをつけていくか、どこまで理想に近づけていくことができるか。
 
 だからそんなモノに執着する生活は捨てろ、と川北さんは書いているのですが。
 しかし著書や論文を書いて本を保存する、という方向こそが私の向かうべき方向だったのだ。
 生きながらルサンチマン地獄に堕ちている現在、あきらめきれずに悪あがきを続けている。今後、理想にどれだけ近づくことができるだろうか?
  




 ↑人気blogランキングにご協力お願いします。