『伊豆の踊子』を朗読CDで耳読したので、文字で確認してついでに他の作品も読もうと思ってフォア文庫版を図書館で借りてきました。
フォア文庫の小学校高学年・中学生向きのC版ということで、文字の大きさも小さいし分厚いし解説もあるのでなかなか読みでありました。
それにしては文庫本よりは読みやすいレイアウトなので、文庫本を読むのはしんどいけど骨のある読書がしたいという大人にとってもフォア文庫のC版はいいと思います。
(偕成社文庫もいい。児童書は大人が読んでもいいのです)
ネット上には一人だけ女性が描かれた表紙が出ていますが、私が借りてきたのは4人の一団が描かれています。1983年10発行の第5刷です。
【母の初恋】
[wikipedia:母の初恋]
シナリオ作家・佐山はかつて自分から去った女の娘・雪子を養子にして育て、嫁入りの日を迎える。
非常に渋い・味わいのある作品。
『雪国』『伊豆の踊子』はポルノ小説みたいで不快で気持ち悪い!と嫌悪感しかなかったのですが、この作品は素晴らしいと思いました。
しかし本書は小学校高学年・中学生を読書対象としたフォア文庫です。小中学生には渋すぎないですか?かなり背伸びした読書だと思います。
【十六歳の日記】
[wikipedia:十六歳の日記]
盲目で寝たきりとなった祖父と二人で暮らす数え年16歳(満年齢で14歳)の康成少年が書いた日記。こんな悲惨な境遇だったのですね。文章は栴檀は双葉より芳しです。
同じ年頃の少年少女が読むと何か得るものがあるでしょう。
この祖父という方が器用貧乏な方で、八卦見や家相や漢方薬などの知識があったそうで、弟子に口述させた家相の本の草稿もあったようです。
この方の息子(康成の実父)は医師だったというし、祖父や父の執念や才能が康成によって開花したのでしょう。
【花のワルツ】
バレエ団で切磋琢磨して競い合う早川鈴子と友田星枝。
そしてその師匠である竹内。
竹内バレエ団の経済状況は下り坂であるが、ヨーロッパに研修に出した南条の帰国が頼みの綱であった。
しかし秘密裡に帰国した南条は松葉杖で歩き、もはや踊れない心身状態に陥っていた……!
4人のバレエダンサーが登場する。少女マンガの世界みたい。川端康成がこんな作品を描いていたんですね。
南条というのは、私が大嫌いな太宰治作品によく登場するタイプの人間で、天才的で魅力的だが性格が弱くて悪くて周囲を振り回すタイプ。
こいつ中心に描かれていれば私にとって嫌な作品になっていたでしょうが、この作品のいい所は、前半は早川鈴子中心に描かれているところです。
この早川さんは私が好きなタイプの人間で、性格が良くて周囲に気配りする超・常識的な人間です。
そして後半は、友田星枝と南条の絡みが中心の描写となっています。
南条は天才肌の星枝が気に入って強引にアプローチしますが、星枝の方もマイペースの天才型でなかなか南条の思い通りになりません。
下り坂のバレエ団の4人の主要人物の関係が興味深くて、先の展開が気になる名作です。
読書亡羊
恋と芸術の狭間 – 川端康成『花のワルツ』
https://dokushoboyo.com/entry/kawabata-yasunari-1937/
【付録 文章について】
川端康成が同業の作家を例に出して小説の文体について色々語っています。
こんな小文を掲載するとはなかなかマニアックです。
文学好きの少年少女にとって勉強になるのではないでしょうか。
【解説1 黒沢浩】
子どもの本研究家の黒沢浩さんが『伊豆の踊子』『十六歳の日記』について詳しく読書指導。
勉強になります。他の掲載作品も言及して頂きたかった。
【解説2 藤田圭雄】
川端康成と夫婦で交流があった詩人の藤田さんが、川端康成の思い出や人生や作品について色々と記述。
……と、本書には『伊豆の踊子』の他に川端康成の他の珠玉の名品やマニアックな小文も収録され、解説も充実しています。フォア文庫、なかなかあなどれません。
私も今まで読んだ川端作品『雪国』『伊豆の踊子』『死体紹介人』とは相性が合わず嫌いな作家だと思っていたのですが、本書を読んで考えを改めました。やっぱりノーベル文学賞受賞作家・川端康成は偉大でした。
とりあえず、『掌の小説』は読んでみたい。
●ブクログ https://booklog.jp/item/1/4323010125
●読書メーター https://bookmeter.com/books/2213601
ポルノ小説風純文学【伊豆の踊子】 イラつく川端作品
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2026/04/08/060744
“『文豪の探偵小説』”
【死体紹介人 川端康成】
https://diletanto.hateblo.jp/entry/20161030/p1
“香具師口上集 (続) 室町京之介 人間ポンプ有光敏雄の口上も”
https://diletanto.hateblo.jp/entry/20170120/p1
↑
『浅草紅団』という作品もあるらしい
“ノスタルジーだけじゃなくズッシリ重い短編集『ノスタルジー1972』”
https://diletanto.hateblo.jp/entry/20180529/p1
↑
中島京子『川端康成が死んだ日』という短編が収録されています。
読書感想文を書きましたが、現在全て忘れています。
“子どもとおとなのための偕成社文庫について”
https://diletanto.hateblo.jp/entry/20171002/p1
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